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NRF APAC2024は日本企業に何をもたらすか(セミナーレポート)

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年10月22日 7時0分

「NRF APAC2024は日本企業に何をもたらすか」

「NRF APAC2024は日本企業に何をもたらすか」

初開催となったNRF APACはどんなイベントだったのか、また日本の小売業関係者はどんな点に注目すべきで、次回以降どんな人がどんな目的で参加すべきなのか?自社のビジネスでどのように活用すべきかをまとめるとともに、NRF APAC2024で得られた知見を共有します。

阿部 幸治

「ダイヤモンド・チェーンストア」誌
「DCSオンライン」 編集長
 阿部 幸治 


講演の方向性①NRF 的欧米物流事例

「NRF APAC2024」は初回開催にもかかわらず、52か国から5800名が参加し、日本人は開催国シンガポールに次いで2番目に多い約500名が参加。来場者は3日間で約4万人を数えた。近年のアジアエリアにおける小売業の発展は目覚ましく、欧米からも高い関心が寄せられていることが数字をもって証明された。来年以降は倍以上の規模に拡大することが見込まれる。

講演会のテーマは、生成AI、カスタマーエクスペリエンス、従業員エンパワーメント、ユニファイドコマースが大半を占めた。欧米とアジア、グローバル化と地域化を照らし合わせ、その解決策やデジタル施策について議論された。

講演会の方向性は大きく分けて①「NRF的欧米流通の事例」②「アジアパシフィックリテーラーによる事例」③「グローバルリテーラーによるAPAC戦略」の3つ。 イベント初日の基調講演の一番手に登場したのは世界最大級のピザ宅配会社「ドミノピザ」。極めてユニークなマーケティング戦略について、CDOのクリストファー・トーマス・ムーア氏が解説した。

ドミノピザは、「過去のドミノピザはおいしくなかった」ということを認める自虐的なテレビCMキャンペーンを行い、味の変革を効果的に伝えることに成功。
この革新的なマーケティング戦略でその年のある期間の同社の既存店売上高は過去最高の伸び率を記録した。
その後もAIを活用した「ゲーミフィケーション」の要素を取り入れた独自のキャンペーンを展開。ドミノピザのアプリにピザ(他社商品でもOK)の写真をアップロードし、アプリに認識されるとポイントが付与され、一定数貯まるとピザを無料でもらえる仕組みだ。ゲーム感覚でアプリに触れてもらい、「ピザといえばドミノ」というイメージを想起させることで顧客コミュニケーションに繋がっている。そのほかに、自動運転車による無人配達、住所入力の手間を省くGPS機能を活用したピンポイントデリバリーなどの革新的な戦略が奏功し業績は好調に推移しているという。
「イノベーションは広告になる」とトーマス・ムーア氏は言う。改革を受け入れ正直に、明確に、大胆に挑戦していく。顧客心理を掴み業績向上につながったという成功例だ。

講演の方向性② アジアパシフィックリテーラーによる事例

次に「アジアパシフィックリテーラーによる事例」に触れる。コロナ禍でDXが推進されECも増加したが、現在、APACではリアル店舗の顧客体験を重視する傾向にある。コロナ前にデジタル化が進んでいた中国でもリアル店舗への回帰傾向が見られるという。

中国でスーパーマーケット、ホームセンター事業を展開する大手グループ「ウーメイ」はオンラインとオフラインの融合をテーマに掲げ、全ての店舗がラストマイルのハブになることを説明した。ECが一般化している中国では、スーパーマーケットビジネスのOMO(オンラインとオフラインの融合)も当たり前。ウーメイが展開するスーパーマーケット「ウーマート」の関連会社で生鮮食品販売のプラットフォームを扱う会社と提携し、ユニファイドコマースを進めている。ウーメイは伝統的なスーパーマーケットと思われがちだが、積極的に変革を進めていくリテーラーであると認知された。

リアル店舗は、ECの(簡素化された)買い物プロセスでは得ることができない「体験の場」だ。ECは顧客獲得に対するコスト高、リーチ範囲の狭さ、販売単価アップなど、ECのみで事業を拡大させることに限界がある。こうした実情が浮き彫りになったことも、リアル店舗の増加・復活に寄与している。結果、リアルとオンラインが共存する多くのビジネスモデルの確立に至っている。

