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雑貨専門店に学ぶ若年層をファンにする方法

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2025年1月7日 2時0分

若年層のファンを掴むにはインテリア雑貨が武器となる

※この記事はダイヤモンド・ホームセンター誌12月15日号の特集記事を特別に公開しております。

ホームセンターの喫緊の課題は客層の高齢化

 ホームセンター(HC)の喫緊の課題はユーザーの高齢化である。

 高度経済成長期に拡大したHCは、当時20~40代だった主なユーザーがそのままスライドし、いまやメーン顧客層が50代以上となっている企業が多い。「カード会員を分析すると平均が60歳以上になる」というHCもある。

 もちろん、HC各社もその課題に向き合ってこなかったわけではない。若年層を取り込むために、新しいフォーマットの開発、商品政策(MD)の見直し、機能性やデザイン性に優れたプライベートブランド(PB)商品の開発などに取り組んできた。

 しかし、それらの施策によって若年層のファンを増やすことができたのは一部にとどまり、根本的な課題解決には至っていない。リニューアルや新規出店で100円ショップを導入するHCも多いが、「人のふんどし」で若年層を取り込むことになるので、中長期的な効果を検証する必要がある。

 今後、中長期にわたってHCが成長していくには顧客層を若返らせることと、新たな事業領域を創出することが必要不可欠である。新たな事業領域として有望なプロ市場の開拓については小誌と同時発刊の「DIAMOND PRO DEALER2024年12月号」に詳細をまとめた。

 本特集では若年層のファンが多いインテリア雑貨の成功事例を取り上げた。インテリア雑貨、ホームファッション(HF)の分野はHCでも取り扱いがあるが、専門店に遅れをとっているのが現状である。

 今回、「LOWYA」(ロウヤ)事業を展開するベガコーポレーション(福岡県)、「Standard Products」(スタンダードプロダクツ:以下、SP)を運営する大創産業(広島県)、「3COINS」を運営するパル(大阪府)、良品計画(東京都)、ロフト(東京都)、クラシングR(愛媛県)をそれぞれ取材した。

 各社の共通点は若年層からの支持が高いことである。

3COINS
若年層のファンを掴むにはインテリア雑貨が武器となる

20代に人気のLOWYA

 LOWYAはECを起点とした家具・HFブランドである。2004年に設立し、現在の売上は約160億円になる。特筆すべきは若年層から圧倒的に支持されている点だ。顧客の年齢層は20代が55%、30代が25%で、全体の8割を占める。

 内製化する公式アプリやSNSの運用が集客の要となっている。スマホアプリは累計160万ダウンロードされ、Instagramのフォロワーは111万人、TikTokは30万人、YouTubeの登録者は15万人で、合計すると約156万人になる(24年11月末現在)。

 売上の9割程度はPBが占める。製造は海外の数十社の取引工場に委託し、毎月約150コンテナの商品を輸入している。商品企画からインターネット上の販売までを一気通貫で手掛け、コスト削減とスピードアップを図っている。

 次なる成長エンジンとしてベガコーポレーションはOMO戦略(オンラインとオフラインの融合)に注力する。23年4月にリアル店舗の1号店「LOWYA九大伊都店」(福岡県福岡市)を出店したのを皮切りに、立て続けに出店を重ねている。今後も年間4~10店舗を出店する計画だ。

 「新たにリアル店舗のチャネルを追加したのは、お客さまの実物を見たいというニーズへの対応と、最近はリアル店舗中心の企業もECに取り組むところが増えてきたからだ」と浮城智和社長は説明する。

ダイヤモンド・ホームセンター12月15日号は「専門店に学ぶ インテリア雑貨」をお届け!
現在、ホームセンターの喫緊の課題として挙げられるのが、ユーザーの高齢化です。今後、中長期にわたって成長していくには、若年層の取り込みが求められます。そこで、20~40代からの支持が高いインテリア雑貨のブランドにスポットを当てました。
ぜひご購読ください。

