粗利減・経費増の現状に活路を開く! サミット、カスミ、ヤオコーの戦略
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年11月27日 20時59分
食品スーパー各社の24年度上期業績は、総じて売上総利益率が下がり、販管費比率は上昇しました。両方が上がるならまだしもですが、値上がり局面にあっても集客のために価格を抑えようとするので粗利は削る傾向にあります。粗利減・経費増の中からいかに活路を見出すか? サミットは、粗利率は改善できるとしています。カスミは、店内加工をやり切るために作業負荷の再配分に着手しました。ヤオコーは、売上を伸ばすことに集中しています。
サミット チャレンジの効果は下期に
サミットの上期は、既存店の売上は対前年同期比3.9%増、営業収益は同4.8%増と伸びたものの、営業利益は同20.6%の減益でした。同社に限らず、増収減益は24年度上期の業界トレンドです。
服部哲也社長は決算会見で、「既存店の売上も客数も伸びている中での減益であり、悲観する状況ではない」としました。また、人件費を抑えることよりも、粗利率を高める工夫を重視し、仕入れや販促の見直しなど期初から多岐にわたる取り組みが進行中とのことです。
結果として「上期中は利益コントロールがうまくいかなかった」(服部社長)わけですが、試行錯誤を経て成果は出始めており、下期の改善に自信を示しました。また、既存店売上高が同3.9%増という実績も、計画には届いていないと言います。
「いろいろな施策をやり切れば、既存店はこうなるという目標設定をしている。今までの延長線上ではない取り組みによって実現する高い目標をめざしており、返って火傷を負った部門もあるが、多方面から大きなチャレンジを進めている」(服部社長)
粗利率の改善と同時に、売上もまだ伸ばす余地があるということです。
カスミ トップバリュ拡大と店内加工の充実
イオングループは、以前の記事「節約志向にどう対処するか? ライフ、イオン、セブンの施策とは」でも触れましたが、価格訴求型のプライベートブランド(PB)「ベストプライス」への傾斜を強め、粗利率よりも粗利高で稼ぐ戦略を取っています。
その方針は、グループのカスミの新店でも垣間見ることができます。11月にオープンしたフードスクエア八潮大曽根店(埼玉県八潮市)に導入したトップバリュは1646品、売場面積がほぼ同等で3月に開設したフードスクエア東茂原店(千葉県茂原市)の1.5倍に増えています。
しかも八潮大曽根店は、今後のフードスクエアの標準モデルを意図した店舗で、取扱品目は1万強、かつてのフードスクエアより2割ほど絞り込んでいます。その中でのトップバリュ増加です。
塚田英明社長は、「生鮮・総菜の差別化ポイントとして店内加工を充実させる。その分の人時を製造に回すため、グロサリーや日配を絞り込むことで店舗オペレーションの負荷を調整する」と言います。加工度が高い商品は、一般的に粗利も高いものです。そのような付加価値商品と、グループPBによる価格対応の2軸で、粗利高を追求します。
ヤオコー トップラインの更新に挑み続ける
ヤオコーは、24年度上期も増収増益でした。せんどう(千葉県)を連結子会社化した連結ベースはもちろん、単体ベースでも既存店の売上を対前年同期比で6.3%伸ばして増収増益としました。それでも川野澄人社長は「トップラインである売上の高い伸びが支えているが、売上総利益率は伸びず、販管費比率は上昇という構図は他社と変わらない。トップラインが落ちれば、途端に減益になる」と警戒します。確かに、増益ながらも営業利益率は前年同期の6.3%から5.9%に低下しています。
ここ数年、ヤオコーは売上のトップラインを伸ばすことにプライオリティを置いてきました。コロナ禍で急伸した売上をさらに超えていくためです。集客力を高める目的で冷食などをEDLP(エブリデー・ロープライス)化したり、特売企画「厳選100品」や、月に1度のカテゴリー割引など安さの打ち出しを強めてきました。一方で生鮮・総菜の商品開発ではセンターも活用したSPA(製造小売り)化でバリュー創出に努め、独自の催事として鮮魚の大豊洲祭りを毎月恒例に、十五夜の販促などを毎年恒例に育ててきました。こうした集客策が、売上増の原動力になっています。
売上総利益率の低下・販管費比率の上昇という構造への対応として、ここでは最近の取材からサミット、カスミ、ヤオコーを取り上げたわけですが、3社は3様でありながら、独自性を高め売上につなげようとする意図は共通です。それでも売上総利益率を改善するのは容易ではなく、逆に販管費比率は上がり続けるところが、目下の環境の厳しさです。
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