DFIリテールは、中国南部・香港・シンガポールで現在約3300に上るセブンイレブンの店舗経営を行っている。コンビニエンスストアという業務形態はリアル店舗である必要があり顧客体験の強化が図られる。それは、お客様がいかに早く買い物を済ませることができるか、という点に絞られる。特にキャッシュレス決済においては3年前に顔認証が導入され、現在は手のひら認証による決済も可能となった。スピード感のある施策に驚かされるばかりだ。

オーストラリアの「ウェスファーマーズ」は、ホームセンターやディスカウントストアのコングロマリットとして複数の業態の展開をしている。本来、それぞれの業態で顧客リーチを図るべきところ、同社は業界横断でロイヤリティカードを発行し、データの統一化や顧客分析を可能にした。無料会員と有料会員でプログラムを差別化。有料会員に対しては送料・返品に対する優位性、ポイントアップなどの特典を設けている。会員が各ブランドで特典を活用することで顧客情報をより深めることになり、1to1(ワントゥワンマーケティング)のプロモーションが行えるようになる。有料会員の買い物頻度は、無料会員の約3倍にも上っているそうだ。

講演の方向性③ グローバルリテーラーによるAPAC戦略

最後にグローバルリテーラーによるAPAC戦略を紹介する。
日本の小売大手の「ファーストリテイリング」は、顧客体験の一環としてテクノロジーやイノベーションの活用を行っている。RFIDによる自動会計システムを導入することで、会計時の待ち時間が短縮し、手が空いたスタッフは店頭での接客時間により時間を割ける。当然RFIDの導入は、在庫管理の簡素化に繋がり、スタッフの接客時間へと繋がる。
同社はグローバル化に伴い、全世界の全店舗において同水準のサービス・満足度を提供できるよう、各国・各所の店頭やコールセンターに届いた顧客からの声を徹底的に収集。全ての店舗にフィードバックを行い、オペレーションの統一を図っている。

ワイン&スピリッツ事業を展開する仏の「モエ・ヘネシー」は、50年先を見据え、ブランドと消費者の関係性のローカライズに重点を置いている。APACでは中秋節や新年といった季節行事の重要性が高いことから、こうしたタイミングで選ばれるブランドとなるよう、店舗内装やイベントにもこだわり抜いた展開に注力していくという。
2023年には上海にアジア初の旗艦店、シンガポールのチャンギ空港にショップインショップをオープンした。新たな世代を取り込むための、ブランド体感、興味関心の場として位置付けた店舗展開を行っている。時間と予算をかけたブランディングだ。

また「イオン」は、“デジタルリテラ―のイオン” “アジアのイオン”を強く打ち出してきた。目指すべきはウォームカラフルエクスペリエンスとし、デジタル化の中にも人の温かさを感じられる体験をしてもらうという概念。顧客体験への要求が上がっている今、顧客情報の一元化、パーソナライゼーションの実施により、顧客満足度の最大化を行っている。

同社は、顧客の見ながらず、従業員のモチベーションアップのためにもデジタル化を進めている。
アジア全体でイオン生活圏の構築を図るため、上質な顧客体験以外にも、より良い暮らしの提案や提供を行っていく構えだ。

NRF APAC開催の意義

阿部氏は最後に今後のNRF APACの意義を以下にまとめた。
・欧米企業がNRFで語る課題の、アジアパシフィックでのローカライズ化
・アジアの小売業ならではの柔軟性とスピード感
・NRFらしさを活かしたプログラムからの学び
・講演や展示会に参加し、プレゼンスを高める
・国内外、ライバル企業などの垣根を超えたネットワーキング

第一回目開催となる「NRF APAC2024」の注目度の高さをみれば、来年以降はさらに巨大なイベントになるだろう。シンガポールは時差1時間と参加しやすい環境でもある。時間の調整が利くのであれば、最初の2日間だけでも行ってみることをおすすめする。

※その後、小川氏はSalesforceの支援内容と活用法について①ユニファイドコマース、②生成AIアーキテクチャ支援プログラム、③顧客データの収集・統合、④ロイヤリティマネージメントの4つの視点で解説し、講演を締め括った。

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