3COINSのブランド改革

 近年、雑貨専門店で驚異的な伸びを見せているのが3COINSだ。19年2月期で193だった店舗数は、24年11月現在で約340へと増加した。コロナ禍の巣ごもり需要で注目を浴びただけでなく、同時期に行ったブランド改革が奏功した。

 ブランド改革では20代女性から30~40代の女性にターゲット層を変更した。ターゲット層に合わせた商品や色みを再考した結果、より顧客ニーズをとらえた商品開発につながった。また、明るい緑色だったテーマカラーを、落ち着いた深みのあるグリーンに変更。床材や什器といった内装も、白を基調とするものから木目調やモルタル調の落ち着いた雰囲気の色みへと転換した。

 もう1つ、3COINSの躍進を支えているのが商品の鮮度だ。3COINSの1店舗当たりのアイテム数は約3000点に上る。カテゴリーも、アクセサリーからキッチン、インテリア、モバイルアイテムまで幅広く展開しており、大型店舗ではキッズや食品といった新規カテゴリーの拡充も進めている。驚くべきことに、定番アイテムは売上比率の約半分で、毎週投入される新商品は月間で700SKUにもなる。

 3COINS事業は今年30周年を迎える。HCをはじめ、住まいにかかわる多くの企業がコロナ特需の反動減で苦しむなか、顧客ニーズを的確にとらえ、急成長を続けている好事例といえるだろう。

ダイソーの3つ目の業態

 SPは大創産業が展開する3つ目のフォーマットである。100円ショップ「DAISO」とはまったく異なる世界観の「いいものを、長く使いたい」というニーズに応えるべく、「ちょっといいのが、ずっといい。」をブランドコンセプトとする。

 とある大手HC幹部は21年3月にオープンした1号店「渋谷マークシティ店」を視察し、「この業態をうちが先にやるべきだった」と悔しさをにじませながら称賛していた。

 SPの立ち上げに当たって、DAISOとは異なるコンセプトのオリジナル商品を新たに約2000アイテム開発する必要があった。社内の全バイヤーに声を掛け、ダイソーの商品開発に携わっている取引先にSPの世界観を表現できるものがあるかどうかという確認から始まった。

 出来上がった商品は、DAISOで展開するものと比べて、圧倒的に商品数、色数を抑えたものになった。その代わり、トーンバランスが統一されている。たとえばマグカップとブランケットといった、カテゴリーをまたがるような組み合わせでも、コーディネートしやすい。

 1号店がオープンして3年以上を経過し、オリジナル商品は2700アイテムまで拡大した。キッチン回りの雑貨、食器、フレグランスに加え、文具、キャンプ用品、バス用品、ペット用品、グリーン(観葉植物、フェイクグリーン)、シューズケアなども充実を図っている。

 店舗数も順調に拡大を続け、24年10月末現在、国内150店舗、海外(シンガポール、台湾)7店舗を展開している。

同業他社より他業態から学ぶ

 インテリア雑貨で若年層のファンが多いブランドには2つの共通点がある。

 1つはコーディネートの提案である。単品の機能やデザインだけでなく、部屋全体でほかの商品と合わせやすいことがポイントだ。売場でも単に商品を陳列するのではなく、コーディネートを想起させるディスプレーが求められる。

 もう1つは商品開発、MDの変化のスピードである。インテリアの流行に合わせて、いつ来ても新鮮な売場になるように在庫回転率を高めなければならない。

 インテリアコーディネーターの島ひかる氏は「コロナ禍以降、インテリアのトレンドは変化している。プロのSNSを見て参考にする人や、タイパ・コスパを重視する人が増えてきた」と指摘する。

 残念ながら、HCはインテリア雑貨、HFの分野での存在感が低い。しかし、これは裏を返せば若年層のファンを獲得する新たなチャンスともいえる。3COINS、SPのようにここ数年で急拡大しているブランドもある。

 HCの同業他社だけでなく、他業態こそ学ぶことが多い。

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