レシートは語る第15回 まもなく関西進出のオーケー、データでわかる競争力と成功のカギ
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年11月17日 20時55分
mitoriz(東京都/木名瀬博社長)は、全国に約40万人の協力モニターを擁し、日本初のレシートによる購買証明付き・購買理由データベース「マルチプルID-POS購買理由データPoint of Buy(ポイント・オブ・バイ:以下、POBデータ)」を有している。月間1000万枚のレシートを収集し、提携サイト含め、リアル消費者購買データベースとしては国内最大級の規模となる。このPOBデータと協力モニター(以下、POB会員)へのアンケート調査を活用すれば、消費者から見た小売りチェーンの実態を明らかにすることができる。
本連載では毎回、業界で関心の高いテーマを設定して独自調査を実施し、その結果をレポートする。連載第15回は、関東を中心に店舗を展開するオーケー(神奈川県/二宮涼太郎社長)に注目する。 「高品質・Everyday Low Price」の経営方針のもと、消費者から「安さ」で高い支持を獲得している同社は、2024年11月に関西エリアに初出店することを発表した。オーケーの関西市場参入に当たり、成功のヒントや課題は何か。関西主要チェーンの利用動向との比較により明らかにしたい。
関西エリアでも高い認知度を確保
まずは「関東(一都三県)」「関西(大阪府)」在住のPOB会員を対象に、オーケーの認知度を調査した。(調査期間:2024年8月1日~8月16日、N=関東在住2001人、関西在住2241人)。
調査の結果、関東では9割以上がオーケーを「知っている」と回答し、まだ出店前となる関西エリアでも認知度は55.1%と半数を超えていた。関西エリアの会員からは「安くて人気があるスーパーという印象」「テレビで何度か見たことがある」「銀座に店舗を作ったというニュースで驚いた記憶がある」といった声があがった。
また、24年11月にオーケーが関西1号店「高井田店」(大阪府東大阪市)を出店することについては、関東での認知度は13.8%だったことに対し、関西は21.6%。「よい評判を聞いているので利用してみたい」「関東のお得な店だとは知っているので少し遠いが利用したい」とあるように、出店前にもかかわらず、すでに関西での関心の高さがうかがえる。
次に、関東(一都三県)でオーケーをメーン利用するユーザーの利用理由と、関西(大阪府)で利用者の多い主要4チェーンに加え、同じく関東を基盤にしながら出店地域を広げるロピア(神奈川県/髙木勇輔代表)の利用ユーザーの支持理由と比較する。
なお、オーケー利用ユーザーは関東在住であり、関西5チェーンと商環境が異なる点と、調査対象エリアのロピアは9店舗のため回答者が限定的であることを踏まえ、特徴を見ていきたい。
関西5チェーンの総計と比較すると(図表1)、オーケーは「安いから(総計比+55.9pt) 」「EDLP(エブリデーロープライス)・いつも安いから(総計比+18.8pt)」がとくにスコアが高く、同じく「安さ」で支持を受ける業務スーパーや、ロピアと比較しても圧倒的だ。
オーケークラブに入会し、現金支払いをすると食料品が3%相当額割引になることから「とにかく安く同じ商品でも他店とかなり価格が違う」「他社と比較にならないくらい安いものが多い」との声が聞かれた。
そのほか、「品揃えがよい(総計比+5.4pt)」「出来立て商品(焼きたてパンやピザなどがあるから(総計比+7.2pt)」も高く、「品揃えが豊富で安い」「店内調理の弁当やパン、ピザはどこよりも安くて美味しい」などのコメントがあげられ、イオン(千葉県/吉田昭夫社長)、ライフコーポレーション(大阪府/岩崎高治社長)のような商品開発を積極的に行う企業と比べても支持されていることがわかる。
「お得感」が関西進出成功のカギ
一方で、オーケーは関西5チェーンの支持理由に比べ、立地のほかに「ポイントやお得なサービスがあるから」「セール・特売商品があるから」が10pt以上下回っている。
オーケーのメーンユーザーの声を深堀りすると、「現金支払いでないと会員価格にならない」「ポイント制度を導入して欲しい」などが挙げられ、効率化を図り、コストカットを追求したことで実現されているEDLP戦略が強みとはいえ、お得感があまり感じられないことが課題のようだ。
エリア別に利用理由を比較した結果では、関西は関東に比べて「セール・特売商品があるから」を重視する傾向が見られた。近畿圏を中心に展開する万代も「安さ」や「セール・特売商品があるから」を理由に利用されている傾向が強い。「お得感」を重視する関西エリアの消費者からいかに支持を獲得できるかが、関西進出成功のポイントといえるのではないだろうか。
チェーン別満足度調査で迫るオーケーの魅力
次に、各チェーンの利用者ごとに「満足度調査」を行った結果を見ていく(図表2)。
6チェーンで各項目の満足度を比較した結果、8項目の平均は「ライフ」が最も高く、中でも「生鮮食品の品質」の評価が比較チェーンの中で最も高かった。一方、オーケーは、比較して総計は高スコアではないものの、「商品の品質」「商品の価格(安さ)」「商品陳列のわかりやすさ」で評価を受けており、ライフより多い3項目で最も高い満足度を獲得している。
「商品の品質」においては、「メーカー品が安く、品揃えが豊富」「メーカー商品はすべてほかのスーパーよりも安い」との声からわかるように、ナショナルブランド商品で価格競争力を発揮する商品政策が満足度につながったようだ。さらに、メーカーが製造するオーケーオリジナル商品も、プライベートブランド展開など、商品企画に強いチェーンにも勝る支持を得ている要因のひとつだろう。
また、オーケーの「商品の価格(安さ)」は、コストカットを追求した成果であり、店頭陳列などもそのひとつだ。特売商品を作らず展開する厳選商品のラインナップや、効率を追い求めた陳列も「商品陳列のわかりやすさ」に起因していると考えられる。商品の状態や価格を正直に知らせる「オネスト(正直)カード」の表示も「正直品質でいい」とのコメントがあり、接客の効率だけではなく信頼と納得感を増し、満足度を高めているといえそうだ。
ロピアに次ぐ高い顧客単価
次に2024年3月~8月までに投稿されたレシートデータを分析し、各チェーンで比較した(図表3)。
オーケーの「1品単価(238.5円)」は、万代、業務スーパーに次いで価格が低いものの、「レシート当たりの金額(2153.2円)」はロピアに次いで2番目に高かった。「価格が圧倒的に安く、週末にまとめ買いする」とあるように「レシート当たりの数量(9.0個)」は比較した中で最も多く購入されている結果となった。
カテゴリ別構成比をみると、オーケーは「飲料・酒類」「菓子類」「日用品」が他チェーンと比較して割合が高い傾向であることがわかる。ナショナルブランド商品が強いカテゴリで価格競争力が発揮されていることが表れているといえる。
今回の調査では、オーケーの関東エリアにおける支持の高さと同時に、商圏が異なるものの、関西5チェーンと比較した際に「安さ」と「商品品質」における優位性が示された。すでに関西での認知度も高いことから、出店前にもかかわらず競合と善戦できる下地が整っているといえるのかもしれない。
しかし、消費者の節約志向がより一層高まる中で、関西ではディスカウント業態も根強く支持されており、一筋縄ではいかないことは確かだ。オーケーが関西エリアの消費者に「お得感」を見出してもらうため今後どのような戦略をとっていくのか、さらなる注目が集まるだろう。
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