ツルハホールディングスの店舗網が40都道府県に拡大 新社長の鶴羽順氏は何を語ったか?
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2020年7月5日 20時55分
ツルハホールディングス(北海道:以下、ツルハHD)では、堀川政司氏の退任にともない、20年6月2日付で専務執行役員の鶴羽順氏が社長に就任した。地域を支え、地域とともに成長するドラッグストア(DgS)チェーン企業として、2024年5月期のグループ店舗3000店舗、売上高1兆円の中期目標達成に向けて、新たなスタートを切った。
インバウンド売上消失も増収増益を達成
ツルハHDの2020年5月期(連結)業績は、売上高は対前期比7.5%増の8410億円、営業利益は同7.6%増の450億円、経常利益は同6.9%増の462億円、当期利益は同12.4%増の278億円となった。
20年5月期は、台風19号、21号などの自然災害、10月には消費税増税、新型コロナウイルス感染拡大など、外部環境が大きく変化した1年だった。とくに新型コロナウイルスの影響では、マスク、消毒剤、予防関連商材、緊急事態宣言後の巣ごもり需要による食品や日用雑貨の販売拡大というプラス面があったが、インバウンド売上がほぼ消失。外出自粛による化粧品や季節品の不振も響いた。6月22日現在、インバウンド対応の9店舗を閉店、7店舗を一時休業、96店舗で営業時間短縮を実施している。また、厳しい新型コロナウイルスの影響下で働く従業員の労に報いるため、特別感謝金30億円を支給した。
結果的には、プラス面がマイナス面を上回り増収増益を達成。堅調な決算結果になった。
新規出店131店舗(子会社化2社含む)はほぼ計画どおり。閉店は計画を12店舗上回る63店舗(スクラップ&ビルド含む)、期末店舗数は2150店舗となった。
既存店売上高については、期初に前年同期比0.8%増を計画していたが、消費増税による駆け込み需要、新型コロナウイルスの予防関連商材需要、4月以降の巣ごもり需要もあり、同4.2%増で着地した。客数は同3.3%増、客単価は同0.8%増、買上点数は同1.4%増となった。とくに新型コロナウイルスの影響を受けた第4四半期は同7.1%増と押し上げ効果が大きかった。
地域別、事業会社別では、すべての地域、全事業会社で既存店売上高が前年実績を上回った。インバウンド売上の影響が大きい大阪府の店舗で伸びが小さくなったが(中部・関西地区の既存店は同1.3%増)、精肉・青果を品揃えに加えたツルハグループドラッグ&ファーマシー西日本が同8.2%と大きく伸びた。
調剤は売上高、粗利益ともに計画をクリアした。19年10月の薬価改定、20年4月の調剤報酬改定に加え、新型コロナウイルスの影響による処方せん枚数の減少、処方せん単価の上昇などがあったが、調剤報酬は同11.6%増の855億円になった。調剤併設店舗では処方せん枚数の減少が比較的穏やかだったこと、調剤取扱店舗数の増加(57店舗)、調剤ロボットや在庫自動転送システムによる患者の利便性向上策もプラスに働いた。
日用雑貨、食品も新型コロナによるプラスの影響で、それぞれ大きく伸びた。一方、一般用医薬品(OTC)は花粉症薬、季節商材が計画値を下回り、化粧品はインバウンドの減少により前年実績をクリアできなかった。
19年5月期にリニューアルした、新プライベートブランド(PB)「くらしリズム」の導入を積極的に行い、当初目標の500SKU(期末503SKU)を達成した。PB売上高は同8.4%増、粗利益率は1.1ポイント改善の46.4%になった。
――20年5月28日付で、JR九州ドラッグイレブン(福岡県大野城市)を子会社化した。
鶴羽社長 同社は当社グループの出店が薄い九州を基盤に206店舗を展開。23店舗で調剤を行っている。同社の子会社化により、当社グループの出店地域は40都道府県に拡大した。6月末から、共同仕入れや出店コストの低減など、統合シナジーを最大化するべくスケジュールづくりを進めていく計画だ。統合効果の具体的な見込みについては、次回以降の決算発表の場で明らかにしていく。
精肉・青果の委託販売を約270店舗追加する
――21年5月期は新型コロナの影響を受けながらのスタートになった。
鶴羽社長 21年5月期の計画を策定するにあたって、新型コロナ関連の需要増は盛り込んでいないが、インバウンド売上はゼロを前提にした。
新規出店は130店舗を計画。閉店はインバウンド対応の9店舗を含む47店舗。期末店舗数は83店舗の純増を見込んでいる。
