1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

イトーヨーカドー&オニゴー、ネットスーパー“継続”のための要諦とは?

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2025年1月9日 1時55分

イトーヨーカ堂(東京都/山本哲也社長)のネットスーパー事業は、2025年2月にONIGO(東京都/梅下直也社長:以下、オニゴー)社との共同事業に切り替わります。横浜の専用センターは稼働から2年足らずで閉鎖、自前のラストワンマイルも断念しましたが、それでもネットスーパーを継続するために、即時配送のオニゴーと資本業務提携しました。オニゴーにとっても、イトーヨーカドー93店舗からのラストワンマイルを担う事業は、継続可能なものでなければなりません。「その要点は何か?」 いろいろあるわけですが、とりあえず一定の客単価は必須のようです。

事業の継続を模索したイトーヨーカ堂

 2024年12月上旬の会見で、イトーヨーカ堂の伊藤弘雅取締役は自前のネットスーパーを断念することについて「苦渋の決断」と繰り返しました。この決定はさまざまに言われるでしょうし、会社を取り巻く環境も流動的な状況にあって、「質問への回答を差し控える」というシーンも何度かありました。

 それでも何とかネットスーパーを継続する方法を探したという伊藤取締役に、「なぜ続けなければならないのか?」という趣旨の質問も出たわけですが、そこに顧客がいる限り、その要望に応えたいと思うのがイトーヨーカ堂に限らず小売業の気質でしょう。商売は損得勘定ですが、商売をしたい小売業のマインドは損得勘定だけではないと私は理解します。

 ネットスーパーで買いたい、自宅に届けて欲しいという顧客の要望に応えるべく辿り着いた方法が、オニゴーとの共同事業でした。伊藤取締役は「ビジネスとして継続する」と、これも何度か繰り返しました。ここから先は、もちろん損得勘定の話です。

 ネットスーパーの情報システムはオニゴーが提供します。サービス名を「ONIGO上のイトーヨーカドーネットスーパー」とし、既存のオニゴーとは別に新規アプリを立ち上げます。イトーヨーカ堂は商品を供給し、オニゴーが店舗でのピッキングから配達までの業務を担います。

 この仕組み、事業として継続できるかどうかは、オニゴーが担うラストワンマイルの採算が取れるかどうかにかかっています。店舗の客数と違い、宅配は件数が増える分だけ人手を要します。ここで生産性を上げる鍵は、1件あたりの客単価です。

採算の取れる客単価、最低ラインは5000円か?

 オニゴーの梅下直也代表は、客単価を上げるには店舗の取り扱い品目が多い必要があると言います。24年に提携を解消した都市型スーパーの場合、ネックになったのは店舗で扱う品目数の少なさだったそうです。イトーヨーカ堂との事業では、8000~9000品を扱います。より日常的に使ってもらうため、主要2000品は店頭価格にできるだけ近づけるそうです。

 では一体、どれだけの客単価があればいいのか? サービス設計を見ると、購入金額5000円(税込)未満の場合には少額手数料490円(税込)を加算するとなっているので、つまりはそれくらいは必要というわけでしょう。

 5000円前後のラインに特別な意味を持たせるネットスーパーは少なくありません。ヤオコーは本体価格の合計が5000円を超えると送料が半額の110円(税込)になります。西友は5500円(税込)以上で送料無料です。グリーンビーンズは最低購入金額を4000円(税抜)と設定とするなど、多くのサービスで客単価を5000円程度に誘導する仕掛けが見られます。さらにオーケーは最低購入金額を1万円(税抜)と設定しており、他のチェーンでも、できれば1万円近くに引き上げたいのだろうと思わせるインセンティブを目にします。

5000円の購入にはそれなりの買上点数が必要

 客単価を5000円以上に持っていきたい店側の都合はわかりますが、利用客が食品スーパーで5000円の買い物をするには、それなりの点数を購入しなければなりません。まして1万円レベルに高めるとしたら、相当なまとめ買いになります。梅下代表が品目数の必要性を言われる理由は、ここにあるように思います。

 わが家ではミネラルウォーターを“数十キロ”単位で買うときに、ネットスーパーを利用します。生鮮や総菜は自分で選びたいので、ネットではほとんど買いません。水のほかには米、あとはペーパー類。そういったものを大量に購入しない限り、ネットスーパーで1万円近い単価にはなりません。運ぶ方は大変だろうと思いつつ、購入する方も選ぶのが大変です。

 自らの購入内容を考えるに、客単価は高いけれども頻度はそう高くありません。スーパーの場合、客単価と購入頻度は往々にしてトレードオフの関係になるようにも思います。これを解消するには、何を売るかの商品戦略が重要でしょう。しかしながら店舗出荷型の場合、取り扱い品目は店内在庫の範囲内という制約もあります。改めて、難易度の高いビジネスだと思います。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください