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売上12万台!「1冊でも倒れないブックスタンド」が異例の大ヒットを飛ばす理由

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2025年1月19日 20時55分

リヒトラブブックスタンド

創業は1938年。昭和の時代から85年以上の歴史を築いてきた老舗事務用品メーカーが開発した商品が売れている。LIHIT LAB.(リヒトラブ、大阪府/田中宏和社長)が開発・販売する「1冊でも倒れないブックスタンド」だ。202210月の発売から1年ほどで44800台を売り上げ、20246月にはシリーズ全体の売上台数が10万台を突破。10月末時点で12万台に迫る勢いを見せており、成熟市場で異例のヒットを飛ばしている、その背景には何があるのか。営業本部マーケティンググループの中村あおい氏に話を聞いた。

実は商品名とは逆だった開発の発想

リヒトラブブックスタンド通常サイズ
通常サイズ利用イメージ

 オフィスでも家庭でも、デジタルシフトによって使用するシーンが限られるようになった文具をはじめとした事務用品。必要な機能を備えた商品がすでに出そろっている成熟市場のため、商品開発の際、特に日本では「ニッチな領域を攻めていく」傾向にあるという。消費者が気付いていないインサイトを探り、掘り起こすことができるかどうか、各メーカーがしのぎを削る中、85年にわたって事務用品を手掛けてきたLIHIT LAB.でも創意工夫を凝らした商品の開発に力を入れてきた。

 たとえば主力商品であるリングファイルはマイナーチェンジを繰り返し、板バネを使用せず、片手で軽くひねるだけで開けられ、閉める時にもパチンと音が鳴ることがないツイストリング、ファイリングする書類がフラットになって背を持ちやすくしたカドロックといった独自開発の機能を持たせた商品を市場に投入してきた。

「リングファイルなどは、機能を特に意識せず購入し、使い勝手の良さから次も買われて、じわじわと売上数字を伸ばしていくケースが多い」と中村氏。その一方で「1冊でも倒れないブックスタンド」のように、消費者の潜在的なニーズに突き刺さり「こういうものが欲しかった」と評判が広まるような商品は、一気にぐんと数字が伸びることがあるという。

 商品の機能を端的に表すネーミングのインパクトもあって「1冊でも倒れないブックスタンド」は人気に火がつくのが早かった。しかし、実は開発の発想は商品名とは逆。中村氏によると「本を1冊抜いたら倒れてしまうブックスタンドの不便さに気付き、その解決のために生まれた商品だった」という。

事業者向け流通が主の中一般消費者に選ばれた

リヒトラブブックスタンドA4サイズ
A4サイズの商品裏側

 商品を使ってみると、ブックスタンド奥にある上下可動式のストッパーが本を差し込んだ部分だけ上がる。その両側のストッパーは重力に従って下に降りた状態をキープし、本が倒れない支えとなっている。複数の本が並んだ状態から1冊だけ抜き取っても、その周りの本は倒れることなく、整然と並んでいる。ブックススタンドの両サイドには何台も連結させられるようにジョイントが付けられており、オフィスユースを想定した技ありの工夫が施されている。

リヒトラブブックスタンドジョイント
ジョイントイメージ

 もともとLIHIT LAB.の商品は企業向けが中心。既存のブックスタンドなどは主に事業者向けECでの流通が多いという。ところが「一冊でも倒れないブックスタンド」は、「法人に対する売上と比べて抜きん出ているわけではないが、一般消費者に選ばれて、目を見張る勢いで売れている」と中村氏。

リヒトラブブックスタンドミニサイズ
ミニサイズ

 いざ発売してみると、個人的に狭いスペースに1台だけ置きたいという要望が多かった。たとえばキッチンのカウンターに料理のレシピ本を1冊立てておくような使い方だ。そこで商品ラインナップにコンパクトなサイズを追加した。オフィスのペーパレス化、フリーアドレスやテレワークの広がりによって、法人向け市場が縮小する中で「個人的な嗜好で気に入ったものを買いたいという人が増えていて、数字を伸ばしている」と好感触を示す。

長年にわたって蓄積されてきた不満を解消

リヒトラブ営業本部
営業本部マーケティンググループの中村あおい氏

 日本文具大賞の機能部門優秀賞、文房具総選挙2023大賞などを受賞し、雑誌などのメディアに取り上げられたことも追い風となった。ECでの展開はもちろん、小売なら量販店や本と一緒に文具を取り扱う書店などでの取り扱いもある。「リュックサックに入れたら、中をきれいに整理できる」「推しのCDを飾ると、きれいに見える」「連続物のマンガを並べたところ、ブックスタンドが目立たず、本だけがくっきり見える」といった個人ユーザーの声が多数集まっているという。

 広告は打たず、メーンの取引先である卸・小売業界に向けて商品を説明したり、大口取引先に店頭で陳列してもらうためにダミーの本を付けたりする程度の販促活動しか展開してこなかったこともあり、課題と考えているのは、商品の魅力を広く伝える発信力の弱さ。「より多くの店舗で商品を見てもらい、存在を知ってもらえるように発信していかなければ」と中村氏は話す。

一冊でも倒れないブックスタンド
旧パッケージ(左)と新パッケージ(右)

 以前は段ボールのケースで販売されていたが、中身が見える透明なパッケージに変更した。色も当初はアイボリーだけだったのを、白と黒を追加。「子ども向けなどに、やわらかい色もあったほうがいいという意見もあるため、カラーバリエーションも増やしていきたい」と、ラインナップをさらに充実させることにも前向きだ。

 ブックスタンドにもかかわらず、本が立たずに、倒れてしまう。そのことがストレスとなり、モヤモヤしていた人がいかに多かったことか。

「1冊でも倒れないブックスタンド」がヒットした背景には、長年にわたって蓄積されてきた不満があったといえそうだ。ストッパーの可動部にも金属のバネは使っておらず、素材はすべてプラスチック。水回りの近くに置いても錆びる心配がなく、食パンなどを取り出しやすく保管しておくことなどにも使える。アイデア次第でより幅広い活用ができそうだ。

 中村氏は「ユーザーの声を集め、要望を聞きながら、次の展開を考えていきたい」と話している。

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