節約志向にどう対処するか? ライフ、イオン、セブンの施策とは
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年10月29日 20時54分
食品小売の記者会見では、節約志向への言及が増えています。各社の24年度上期業績を見ると、増収ながらも営業減益となる企業が多く、人件費が増える一方で粗利率は上がらないというパターンが目立ちます。それも、あえて粗利率を犠牲にして売上を取りにいった結果だったりします。そうせざるを得ないほど価格競争が厳しく、背景には消費者の節約志向があるというわけです。品質と利便性で通してきたセブン-イレブン・ジャパン(東京都)でさえ、値頃感をアピールする昨今。流通大手の現状認識をまとめます。
消費環境は良くても節約志向
ライフコーポレーション(大阪府)の岩崎高治社長は、10月の中間決算会見時も「消費は悪くない」という見解でした。ただ、賃上げや株価の恩恵を受けていない生活者も存在するという留保付きです。また、マクロで見て消費は悪くないからと安心しているわけでもありません。顧客にアンケート調査を実施し、自社の「品質と価格のバランス」評価が低下していると見て取ると、粗利率を抑えて価格対応する施策を取りました。
仕入れ原価の高騰もあって想定以上に粗利率を落とし、上期の営業利益は対前年同期比で1.4%の減益に終わりました。しかし、他社との相対で見れば軽微な方です。岩崎社長は「直近の調査では『品質と価格のバランス』の評価を改善できた。粗利率の抑制は将来につながる投資だった」と総括していました。
イオン(千葉県)の吉田昭夫社長は、決算会見で「マクロの景況感とコモディティの景況感は違う」と語りました。賃上げの恩恵を受けても日常の食費は抑制するし、賃上げの恩恵を受けていない層は買い周り傾向を強めているとの認識です。そうした環境にあって「各社は価格訴求を強めており、原価上昇の中での価格競争になっている」といい、つまりは粗利を確保しづらい状況にあるとしました。
イオングループの対応策は、プライベートブランド(PB)の中でも価格訴求型の「ベストプライス」への傾斜です。ナショナルブランド(NB)より粗利を取れる同ブランドを拡販し、粗利高を追い求めるといいます。「利益貢献の大きい年末年始に備え、ベストプライスによって客数増を定着させたい」(吉田社長)。今から低価格PBで種を蒔き、稼ぎ時の収穫を最大化しようというものです。
割高感の打開めざすセブン、好機を見出す「まいばすけっと」
セブン-イレブン・ジャパンは、下期に入り「うれしい値!宣言」としてテレビCMも使い値頃感をアピールしています。これまで提供価値としては品質と利便性にこだわっていた同社ですが、値頃感を打ち出す背景には顧客調査があったようです。
セブン-イレブンに関して「割高に感じる」と答えた割合が、21年の約34%から、23年は38%に増えたそうです。また、コンビニ一般を他業種と比較すると、割高に感じる割合はスーパーやドラッグストアが11~12%であるのに対し、コンビニは63.9%でした。フードデリバリーの55.3%をも上回る割高感の認識です。宅配の追加料金がかかるフードデリバリーよりも割高と思われるのは、ショックだったに違いありません。
この認識の打開を狙った「うれしい値!宣言」ですが、何もディスカウントをしようというわけではありません。商品戦略のポイントは、「松竹梅」と表現する価格帯の3層構造の割合を修正することにありそうです。
9月の説明会で、商品戦略本部長の青山誠一取締役は、「松竹梅の割合の目安を、従来の3対4対3から、2対4対4に変更した」といいました。それでは粗利率が低下するだろうと思うわけですが、同時に高粗利のカウンターFF(ファストフード)を強化することで粗利率の維持を図るそうです。確かにドーナツやベーカリーなどFFの新カテゴリーを拡大中です。
ところで、コンビニの「割高感」に成長機会を見出しているのが、イオングループが首都圏で展開する小型業態「まいばすけっと」です。イオンの吉田社長は決算会見時に「コンビニと比較するとディスカウントに寄ったポジションになり、小型フォーマットとして競争力がある」と言及、現状の約1200店を2倍に増やす構想を示しました。
割高イメージを払拭したいセブン-イレブンの反撃と、そこに好機を見出すまいばすけっとの攻勢。節約志向をめぐる新たな競争の一幕といえそうです。
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