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地方百貨店の復調モデルか?藤崎の本店とサテライト店舗網の巧みな連動戦略

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2025年2月5日 20時55分

船岡店(宮城県柴田郡)の外観

仙台の老舗百貨店・藤崎(宮城県/藤﨑三郎助会長兼社長)が堅調だ。コロナ禍では売上を落としたが、回復は早く、20242月期決算では純利益が前年の2900万円から3倍以上となる18200万円となった。首都圏のようにインバウンドの恩恵を受けづらい地方百貨店。復調の裏に透けるのは、東北エリアに13店舗展開するサテライト店の存在だ。

藤崎の窮地を救ったサテライト店舗

藤崎本館外観
藤崎本館外観

 コロナ禍で百貨店業界は大きなダメージを受けた。特別な消費の場として、顧客に足を運んでもらうことが生命線だっただけに、人流ストップのダメージは甚大だった。久しく続く消費低迷と価格にシビアな消費者のマインドの変化も逆風となった。

 そうした中、仙台を拠点とする藤崎を支えたのは、東北エリアに点在するサテライト店舗だった。同社は仙台市以外にも、石巻、古川、船岡、山形、一関など県内外にも店舗を構える。だが、仙台市内にある藤崎本店以外はすべて小型のサテライト店舗(2025年1月現在13店舗、外商事務所4店舗)だ。

 その役割は、本店の補完だ。仙台までは足を運べない顧客の不便を、サテライト店舗で対応することで代替したり、本店商品の取り寄せ、友の会入金、本館購入商品の受け取り、会員入会申し込み、問い合わせなど販売以外の利便性を高めることで、藤崎の存在を東北エリアで浸透させてきた。

藤崎山形店
山形店の外観

 コロナ禍ではこの役割が存分に活かされることになる。移動に制約のある顧客に代わり、本来は取り寄せ対応だった商品を、各拠点に分配するなどで、利便性を高め、規模こそ小さいが、本店の”代替店舗”として、地域の不便を解消。顧客の需要をすくい上げた。

 実際に2021年度は2019年比106%、2022年度は同2019年比108%でコロナ禍を乗り切る実績を残した。売上だけではない。ある意味では最も期待される、本店への”送客”でも、しっかりと結果を残している。

 2019年以前にサテライトの利用がなかった新規顧客を約3万5,000名獲得。コロナ後には県外顧客の売上が、2019年比110%という成果をあげている。

コロナ禍でサテライト店舗は何をしたのか

藤崎船岡店
船岡店(宮城県柴田郡)の外観

 もちろん、本店に通えなくなったから近くのサテライト店舗に顧客が流れてきたという単純な話ではない。サテライト店舗を統括する外商統括部地域店舗営業部ゼネラルマネージャーの東海太郎氏は、次のように振り返る。

「注文や取り寄せを活用した本館連動の品揃えを展開したことなどが、家の近くでの購入したいという需要にささり、機会創出に繋がった。中元や歳暮のシーズンには『お近くで注文できます』とドアコール(客の自宅まで行って知らせること)やポスティングも実施。予想以上の反響を獲得できた」

 これまで接点のなかった顧客を中心に行ったというドアコールとポスティングは、2割弱の来店が得られたという。まさに地域に密着し、手足を動かしたことが着実に実を結んだ形といえるだろう。

コロナ禍の検証を基にアップデート

藤崎石巻店
石巻店の食品売場

 藤崎全体としてはサテライト網を最大限に活用し、コロナ禍という窮地を乗り越えたと同時に、新しい客との接点が増え、新たなニーズに気づきを得ることができたという。

「サテライト店舗といってもこれまでは、横並びが基本だった。ただ、コロナ禍ではこれまでにないチャレンジができ、手応えもつかめた。今後は各サテライトの色を追求しつつ、『ここでしか買えないもの』を提供するなど、消費者のニーズにより柔軟に対応していく店舗づくりが重要と考えている」(東海氏)

 実際に石巻店では、店内に〈もっと石巻!〉のコーナーを設け、「石巻金華茶漬け」や「珈琲工房いしかわ」などを販売。イベント時には取引先が店頭に立って客と接点を持つ機会を設け、生産者の想いを伝える場、ニーズを直接収集できる場としての役割も価値と捉える。こうした地域店舗ならではのカラーを追求し、客のニーズと商環境を踏まえてアップデートし続けることが、さらなる底上げを目指すうえで求められる。

ネットの積極活用でリアルとの相乗効果狙う

藤崎外商統括部地域店舗営業部ゼネラルマネージャー
外商統括部地域店舗営業部ゼネラルマネージャーの東海太郎氏

 そのキーとなるのがデジタルの活用だ。東海氏が力説する。「お客さまは欲しければ足を延ばしてでも購入してくれる。だから、欲しいモノを購入できる『場』の魅力を高めるために、デジタルを活用して発信、認知を高めることが必要。とはいえ、デジタルはあくまでも手段。店をつくり、顧客さまを作り出す『人』の力を高めてこそという『初心』を忘れず、風土づくりにも力をいれていきたい」(東海氏)

 販売形態として、いまやネットがリアルを凌駕する時代だ。それでもリアルの重要性は普遍で、うまく連動させることで売上最大化につながる。

 だから藤崎にとって、東北に13のリアル拠点があることはネット時代でも大きな強みとなる。あとはこの財産をどう最大化するか。

「ひとつはネット上で発信力のある人物や企業とうまく連動して、情報を広げることが鍵になる。もうひとつは、地元の人にとって行きたくなる場とするために例えば親和性の高いテナントを集めた”藤崎タウン”のような施設づくりも検討していきたい。今後は地域性や店舗特性などを考慮して、各店でより地域のニーズに合った展開をしていく」(東海氏)

 百貨店のなかでもユニークで厚みのある地域店舗網を誇る藤崎。それらが単なる補完的存在を超えていくプロセスに、苦境の百貨店復調のヒントがぎっしりと詰まっていそうだ。

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