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ワールドが三菱商事ファッション買収!進むアパレル垂直統合、2つの課題とは

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年12月9日 20時55分

ワールドは三尾商事ファッションを完全子会社化することを発表した

あの名門ワールドが11月28日、三菱商事ファッションを買収し完全子会社化することを発表した。株式譲渡実行日は来年2月中の予定。
私は、OEMはもはやビジネスとしては破綻しており、海外のファンドか日本のアパレルを買収し、「バリューチェーンの川上、川中、川下が統合する『垂直統合』が起こる」と再三本連載で言い続けてきたが、実際にその通りになったかたちだ。商社とアパレルの合併は、オンワードホールディングスによるサンマリノの持分法適用会社化・資本業務提携がすでに起こっており、西と東の雄(ワールドとオンワード)が、商社機能を内在化したことになる。また伊藤忠商事を除く、三井物産、三菱商事、住友商事という大手総合商社が実質的にOEMから撤退したことになり、日本を代表するアパレルと商社は、ユニクロを含め、すべて「直貿」化したことになった。この流れは止まらないだろうし、いっそう加速するだろう。

ワールドは三尾商事ファッションを完全子会社化することを発表した
ワールドは三尾商事ファッションを完全子会社化することを発表した

進む!アパレルの垂直統合と2つの懸念点

 いまから2年前の2022年8月、三菱商事から私の元に連絡があった。「三菱商事ファッションをどうすべきか」というテーマについて、所見をヒアリングされたのだ。ワールドにはワールドプロダクションパートナーズ(WP2)という商社機能をもった子会社が存在し、私の先輩含め商社経験者が多数在籍していたが、この垂直統合はそれほどうまくいったようには見えなかった。

 理由はシンプルで、「ワールド専門のOEMではスケールメリットが効きにくい」こと。そして、こちらが最もクリティカルな影響であるが、「OEM機能が川下の配下でうまくコントロールできないこと」の2点だ。

 OEM機能が川下配下でコントロールできない大きな理由は、川下は「欲しいときに」「欲しい商品を」「欲しい量だけ」求めるからだ。これに対し、川上は効率を追求して、同じ商品を可能な限り大量に、段取り替え無しに作り続けたいと考えている。両者は「真反対」の方向を向いているのである。

 今回、三菱商事ファッションの既存得意先があるので、スケールメリットの問題は解消されたものと思われる。だが懸念事項もある。それら三菱商事ファッションの得意先の多くはワールドの競争相手だ、という点だ。私がアパレル側の立場なら、自社の競合になるワールド(グループ)に発注を入れにくいだろうと思う。そうなると売上は大きく下がる可能性だってあるのではないだろうか。

 また、川下の配下で川上はコントロールすることは依然極めて難しい。真逆のKPIを追いかける、いわゆるコンカレント・エンジニアリングに手が届くには、準備期間などを含めると、時間的に短い。したがって、とくに短期的には私はこの垂直統合にはやや懐疑的である。もしすんなりうまくゆくようなら、はるか昔にWP2が成功を成功を収めていたはずだからだ。しかし、当然、大いに期待もしている。

 実際、他社で過去に成功事例があるので解説したい。

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垂直統合で理想的なオンワードの事例

 垂直統合で理想的な例だと私が考えているのは、オンワードとサンマリノである。まず、彼らは大連に個人対応可能なハイテク工場を4つも持っている。つまり、サンマリノに出資をする前から個人別対応は可能だった。

 さらに、私の推定ではあるが約50%のニットをサンマリノにいれている一方、サンマリノもオンワードのやり方を十分熟知している。シナジー創出にあたっていきなり「デジタルSPA」(素材調達、物流配送、工場稼働など重複機能をデジタル統合するプラットフォーム)を狙うのでなく、まずは人材交流からはじめた点もポイントだ。サンマリノの人員にオンワードのMDを、オンワードのMDにサンマリノの商社機能を学ばせるため、人員を段階的にミックスしてきたのである。

 確かに、ユニクロの有明プロジェクトのように同じフロアに企画、生産、販売を一緒にする方法もなくはない。私も、オンワードのオフィスに幾度かお邪魔したが、ミニ有明プロジェクトのように自由に席を移動でき、企画、生産、販売が自由にプロジェクト形式で動くことができる。

 商社の中には、こういう同社の動きに対して「混乱している」「うまくいっていない」などと酷評する人もいるが、こういった人材面の融合は時間がかかるのが常であり、一人ひとりが大きな変化の真っただ中でもがきながら徐々にプロセスが固まってゆくものだ。

 私は、オンワードのやり方こそ他のアパレルが研究すべきことだと思う。

 今後、ファンドや海外アパレルの「日本買い」は私が予言した通り、今後加速してゆくだろう。日本の川中、川上は日本から完全に撤退したといえ、全体の99%は「オフショア・ビジネス」になっている。川下は、アジアの中でも独特なポジショニングをやっている宝だ。これをシニカルな批判で潰してしまうのはあまりにもったいない。

 とくに、ユニクロが「ベーシックアイテム」に注力しているいま、ファッション性で勝負できるのは、「ユニクロ以外のアパレル」だ。今回の垂直統合を、日本のアパレルの最後の復活の手段とみて、応援していきたいと思っている。

 

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プロフィール

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/index.html

 

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