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独学で始め、売上18億円に!敏感肌の女性に支持される化粧品『OSAJI』とは

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年12月12日 20時54分

2024年に海外進出を果たした化粧品ブランド「OSAJI(オサジ)」は、敏感肌の人でもストレスなく使える化粧品ブランドだ。パッケージや香りに独自の世界観があり、マスブランドではないがコアなファンに熱く支持されている。売上は2017年が1億円、2023年は18億円と急拡大だ。OSAJI(群馬県)の代表取締役である茂田正和氏に、ブランドが誕生した経緯とこだわり、今後の展望について聞いた。

未経験から独学で化粧品を制作

株式会社OSAJI代表取締役
茂田正和氏

「敏感肌の人はパッケージがおしゃれな化粧品を使いたくても肌に合わないことが多い。メイク用品のバリエーションも少なかった。そこに風穴をあけたかった」と茂田氏は話す。

 化粧品ブランドの代表と聞くと、研究者や大手化粧品会社の経験者をイメージする人もいるかもしれない。しかし、茂田氏が化粧品づくりをはじめた場所は群馬県の自宅で、化粧品に関しての知識や経験はまったくなかった。

「化粧品を作りはじめたきっかけは、母親が交通事故にあったストレスで肌のトラブルを抱え、それまで使っていた化粧品が肌に合わなくなったから。母が使える化粧品をつくりたい、肌の状態を良くしてあげたいと思った。しかしどう作ればいいのか、まったくわからなかった。教科書になりそうな1冊の本を頼りに試作をはじめた」

 試行錯誤しながら化粧品をつくり、母の肌トラブルは改善に向かった。その話を聞いた叔父が「温泉に着目すると面白いかもしれない」というアドバイスをくれたという。叔父は東北大学の皮膚科の教授で皮膚アレルギーの権威だった。

「化学的な理由はわからないが、アトピー性皮膚炎の患者さんが東北エリアの温泉で湯治をして、肌のコンディションがよくなったことがあると聞いた。化粧品事業で起業を考え始めていたので、温泉をテーマに商品開発をすることにした」

 全国各地の温泉旅館の温泉をつかって化粧水をつくり、温泉の売店で商品として販売し、ユーザーにアンケート調査をするというOEM事業を始めた。

 事業が軌道に乗り、そろそろ自社ブランドを作ろうと思っていた矢先、父が経営していた会社の次世代事業として化粧品事業をやらないかと声をかけられる。

「父の会社はエンジン部品のめっき加工を手がける会社だった。今後、電気自動車が普及していくと仕事がなくなるかもしれないという危機感を持っていたようだ。当時の23名のスタッフと共に父の会社の新規事業として立ち上げた」

アルコール消毒液で認知が進む

 自社ブランドで化粧品を開発するようになったのは2004年のこと。細々と企画・開発・製造をしていたが転機は急に訪れる。雑誌『リンネル』のベストコスメ審査員特別賞に選ばれたのだ。

「ベストコスメの審査員だったヘアメイクの方が当社の商品を使ってくれていた。超敏感肌のモデルさんにスキンケアすると顔が真っ赤になってしまうことがあり、そんな方に合う基礎化粧品を探していて行き着いたそうだ」

 その後、雑誌を見た問屋から連絡があり、茂田氏の商品は大手の量販店に置かれるようになった。さらに、茂田氏はリンネルで連載を担当するようになる。

「私はアカデミックに皮膚科学や化粧品を勉強していない。素人でもわかる言葉で化粧品の成分や皮膚科学について語れることが、逆に強みになった」

 商品は少しずつ広がり始めたが、一方で課題もあった。敏感肌の人に安全であることを大事にした商品は、アンチエイジング化粧品ほど伝えるメッセージが明確ではないことだ。

「お客さまが自分で商品を選ぶような量販店では、私たちのプロダクトの良さは伝わりにくいと思った。企画・開発・製造だけでなく、販売まで一貫して行うことを決断して、OSAJIブランドが生まれた。一店舗目の直営店を谷中に出店した」

OSAJI一号店_谷中店
谷中店外観

 その後、ほぼ日(「ほぼ日刊イトイ新聞」の運営企業)とコラボするなど、さまざまな人がOSAJIを紹介する機会が増えていく。さらに多くの人々に広く知られるきっかけになったのは、2020年のコロナ禍で緊急事態宣言が出た頃だ。アルコール消毒液が品薄になっていたため、OSAJIですぐに商品を企画し2か月ほどで発売したところ、多くの人が買い求めた。

「OSAJIはマスブランドではないため、もともとマス広告ではなくSNSでの発信に力を入れてきた。コロナ禍になってSNSを見る人が増えたことも影響したと思う」

 また全国160のホテルや旅館のアメニティとしても取り扱われ、その利用をきっかけにリピーターになった顧客もいるという。

OSAJIホテルアメニティイメージ
ホテルアメニティイメージ

丸紅との資本提携で海外進出

OSAJI台湾での発表会の様子
台湾での発表会の様子

 2023年にはさらなる成長の機会が訪れた。丸紅から資本提携の話があり、父の会社から分社化して新たなスタートを切った。

「資本提携の話は躊躇していた。日本のファイナンスは投資回収のサイクルが短くなっている。早期に上場を迫られるようなことになれば、思うような事業運営ができない。しかし、話し合いを重ねていくと、一緒にブランドを育てるパートナーになれると思った。資本提携契約では『100年続くブランドを共に作る』と謳っている」

 丸紅との資本提携がきっかけとなり、OSAJIの海外展開もスタートした。順風満帆のように思えるが、

「円安やデフレが背景となり、日本の化粧品単価は安い状態だ。海外のサプライヤーから見れば、単価の高い商品を扱う方が利益を出しやすく、日本の化粧品の優先順位が上がらないと聞く。日本の化粧品が世界でどう価値を発揮できるのか。それが今後のミッションになっていくだろう」と茂田氏。

 また、ライフスタイル全般へと事業を展開していきたい意向だ。

「私たちは美容文化をつくる会社であり、美容へのアプローチは必ずしも化粧品だけではないと考えている。鎌倉でレストランを経営したり、蔵前に香りが調香できるワークショップスペースをつくったりと、ライフスタイルの提案もしている。今後も広義で美容につながることに取り組んでいきたい」

OSAJIレストラン
鎌倉のレストラン「enso」の料理

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