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ユニクロ世界一、在庫レスストア、C2C、金融主導再編…5つの予言が進行形で的中!

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2020年10月27日 20時54分

ファーストリテイリングは3日、今週末に外出自粛要請の出ている東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県のユニクロ店舗のうち計98店舗を臨時休業すると明らかした。2017年1月撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

アパレル業界でいま起こっていること

2019年、私は「20年はTOB元年」になると予測した。そして、その予測は見事あたり、最近の新聞紙面上で企業の合併に関する記事を見ない日はないほどになっている。その他、的中させた予言は枚挙にいとまがない。今回はその予言を一つひとつ検証することを通じて、いまのアパレルに起こっていることを深く掘り下げていきたい。

ユニクロ銀座店の様子
(ロイター/Kim Kyung Hoon)

在庫レスストアが20年から増え始めた理由

 私は「20年はTOB元年になる」と予測したが、それ以外にも大きく5つの予言をしている。

 1.世の中には服が溢れ、サステイナブルな循環経済へと移行する中、アパレル業界はモノを売るのでなく、消費者からモノを買い取ることが始まり、クルマのような二次流通企業ができあがるだろう

 2.アパレル企業は在庫を持たなくなる

 3.個人間取引業者が市場の大多数を占めることになる

 4.商社不要論から商社活用論へ代わり、商社がプラットフォームになる

 5.アパレル企業は、バブル期に溜め込んだ資産を取り崩すことで生きながらえてきたが限界近づき業界再編が起きる。しかし、再編は金融主導で行われるだろう

 などだ。

 1に関して言うと、自らスタートダッシュをしないアパレル業界は、誰が先頭を走るのかを横目で見ている状況が続く。そして、まさに、時価総額世界第2位となったファーストリテイリングがH&Mを追い抜き、世界一になる日は近く、同社が、買取事業を行うだろう、とも予測した。なぜなら、世界トップとなった企業の敵は、同業者でなく、「世界の目と期待」だからである。優等生は、常に模範生でなければならないのだ。同社は、消費者から不要になった衣料品を受け取り、リサイクルダウンを販売し始めた。こうした動きは加速し、今後、次々と、アパレル企業の買取、および二次流通市場(すでにZOZOはやっている)は拡大するだろう。

 ファーストリテイリングの主戦場は今後、経済成長性を考えればアジアとなる。そうしたなか、すでに桁違いの投資をアジアにし、出店しているファーストリテイリングが1位となるのは必然だからだ。

 2に関していえば、大手コンサルティングファームでの記憶を思い出す。私は某経済新聞から取材を受けたのだが、私の「アパレルは在庫を持たなくなる」という主張が、業務に精通していないコンサルタントの人達の横やりによって、捻じ曲げられそうになった。彼らは「在庫がなくてどうやって店を運営するのだ?」「半製品だって在庫だろう」という主張を崩さなかったからである。私は、半製品と完成品のライトオフの期間差から来る利益率割合さえ理解していない人間とこれ以上議論をしてもムダだ、とあきらめたことがあった。わずか4年前だ。

 それが今では、ファッションビルのマルイを展開する丸井グループは在庫レスのレディースシューズの店を出し、ZARAは六本木ヒルズに、つい最近ではオンワード樫山が「売らないお店」を出した。「リアル店舗」は「体験場」となり、ネットが「受注場」になるという、私の予言通りになったのだ。

 

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個人間取引でも最大のブランドはユニクロ

 3は、もはや説明の必要すら無いだろう。正確な統計はだされていないが、C2C、いわゆる個人間取引の市場規模は対前年比9.5%増となる1兆7407億円(経済産業省電子商取引に関する市場調査より)と推計されている。しかも、個人間売買の対象として最大のブランドはユニクロであり、そのプラットフォーマーであるメルカリは上場してしまった。そうしたなか、最近は、ようやく売上至上主義から利益率へKPIを変えてゆく企業も増えてきたわけだが、それでも、中には過去から続く大量生産、大量販売のスキームから抜け出せず、循環経済の今でも、素材を「リサイクル原料」にする程度で、「大量販売」を続け、これがサステイナブルだと考えている一部の商社・アパレル企業もいる。

