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脱20代偏重、より幅広い層へ!ZOZOTOWN、テレビCM刷新の成果とは

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年12月4日 20時55分

ZOZOCM

ファッションECZOZOTOWNを運営する最大手のZOZO。そのテレビCMといえば、軽快な歌とダンスで「ZOZOWEEK」などのセールを訴求するイメージが強い。ところが、最近ではそのテレビCMのクリエイティブと訴求内容が大きく変化している。また、同時にウェブCMも積極的に展開し、ティーンや主婦層など幅広いユーザー層への訴求を強化している。そのCM戦略の大きな方向転換のねらいについて、ZOZO(千葉県/澤田宏太郎社長)マーケティング本部 プロモーション部 ディレクターの小俣裕貴氏に聞いた。

20代女性中心の利用傾向を打破し、より広い層へ訴求

テレビCM「出会える服、着てますか?」
テレビCM「出会える服、着てますか?」

 大雨が降る中、雨宿りをしている女性に、年下とみられる男性が傘を差し出す。突然のことに「大丈夫ですから!」と遠慮する女性に、男性は「服、濡れちゃうから」と言いながら傘を渡し、「素敵です!」と笑って立ち去る。その言葉を聞いた女性が「服が? それとも……」と困惑しながらつぶやくと、画面上に「出会える服、着てますか?」のコピーが映し出される――。

 2024年5月から展開しているZOZOTOWNのテレビCMでは、吉岡里帆、板垣李光人が演じる恋愛ドラマのワンシーンのような出会いのストーリーが描かれている。また、それぞれの俳優が着用しているファッションアイテムもCM上でテロップ表示される。

 ZOZOTOWN のCM戦略をリードする小俣氏は「プレポスト調査(広告キャンペーン施策を実施する前後で実施する調査)でもMF1(20~34歳の男女)からMF2(35~49歳の男女)にかけての幅広い年代にわたってクリエイティブの好意度が引き上がっている結果が出ている」と手ごたえを見せる。

 これまでZOZOTOWNでは本田翼をイメージキャラクターに起用し、印象的な歌とダンスとともに「ZOZOWEEK」や「ZOZOSALE」などのセールを告知するテレビCMを4年間展開してきた。それが一転して、ドラマ仕立てのストーリー性の強いクリエイティブへと大幅に転換したのにはどんな意図があるのだろうか。

 2004年のサービス開始以来、ファッションECのパイオニアとしてユーザーを順調に獲得してきたZOZOTOWN。しかし、ここ1年の推移を見ると年間購入者数は1,100万人台で、購入者の内訳を見ると、男女比率は女性が71%と多数を占める。平均年齢は33.3歳だが、内訳を見ると大学生を中心とした18歳くらい20代中盤メインボリューム層となっておりその後の年齢層が下がっていく傾向が見られる。

 中長期目標としてアクティブユーザー数1500万人への引き上げを目指しているZOZO。その中で、「これまでのCMコミュニケーションで獲得してきたメインボリューム層には一定の成果を上げてきた。しかしさらなるサービスの成長外的環境に左右されない安定的な収益基盤築くためには、顧客を広げていく必要性が増してきた。短期的なセール認知に加えてこれまで獲得できていなかった層への中期的なパーセプションチェンジ(ZOZOTOWNの自分ごと化)必要った」(小俣氏)との現状と向き合い、CM戦略を一から見直すことにした。

「服はあるけど、服がない」悩みに応えるメッセージ

ZOZOSALE
テレビCM「出会える服、着てますか?」セールバージョン

 ユーザー調査を行ったところ、ZOZOTOWNの認知率は8割近くと、飽和点に近い認知を獲得できていることがわかった。その一方で、「ZOZOTOWNを利用している人とそうでない人で、抱いているイメージに大きな違いがあった」と小俣氏は言う。

 具体的には、後者のZOZOTOWNを利用していない層にとっては、存在は知っているものの、非購入の理由として自分の年齢に合わない「利用の選択肢にない」など、自分ごとと捉えられていない実態が見えてきたという。