新PBの「くらしリズム」は、21年5月期末までに700SKUをめざす。なかでも、ヘルス&ビューティでの付加価値商品の開発を進め、「くらしリズム」と旧PB「エムズワン」の合算売上は400億円(同7.7%増)を計画している。
デジタル戦略は重点施策のひとつだ。現在、スマホアプリのダウンロード数は80万件にとどまっているが、7月から「花王マイレージクラブ」とのポイント連携を図るなど、ダウンロード促進策を打つ。また、グループ店舗2000店舗以上という規模のメリットを活かし、各メーカーさまからの販促協力を得ながら、顧客に合わせた最適な商品提案、新規顧客の獲得につながる商品提案を可能にする、DMP(データマネジメントプラットフォーム)の構築もめざしていく。
人員配置の適正化も図る。事業会社ツルハではシフト作成支援システムを導入済みだが、新型コロナの影響もあって、人件費コントロールにどれだけの効果が上がるかの検証ができていないが、今後、その影響が軽微になれば、効果検証が可能になる。ツルハ以外の事業会社での導入を検討していきたい。
前期、ツルハグループドラッグ&ファーマシー西日本で効果が得られた、精肉・青果の導入・委託販売取扱い拡大も進めていく。委託販売だから、店舗のオペレーションに負担なく進められ、来店頻度の向上、新型コロナ下で顕在化したワンストップショッピングのニーズにも対応できる。20年5月末の導入店舗は約380店だったが、21年5月期には約270店舗を追加する。
これらの施策により21年5月期は、売上高は対前期比2.3%増の8600億円、営業利益は同0.4%増の452億円、経常利益は同0.4%増の464億円、当期利益は同3.2%減の270億円を見込む。既存店売上高は同0.3%を前提にした。期末店舗数は2233店舗を計画している。ただし、いずれについてもJR九州ドラッグイレブンは含まれていない。
未出店地域でのドミナントエリア化推進へ
――24年5月期の中期目標として、店舗数3000店舗、売上高1兆円を掲げている。
鶴羽社長 目標達成のための基本戦略として、専門性・利便性の追求、ドミナントエリア戦略に基づく店舗展開、PB商品の展開拡大・商品力向上、グループの組織力・収益力強化を進めていきたいと考えている。
専門性の追求については、当社の強みである、医薬品、化粧品のカウンセリング販売、調剤の強化を図っていく。グループ内の教育体制の充実により、専門知識・接客技術の向上、管理栄養士の活躍推進によりヘルスケア領域の役割の機能の幅の拡充を実現していく。
利便性では、キャッシュレス対応、可能な限りのワンストップショッピング対応、食品の導入などにより、生活スタイルやニーズの多様化に対応する。デジタル戦略は、まだまだこれからだが、とくに購買データの蓄積は、店舗数が強みになる。今後はそのメリットを生かしてのサービス展開を考えていきたい。
次にドミナントエリア戦略に基づく店舗展開だが、これまで同様、一定地域への集中出店を心がけていく。
地域集中出店は、販促、人員配置、在庫調整などの面で効率化を進められるというメリットがある。また、当該エリアにおける認知度も向上することから、地域シェアの早期獲得も可能だ。未出店地域(群馬県、富山県、石川県、福井県、岐阜県、三重県、奈良県)においては、自力出店に加え、M&A(合併・買収)による拡大を図り、ドミナントエリアの獲得、既存シェアの拡大を進めていく考えだ。
「くらしリズム」の展開によるPB商品戦略では、グループ店舗に「わざわざ買いにきてくれる」ような、価格戦略品、高付加価値品の開発をめざす。
また、ナショナルブランド限定の専売品についても、他社と差別化できる商品の育成を行っていく。とくに、医薬品等の専売品、化粧品特定ブランドの販売強化を図っていきたい。
当社グループでは、事業会社がそれぞれの屋号により、地域密着経営を行っている。グループの組織力と収益力の強化に関しては、地元で培ったブランドパワーを維持しつつ、グループとしての規模を活かした商品調達、システム構築など、コスト面での統合効果を創出していきたい。事業会社ごとの成功ノウハウを共有し、横展開できるのも当社グループの強みだ。
また、メーカーさまとの間で、購買データの共有を進め、売場起点によるカテゴリー単位の強化を図っていく。メーカーさま、卸売業さまとの協働によるカテゴリー強化施策JBP(ジョイントビジネスプラン)戦略の展開も、スケールメリットのひとつと考えている。
全国展開の店舗ネットワークの強みを生かした商品戦略、データ活用によるデジタル戦略も、データマネジメントプラットフォーム構築とその戦略的活用と合わせて、今後の推進項目として取り組んでいく。
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