 4についていえば、私の予言は大外れになったことを告白しよう。私は、PLM (Product lifecycle management : 商社業務を自動化するパッケージソフトウエア。ユニクロ以外のアパレルは未だに手作業でものづくりを行っている)を、バリューチェーン全体で活用し、工場、素材・付属メーカー、デジタルセンターハブとなる商社、そして、ブランドホルダーのアパレルとリテーラーの「5キー・エンティティー」(5階層からなるバリューチェーン)が、クラウドに上げられたPLMを共同で活用するということが起きるということだった。

 実際、アジアではこうしたマルチアパレル、マルチベンダーは常識化され、パーツの多いシューズでは標準化ガイドラインができあがっているほどである。日本でも同じ試みがあったが、それぞれの企業が我田引水を主張し、まとまらなくなって崩壊を何度もしている。

 これは、改革を先導するコンサルや事業管理者のリーダーシップが弱いことが原因だ。いや、個別の企業が自社のことを優先するのは必然なのかもしれない。私の提唱するCPFR(バリューチェーン全体が共同で、商品企画を行い、需要予測、そして、商品供給におけるリスクもリターンも分け合うという30年も前のコンセプト)型のバリューチェーンのデジタル化は、中立的な資本政策をとった政府、商社、ファンドなどが、なかば強い強制力をもって推進しなければ、過去から延々と続く「狐と狸の化かしあい」は終わらず、アジアの中の日本の劣後は決定的なものとなるだろう

 初期、私はいくつかの商社に呼ばれコンセプト説明をしたが、彼らは、「話を聞いて理解したつもり」になり、独自でPLM導入を進めた。その結果、私が提唱するCPFR とはほど遠いものとなった。

 ベンダーも、こうした基礎的コンセプトを理解できず、個別最適に走る個別企業にPLMを売り込み、現時点で積年のアパレル産業の課題であるバリューチェーンの統合は、ごく一部の事例を除いて実現できていないという状況になっている。

 正直に告白すれば、30年前、私が商社繊維部門に配属されたとき、私のまわりの商社の人間はアパレルの人達や取引先の人達をやや下に見ていたように思う。どこかで「自分たちは世界を股にかける商社マンだ」と自画自賛していた感覚をもっていた。しかし、今となっては、に、強い危機意識をもち、自らを変革し、AIなどのハイテク知識と情報武装をしはじめているのはアパレル企業の方だ。

 実際、ワールドの鈴木信輝社長は40代で、グローバルコンサルティングファーム出身者だし、周りを見渡せば、社外取締役などに、投資銀行やファンド出身者、コンサルティングファームのパートナークラスの人材などスーパーエリート達を集め、極めて戦略的に事業の未来構想を描いているのはアパレル企業の方であるように思う。

 古い商社は、未だに前工程(商社が売上を上げるアパレル企業)に対して、「いかに利益を多く奪い取るか」を考えている。だから、経営学的に言う「レッドオーシャン」とよばれるフィールドに数社に群がり、まるでトヨタが部品供給メーカーを殺しもしないが、生かしもしないギリギリの状況において利益を上げている状況になっているのだ。 

プラットフォーマーになれなかった商社 何が悪かったのか?

 商社が果たすべき役割とは何か?これは財閥系の某商社の手法がお手本になる。彼らは、前工程から利益を搾り取ろうとせず、むしろ、有能なターンアラウンドマネージャーである人材を多数送り込み、前工程の事業価値をあげるお手伝いをする。

 時に、最新のシステムを自らのリスクで自社(商社側)に導入し、アパレルに無償提供する。彼らの考えは、「随伴トレード」といって、前工程が息を吹き返し、この厳しい競争環境の中で勝ち続け売上をあげてゆくことで、付随するトレードも結果的に上がってゆくという考え方なのだ。

 多くの商社が、30年前から頭が硬直化している間に、「アパレルのプラットフォーム化」はどんどん進んでいる。個別のアパレルがプラットフォームとなれば、他のアパレルは寄りつきにくくなる。なぜなら、誰もが、プラットフォーマーが儲かり、プラットフォームの上でビジネスをするアパレル企業は、利益を吸い取られるということを、ZOZOなどの事例で十分理解しているからだ。アパレル企業、例えば、プラットフォーマー化を高らかに宣言したワールドなどが、この課題を解決すれば、商社は一部を除いてドミノ倒しのように倒れてゆくだろう。残念だが、商社のプラットフォーム化は実現性が低くなってきたように見える。

 

 この状況を踏まえたうえで、次回、5番目の予言「金融主導の業界再編化」について語りたいと思う。この予言の結末には恐ろしい世界が待っているのである。

 

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プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

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