自力歩行が難しい高齢者が来店できるように!歩行アシストロボが小売の未来を拓く?
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2020年2月2日 20時30分
実用化するにはまだ時間を要するかもしれないが、導入されれば小売業界にインパクトをもたらすロボットが登場してきている。昨年12月に開催された『2019国際ロボット展(iREX2019)』で話題となった、新たなロボットを3つレポートする。
オフィスを動く“ロボット型コンビニ”
オフィスのなかをロボット型コンビニが自律走行する。そんな世界を提案するのがアンドロボティクス(東京都/田村幸広社長)だ。同社担当者曰く、「オフィスグリコがゆっくりと自律走行しているイメージ」だという。
商品を積み込んだトビラつきの棚が、時速0.72~2.16 kmというゆっくりとしたスピードで、社内のフロア内のあらかじめ設定されたルートを移動する。これがどのくらいの早さかというと、クモの動く速度(約0.km)からゾウガメの動くスピード(約2.7km)の間くらいのものだ。人の一般的な歩行速度は4.8kmといわれているから、このロボット型コンビニを歩いてつかまえるのはそんなに難しくはないだろう。
商品を購入するにあたってはロボット型コンビニを停止させ、棚から欲しい商品を取り出し、張り出されている価格表から該当する商品のQRコードを読み込ませて精算をする。
「みんな紳士的に使っているから、オフィスグリコが成り立っている。ロボットでも、それと同じ運用ができるのではないか」(同)
段差1㎝程度なら自律走行可能というが、現実的には平らなフロアでの利用を考えた方がよさそうだ。現状モデルの耐荷重は30㎏。1L入りのペットボトルなら30本程度になる。
「現在のロボット型コンビニは、今持っている技術の範囲内で、コストをできるだけ抑え、労働力不足をどれだけ補えるかにチャレンジしたもの。実用化するには、何が足りないのか、いろいろなところで試しながら、要望を聞き、使い勝手のよいものを開発していきたい」(同)
保冷、保温の機能は現時点でも、オプションで搭載可能。アプリの開発により、スマホ経由で自分の席に誘導することも不可能ではないという。
「当社の社名(アンドロボティクス)からもわかるように、人とロボットが共存する社会の実現をめざしていきたい」
イベントでパフォーマンスを披露するロボット
ちょっとしたイベントも、これからはロボットが活躍する時代になるのだろうか。
あつぎものづくりブランドプロジェクトから生まれた、世界初!のご当地アイドルロボットユニット「アミューズメントロボット・アンドロイド9」(以下、アンドロイド9)(MONOI企画、神奈川県/岡本正行社長)は、1体の高さ47㎝、重量2㎏で、楽曲に合わせて、キレのよいダンスパフォーマンスを披露する。日本国内ばかりか、中国、韓国のイベントに参加したこともあり、現在は南米チリからのオファーも入っているという。
国際ロボット展では、<NHK>2020応援ソングプロジェクト曲の「パプリカ」に合せながら、アンドロイド9が見事なパフォーマンスを見せた。
「関節数は人間よりも少ないが、人間ができることは、頑張ればできるレベルにきている」(岡本社長)
「パプリカ」では9体が同じ動きをしていたが、韓国人5人、日本人3人、台湾人1人の、9人で構成された多国籍のアイドルグループ「TWICE(トゥワイス)」の楽曲では、9体が別々の動きをし、最後のさびの部分では同じ動きになるような複雑なプログラミングを実現させてもいる。
岡本社長は「オーダーメイドのオリジナルキャラクターをロボット化する事業に取り組んでいる。ロボットづくりは大好きだから、気軽に声をかけてほしい」と語っている。
“着るロボット”を着て、買物に行く
そんなに遠くない将来、高齢の人たちが、若いころと同じように自分の足で店内を歩きまわり、買物を楽しむ光景が当り前になるかもしれない。
信州大学繊維学部が産学連携で開発中の、生活動作支援のためのロボティックウェアは、身体能力が低下した高齢者や障がいのある人が見にまとうことを前提に進められているものだ。
歩行アシストロボット「Curara4(クララ)」は“人にやさしい”着るロボット。システム設計上、同じようなタイプのロボットとは異なる大きな特徴が3つある。
1つめが「非外骨格型構造」だ。モーターが装着者の関節部分に取り付けてあり、各関節間のリンクがないため歩行時に違和感なく歩くことができる構造になっている。また、パンツタイプの開発が進み、在宅での利用がより容易となり、生活になじむ機能的なデザインになっている。
2つめが「動きを検知する力検出センサ」。このセンサにより、人の動きに合わせてロボットが動き出すように制御できるようになった。
そして3つめが「人にやさしく合わせる同調制御法」だ。人間は相手の動きに合わせて、動き方や力の入れ方などを調整しているが、それと同じことをロボットができるようにしている。
加えて、クララの装着は専用のいすに座り、関節フレーム固定用のベルトを止めれば装着が完了する。座ったまま装着できるため、高齢者や障がいのある人の負担も軽くなる。慣れてくれば1分で着脱が可能になるという。
2017年には大学ベンチャーとして販売会社のアシストモーション(長野県/橋本稔社長)を立ち上げた。クララは2020年にも製品化の予定で、モニターとして実体験した人からは次のような声も届いている。
「自分の足で歩いているのと同じような安心感がある。早く孫といっしょにスーパーに買い物に行きたい」
高齢化による体力低下のため、自力で歩行ができなくなった人も、クララを装着することで、とうに諦めていた「(自分で)買い物をする楽しみ」が復活する。高齢者にもやさしい店づくりはこれからが本番だ。
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