 これらの調査結果をふまえ、ZOZOTOWNを普段から利用している層に対しては従来どおりセールの魅力を訴求する一方で、ZOZOTOWNを利用したことのない潜在ユーザー層には自分ごと化を促すことを新たなCM戦略の中心テーマに掲げた。 

 さらに調査を進める中で、ユーザーのリアルな悩みが浮かび上がってきた。

 クローゼットを開くと、何かしらの服は入っている。でも、今シーズンに着る服や、日々のモチベーションを上げられるような服がない。そんな「服はあるけど、服がない」という悩みだ。

 このユーザーの悩みに応え、自分ごと化を促すため、「ZOZOTOWNはファッションの悩みや困りごとを解決できる存在だ」というメッセージを打ち出すことにした。冒頭のドラマ風シチュエーションの服をより魅力的に見せるシーンや、キャッチコピー「出会える服、着てますか?」といったクリエイティブは、そのねらいが反映されたものだ。

ウェブCMでは「ティーン」と「ファミリー層」に特定

TEEN_WEBCM_ZOZO
ウェブCM「その服欲は、突然に。-ティーンの場合-」

 刷新を図ったのはテレビCMだけではない。ウェブCMでも「ZOZOTOWNを利用したことのない潜在ユーザーの掘り起こし」のテーマに沿った強化を図っている。ターゲットに設定しているのは「ティーン」と「ファミリー層」の二つだ。

 ティーン向けには、若手俳優として注目される畑芽育と窪塚愛流を起用したシリーズCMを展開。「他校の文化祭に着ていく服が学生服しかない」「カラオケに誘われて学校のジャージで行ってしまった」など、中高生の服の悩みにありそうなシチュエーションを切り取とり、「その服欲に、ZOZOTOWN」のコピーとともに服が欲しくなる瞬間をユーモラスに描いている。ファッションへの興味が芽生え始めるティーン世代に対してZOZOTOWNを第一想起してもらうとともに、長期の定着化を図るねらいだ。

「とくに男子中高生の多くは『オシャレになりたい』より『ダサく見られたくない』という危機感を持っていることが調査で分かった。ZOZOTOWNがその悩みにお応えできることをメッセージとして意識した」(小俣氏)

ウェブCM「その服欲は、突然に。-ママの場合-」
ウェブCM「その服欲は、突然に。-ママの場合-」

 一方の「ファミリー層」は、安達祐実を起用した「ママ目線」のCMライフステージが変化し、自分の消費から家族の消費に切り替わるため、自分だけの服を買う場だとLTV(顧客生涯価値)が下がって離反につながるリスクがある。使い続けてもらうサービスとして、結婚・出産後も自身と子どものファッションを楽しんでもらう場であると訴求している

テレビとウェブ両輪の最適解を見つける

ZOZOマーケティング本部 プロモーション部 ディレクター 
マーケティング本部 プロモーション部 ディレクター の小俣裕貴氏

 アクティブユーザー数1,500万人の目標達成に向け、マスに向けたセール訴求についてはテレビCMを主軸としつつ、特定のターゲット層には各々にあったディアを組み合わせることでテレビとウェブの両軸でのCM戦略を推進するZOZO。「若者のテレビ離れ」などと言われて久しい昨今だが、小俣氏は「テレビCMの活用は常に議題に上がる」としつつも、その有効性を強調する。

「CPM(Cost Per Mille:広告が1000回表示されるごとに発生する費用)が安く、局地的に認知を垂直立上げできる点では今なおテレビが有効だと考えている。引き続きテレビをCM戦略に組み込みながら、必要な層に対してはウェブで媒体費を積み上げていく」

 また、一昔前のようにマスでのヒットが生まれにくくなっている中で、身近なインフルエンサーをモデルにファッション情報を取得する傾向がZ世代を中心に高まっている。「今後はよりCM戦略とSNSマーケティングとのコミュニケーションを連動させていきたい」(小俣氏)

「服をネットで買う」ファッション文化を日本に根づかせ、その地位を確立してきたZOZOTOWN。創業から20年が経ち、アクティブユーザー数の飽和化という課題に直面する中で、ファッションの多様性や楽しさを訴求するための最適なCM戦略を模索し続けている。

 

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