激動の流通 #1 “安売り”は苦境のGMSを救うか
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2020年12月13日 20時55分
2020年は流通業界にとって激動の1年だった。食品スーパー(SM)はコロナ特需で売上が急増。ドラッグストア(DgS)もマスクをはじめコロナ関連の衛生用品が飛ぶように売れ、業績は大きく伸長した。その一方、総合スーパー(GMS)、コンビニエンスストアは外出自粛やリモートワークの浸透などを理由に苦戦する企業が目立った。コロナ禍で消費者の買物の仕方が変わる中、2021年に勝ち残るのはどの業態なのか。業態ごとの課題を振り返りながら来年を展望してみたい。
生まれ変わった「ピアゴ」
平日の午前中だというのに、ひっきりなしに自動車が出入りし、駐車場スペースが埋まっている。愛知県一宮市にある「ビアゴプラス妙興寺店」の光景だ。
同店はユニー(愛知県)が開業した「ピアゴ」を、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(東京都:PPIH)がユニー時代の屋号を一部残し、改装した店舗である。
ピアゴプラス妙興寺店の最大の特徴は、ユニーのGMSに“ドンキ流”の個店経営を導入している点だ。価格設定や売場づくりなどの権限を店舗のスタッフに委譲する方式を取り入れ、2020年6月に新装オープンした。
周辺にDgSやSMが進出し、改装前は苦戦を強いられていたという同店。転換後の売上高は、転換前の前年同期比44%増の伸びを示しなど、旧来型のGMS店舗としては立派な実績を残しているという。
ピアゴプラス妙興寺店では、商品構成も大胆に変更している。旧店時代はGMSによくみられる“総合的”な品揃えを志向していたのに対し、改装後は「食品」「ドラッグストア」「衣料専門店」の集合体のような品揃えとすることで、売場にメリハリをつけている。それでいて、品揃えは貧弱にみえない。
“安売りのGMS”
そして店内を見渡してみると、ドンキらしい圧縮陳列やPOP洪水は見られない。“ドンキ流”の運営手法を取り入れた、ダブルネーム店舗「ドン・キホーテUNY」とも異なる。
まさに、地域のお客が日常の買物をするのに丁度いい売場・商品構成とも言えよう。価格対応も万全の構えで、おそらく周辺の競合店を調査したうえで価格を決定したと思われる、「ロープライス保証商品」と銘打った商品が大量に陳列されている。同店では定期的に周辺店舗の価格調査を実施しているとのことで、「安い」というイメージが商圏内に浸透していけば固定客化も図られるだろう。
「GMSの時代は終わった」といわれて久しい中、“ドンキ流”の価格政策を取りつつ、品揃えを再構築したピアゴプラス妙興寺店は、“安売りのGMS”として新たな再生の道を歩みだしている。
価格競争力を失ったGMS
「もともとGMSは“安売りの店”だったが、いつの間にか価格訴求力を喪失した」
ある青果専門店チェーンの社長はそのように話す。同チェーンでは、毎日隣接する競合GMSの青果物の価格を調べ、それよりも安い価格を設定している。
値付けの権限は店長が持っており、機動的に売価を決める。同社によれば、「トータルの売上高がアップすれば、特定の商品を思い切った低価格で提供しても利益が出せる」という。かつて、「業種店」と呼ばれるような小規模な専門店は、「SMが近くにできると潰れる」とされてきた。だが、この青果店チェーンはGMSと“共存”しながら勝ち残っているのである。
現在のGMSに、このような機動力はあるのだろうか。SMやGMSは本来、「低価格」が生命線だったはず。しかし、店舗が増え、人員が増えていくうちに低価格を維持できなくなったのだろうか。その結果、「ドン・キホーテ」のようなディスカウンターの台頭を許していった。
セブン&アイ・ホールディングス(東京都)の鈴木敏文名誉顧問はあるインタビューで「日本のGMSはアメリカ仕込みのGMSのスタイルから脱却できず、(旧態依然とした)取引慣行を引きずっている」とコメントしている。
コロナ禍による自粛ムードが依然として続き、足元では苦戦が続くGMS。もはや消費者の購買行動が完全に変わってしまったと言える。品揃えから運営・販売手法まで、GMSはすべてを解体し作り直す必要に迫られているのではないだろうか。
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