JSA岩崎高治会長「25年、商品マスターの合理化にチャレンジする!」
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2025年1月25日 1時55分
日本スーパーマーケット協会(JSA)、オール日本スーパーマーケット協会(AJS)、全国スーパーマーケット協会(NSAJ)の3団体は2024年12月20日、記者発表会を開催した。この中で、JSAは、「持続可能な物流の構築」「人手不足対策」「環境対策」の3つを重点取り組み事項として挙げている。本稿では、登壇したJSA 岩崎高治会長の発言を語り下ろし形式でまとめた。
持続可能な物流について
全国に広がる物流研究会のネットワーク
スーパーマーケット(SM)業界が直面している物流課題は、「競争」から「協調」への転換期を迎えている。「首都圏SM物流研究会」は、当初JSA加盟企業の4社で始まった取り組みだったが、現在は19社まで拡大した。エリアごとの部会が行われる動きも生まれている。また、首都圏だけにとどまらず「中四国物流研究会」「東北物流みらい研究会」「関西SM物流研究会」が発足するなど、全国各地でSM企業間の連携が加速している。
JSAでは、荷待ち・荷役作業時間の削減、生鮮・チルド品における物流課題の改善、空き車両の有効活用、共同配送を推進していく。これにより、サプライチェーン全体の効率化を図り、持続可能な物流モデルを構築していきたい。
環境対策について
協業で環境負荷の軽減をめざす
環境問題への対応では、「食品廃棄物」「プラスチック削減」「CO2排出量」の削減を主要なテーマとして掲げている。具体的には、フードバンクへの食材の提供による食品ロスの削減や、カトラリーなどでの使い捨てプラスチックの使用の削減を推進してきた。
JSAでは、環境問題は「協業領域」として、今後も会員企業間での情報共有を活発に行っていく。各社の取り組みについては、現場の視察や見学会などを実施し、共有している。このような活動を通じて、社会全体の環境負荷の軽減につなげていく。
人手不足の問題について
外国人材の受け入れ環境を整備
SM業界が直面するもう一つの重要な課題には、人手不足への対応が挙げられる。この点では、外国人材の活用が拡大している。24年は外国人在留資格「特定技能」について、飲食料品製造業分野において、SM店舗のバックヤードにおける製造作業での受け入れが可能となった。
さらに、技能実習制度の対象範囲が拡大し、27年には「育成就労制度」(特定技能を持つ人材の育成と、特定産業分野における人材の確保を目的とした制度)への移行が決定し、外国人材の受け入れ環境が整ってきている。一方で、外国人材に依存することなく、デジタル技術やAIの積極活用による生産性向上をめざす。
「年収の壁」の問題について
税制と社会保険制度の改革を提言
国内の労働市場では、「年収の壁」問題が依然として大きな課題だ。JSA加盟企業の調査によれば、パート従業員の約8割が就業調整を行っており、その多くが「103万円」または「100万円」の壁に直面しているという。この状況を受けて、JSAは「雇用と社会保障に関する検討会」を立ち上げ、年金制度や税制、企業の配偶者手当を含めた包括的な改革案の検討を進めてきた。
その成果を「スーパーマーケット業界における年金制度改革に関する提言」としてまとめた。具体的には、被用者保険の適用条件となっている企業規模要件の撤廃や、労働時間が一定を超える場合に一律で被用者保険の適用とすることが盛り込まれている。また、住民税や所得税については、最低賃金や物価の上昇を反映し最低課税額を引き上げることを提案している。さらに、JSAでは企業や公務員の配偶者手当についても廃止や縮小を含めた見直しが必要だと認識している。
多様な働き方のニーズに応えるには、公平かつ中立で簡素な税制と社会保険制度の抜本的な改革を推進することが欠かせない。この改革を進めることで、業界全体だけでなく国の成長に寄与すると考えている。
25年に新たに取り組みたいこと
商品マスターの合理化にチャレンジ
これまでにJSAが進めてきた3つの取り組みと「年収の壁」問題への提言に加えて、SM業界では流通全体の効率化が引き続き重要なテーマとなっている。25年には「商品マスターの合理化」にチャレンジしたいと考えている。また、JSAは複数の企業から新たな加盟申請が寄せられており、これを機に連携強化を図るとともに、業界全体で主張すべきことを一つの声として発信していきたい。
SMは地域の生活基盤を支えるライフラインとしての役割を担っている。食料品の安定供給と豊かな食生活の提案に取り組むとともに、各企業で働く従業員へのサポート体制の充実も課題としている。さらに、物流全体の効率化に向けて、製・配・販の連携を推進していきたい。
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