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原材料高騰でも…銀座コージーコーナーが西日本に積極出店する理由

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年9月5日 6時10分

2023年に創業から75周年を迎えた銀座コージーコーナーは、首都圏を中心に店舗展開する洋菓子専門店チェーンとして、ファミリー層からシニア層まで、幅広い顧客層に親しまれてきた。コンビニエンスストアのほか、近年は食品スーパーも各種デザート商品の強化に乗り出しており、スイーツを巡る競争は激しさを増している。調達環境も厳しさを増す中、「お客さまに寄り添える商品を届けたい」と語る代表取締役社長の船田知秀氏に、同社の出店戦略・商品戦略とスイーツを取り巻く事業環境について聞いた。

全国約420店舗!九州エリアでの出店に意欲

 2024年6月現在、銀座コージーコーナーの店舗数は約420店舗。近年は年間約20店舗のペースで新規出店を重ねており、今期(20253月期)も例年並みの出店を計画しているという。

 首都圏では高い認知度を誇る同社だが、それ以外、とくに西日本ではまだ出店余地が残されている。246月からは、九州エリアにおいて、出店の加速に伴い、協力工場での製造を開始した。

 店舗の過半数が位置する首都圏エリアは、老朽化した店舗もあれば、人流の変化で集客に影響があった店舗もある。古い店舗を改装したり、リロケーションしたりしながら、駅ナカをはじめとした、アクセスや利便性の良い土地へ積極的に出店している。一方、地方では、総合スーパー(GMS)や食品スーパーと組み、「人の集まりやすい場所」への出店を強化。船田社長は、「おかげさまでパートナー企業さまからもよい評価をいただき、相乗効果を発揮できている」と手応えを語る。

 店舗面積約15坪を標準とし、対面による丁寧な接客を強みとする同社だが、最近は新たな試みも始まっている。それが、東京都江東区の「銀座コージーコーナー東陽町店」で実験的に導入した自動販売機だ。店舗前に「スイーツ自販機」を設置し、銀座コージーコーナーの看板商品の1つでもある「ジャンボシュークリーム」のほか、エクレアやフィナンシェなどを販売している。

「銀座コージーコーナー東陽町店」で実験的に導入した自動販売機

 この取り組みについて、「店舗が閉店している時間帯の利用が多いと予想していたが、時間帯別の売上高を見ると、開店時間帯と閉店時間帯とでほぼ半々だった。しかも、開店時間帯の店舗の売上は落ちていない」と船田社長は話す。「『フルサービスの店舗には入りにくい』という印象を抱くお客さまもおられるのだと発見があった。今後の出店では、自動販売機の併設を含め、手軽さという観点も取り入れながら店づくりをしたい」(船田社長)とし、今後は設置店舗の拡大を検討していく考えだ。

旬のフルーツの果実感、プレミアム商品で付加価値訴求

 商品については、「専門店である以上、商品の味、品質、見た目がよいことが大前提」と船田社長は強調する。銀座コージーコーナーでは社内にパティシエを擁し、均一かつ良質な商品を提供できることをめざしている。製造を担う自社工場では、機械化された工程だけでなく、クリームを美しくデコレーションする「絞り」の作業、フルーツのカットなど人手による工程も多い。他産業・他業態と同様に人手不足という課題はあるものの、「絞りや仕上げ工程へのこだわりなど、繊細な手作業で担保している品質は当社の強みでもあり、今後も大事にしていきたい」と船田社長は話す。

 商品戦略では、苺のショートケーキやチョコレートケーキ、チーズケーキといったベーシックな商品を維持しつつも、季節のフルーツを使用した商品で売場の華やかさと“鮮度感”を重視している。旬のフルーツの果実感や、濃厚なチョコレートをコンセプトとしたプレミアム商品で付加価値を訴求。いずれも好評を博している。

 店頭で扱うSKU数は50前後(焼菓子ギフトを除く)。昨今の原材料価格高騰を受けて、スイーツ専門店では商品サイズが小さくなる傾向があるものの、銀座コージーコーナーではボリュームを維持し、単価を上げることで対応している。「コージーコーナーはボリュームが大きいことでお客さまに高く評価いただいている。原材料の高騰などによる影響があるものの、お客さまに求められているものをしっかりと意識した上で価格設定を行っている」(船田社長)。また、単価1万円~2万円のパーティー用ケーキにも毎月安定的に需要があるという。

 近年、洋菓子専門の個人店は減少傾向にある。そうした環境下、船田社長は「予約なしで当日購入できるクリスマスケーキやデコレーションケーキなど、お客さまに寄り添える商品を届けたい」と、専門チェーンの存在意義を語る。

出店は西日本に注力、SNSは動画発信を開始

 銀座コージーコーナーの20243月期の売上高は246億円、利益は非公表だが増収増益での着地だったという。上期中は原材料、とくに卵が不足したことにより商品の供給が不足、客数減を招いた。卵のみならず、気候条件に左右されやすいフルーツなども、供給量や価格の面で不安定さをはらんでいる。

 船田社長は、「調達に関しては今後も厳しい状況を想定している。調達先を複数確保してリスクヘッジするとともに、価格に見合う商品価値の提供、ご来店いただく理由づくりに注力したい」と語った。

 来店客数は、船田社長が経営において最重要視する指標だ。客数を増やすには、新たな顧客層開拓が欠かせない。ディズニーキャラクターやポケモンとのコラボ商品は、従来の層とは異なるファン開拓に寄与した。「とくにポケモンコラボは反響が大きかった。コラボをきっかけに当社商品のおいしさを知ってもらうことで、リピートいただける流れをつくりたい」(船田社長)

 2025年3月期は、西日本への出店拡大、プレミアム商品と既存品のブラッシュアップ、そしてSNSでの動画コンテンツ発信に注力したい考えだ。エリアを拡大するとともに、商品戦略とSNSマーケティングで次世代のコアターゲットとなる層への訴求力強化を図る。中長期的の目標では、283月期までに売上高280億円をめざすとしている。

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