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スーツの青山、人気ブランド「AMERI」とモード服新ブランドを立ち上げた理由と勝ち筋

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2025年1月23日 1時55分

CIS.(シス)

青山商事(東京都/青山理社長)9月、「スーツスクエア/ザ・スーツカンパニー」のレディス新ブランドとして、「AMERI」「Ameri VINTAGE」のディレクター兼CEO、黒石奈央子氏を起用した「CIS.(シス)」を立ち上げた。これまでのレディスラインナップは、価格を抑えたスーツ、きっちり感のあるオフィスウエアといったイメージが強い中、新ブランドはデザイン性のあるモード服というので驚きだ。影響力のある外部人材を活用して新風を巻き起こそうとしている同社の狙いは何なのか、「CIS.(シス)」の魅力や新しい販売手法などについてTSC(ザ・スーツカンパニー)営業部 副部長の今井康友氏に話を聞いた。

新しいファンの取り込み狙う

CIS.(シス)の展示会会場
CIS.(シス)の展示会会場

 スーツスクエアの前身となるスーツカンパニーといえば、青山商事の中で長くスーツを主力に展開してきた。スーツ服ブランドとして大きな存在感を放っていたが、コロナを機にスーツ需要が減少。スーツカンパニーを含む4ブランドを新たに、オフィスウエアに特化したブランドにリブランディングした。リブランドを行ううえでテコ入れが必要だったのが、レディス向けオフィスウエアを揃える「ホワイト」だ。

 今井氏は、「コロナ禍を経て、どの業種においても通勤ウエアのカジュアル化が進み、着こなしがより多様になっている。ホワイトの新たなターゲットとして、スーツ以外の通勤ウエアを狙っていくことが必要だと考えた」と話す。

 そこで2023年夏、新しい女性客を取り込むために外部とのコラボレーションを検討し、どのブランドと組むべきか社内の女性スタッフにヒアリングを行った。

「そこで出てきたのがAMERI。とくにSNS活用の成功事例として社内スタッフの注目度が高かった」という。

 そうはいっても、AMERIやAmeri VINTAGEはモード色の強いカジュアル服と、同社のイメージとはかけ離れている。それでもAMERIの黒石氏と手を組んで新ブランドを立ち上げることを決めたのはなぜなのか。

「既存顧客にプラスして従来のスーツスクエアのターゲットとは違う新しい顧客を取り込みたいと考えたから。黒石さんのエッセンスを入れれば間違いなくこれまでとは違う新しい洋服になるし、黒石さんの強力なファンを取り込むこともできる。黒石さんはCEOでありながら、インスタグラムで約29万人のフォロワーを抱えるインフルエンサーである点も大きな魅力だった」

ライブコマースの展開を強化

 CIS.(シス)のラインナップにはセットアップ以外にオーバーサイズのジャケットやワンピースなどが揃い、実際これまでのスーツスクエアのイメージとは大きく異なる。

「すでにあるラインナップと同じものをやっても意味がないし、当社が不得意としているカジュアル色をはじめ今までにないエッセンスを入れてこそ、新たなブランドとしての立ち位置を確立できると考えている」

 価格帯はジャケットで30,690円(税込)、そのほかボトムスは20,790円(税込)、ワンピースは32,890円(税込)という設定で、「アメリ価格とスーツスクエア価格の中間帯を意識した」という。現時点(2024年11月)では、東京、大阪を中心とした全国16店舗とオンラインで販売している。

CIS.(シス)ディレクター
CIS.(シス)のストライプワンピースを着用したディレクターの黒石奈央子氏

 9月に第一弾で販売したクールなストライプのワンピースは、まさに黒石氏のエッセンスが存分に入ったビジュアルだ。黒石氏自身が着用したことで注目を集め、即完売するという結果に。売上も概ね計画通り進んでおり、購入者のツイートには「休日の洋服だけでなく、CIS.(シス)なら仕事着でも黒石さんと同じ服を着ることができる」というコメントが多数見られるなど、期待以上の効果が出ているという。

ブランドデビューした昨年秋冬企画では模索も含めて落ち着いたデザインやベーシックなカラーにしたところがあるが、今年春夏企画については、カラーもデザインもよりエッジの効いたラインナップが登場する

 黒石氏と手を組んだことによる反響は予想通りだが、もう一つ期待したのがライブコマースの強化だ。すでにAMERIの取り組みを参考に、国内より先行して中国向けにライブコマースをスタートしている。

CIS.(シス)インスタライブ
黒石氏も登場するライブコマース

AMERIではライブ配信を行ってその場で即購入できる仕組みができており、配信時間もファンの多くが視聴しやすいお昼休みや帰宅途中、夜自宅でくつろぐ時間などが計算されている。当社でもこれまでSNSの活用は進めてきたが、学ぶ点が非常に多い。今後、スーツなどでも同じような形でライブコマースを展開する、それも本部主導ではなく店舗スタッフが主役となって実施するなど、AMERIをお手本に幅広く挑戦していきたい」

デザイン性×機能性でコラボレーション開発

CIS.(シス)発表会の様子
CIS.(シス)発表会の様子

 同社にとって今回のような大規模なコラボレーションははじめての試みだったというが、交渉は最初難航したという。

「黒石さんご自身が企業に勤めた経験がほとんどなかったこと、さらにカジュアルマーケットを中心にやってこられたので、ビジネスウエアというジャンルに対して最初の反応が鈍かったのはたしか。ただ、AMERIが今年10周年という節目の年だったことが幸いした。当社と組むことで露出の場も確実に増えるだろうという期待もあって、新しいジャンルに挑戦しようと手を組んでいただいた」

 協同で開発を進めるにあたっては、「デザイン面で苦労した部分はある。たとえば、今回新しく取り入れたジャコット(ジャケットとコートを組み合わせた造語)では、オーバーサイズのジャケットというのはビジネスシーンをメインでデザインしている当社では経験がなかった。そのため、サンプル製作や修正の頻度を通常より多くこなし、試行錯誤しながら進めていった経緯がある」と話す。

 一方で、AMERIではこれまで自宅で洗える素材、しわになりにくい素材といった観点を加味した洋服づくりは行ってきておらず、機能面の充実という面ではスーツスクエアの素材が断然優れている。

「一部ハンドウォッシュのものもあるが、CIS.(シス)の洋服はほとんどの商品がご自宅で洗えて、さらにストレッチ機能が付いている。この点はCIS.(シス)ならではの強みになっていると思う」

将来的には単独ブランドも視野に

TSC(ザ・スーツカンパニー)営業部 副部長
TSC(ザ・スーツカンパニー)営業部 副部長の今井康友氏

 販売開始からまだ2カ月弱ではあるが、ブランド力、発信力のある外部人材を活用することで、CIS.(シス)は見事に注目を集め、AMERIのファン層も巻き込んで順調にスタートした。

 今後について今井氏は、「AMERIや黒石さんを前面に出したグラフィックをつくったことで既存ブランドと良い意味でハレーションが起きているが、このハレーションをどうやってコントロールしていくかが今後の課題」と話す。

 さらに、「希望的な話になるが」と前置きしたうえで、「ファッションビルのポップアップスペースでCIS.(シス)を展開するといったことも思い描いている。展示会、イベントなどでPRしながら、商品ラインナップ、取り扱い店舗の拡大などを進めていきたい。ゆくゆくは単独ブランドとして独立店舗を出すことも目指していきたい」と、力を込める。

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