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「その話はもう聞いた」という日本人 身につけるべき真の「戦略的思考」とは?

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2020年12月21日 20時59分

taa22 / iStock

私が講演を行うと、必ずでてくる質問や感想は「その話はもう聞いた」である。つまり、「もっと新しい話はないのか」と言いたいわけだ。しかし、経営戦略の本質に「新しい、古い」はないのである。この根本にある問題として、「言葉や用語」は知っているけれども、その用語やフレームワークを使って、自社の環境を分析した上で、戦略に落とし込むと言うことが日本人は苦手だと言うことだ。そうした我々日本人が身につけるべき「戦略的思考」を解説したいと思う。

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競争戦略は普遍 競争環境が変わったのである

 経営戦略に古いも新しいもないのだが、あえていうなら以下のような状況の変化が起こっていることを認識したい。①成長市場だった時代のビジネスモデル、考え方、経営のまま成熟市場そして循環経済下に移行したことで、戦い方のルールが変わってきた。②デジタル化という「よく切れる刃物」が登場し、米国を中心に加速度的に技術が進歩しているのに、我々日本人は、その使い方を理解できていない。③競争が国をまたいでおり、今まで海外で戦った経験が無い日本企業が、いきなり世界戦で戦わねばならなくなった。つまり、自社を取り巻く環境が激変しているのである。それなのに、従来の延長線上でビジネスをしていてもうまくいくはずがないのである。

 次に、日本という国に目を向けると、数々の経済政策に失敗し、OECDの中で最も成長していない国になった。国民は将来に希望が持てず、企業は努力に努力を重ねデフレ企業ばかりが勝ち組となった。日本は「安いが質はよい」というイメージの国となっている。一方で、高額商品は、確かにインバウンドを中心に売れた。だが、それは、「日本人は真面目だから偽物は売らないだろう」という理由からくるもので、欧米のブランド品が日本で売れた、というだけの話である

 それなのに政府は真逆のインフレ政策をとり、いつまで経っても物価が上がらないことに首をかしげている。当たり前である、将来が不安なのに毎年高価な服など買って着飾っている場合ではない。今、若者に「貯金ができたら何を買うか?」と訪ねたら、「クルマが欲しい」と答えるかと思いきや、「投資信託を買う」などという。


 新しい話を聞くまえに、こうした基本的な分析を行い、今私たちの競争環境がどうなっているのか、そして、その中で新しい勝ち方は何かを自分で考えればよいと私は思う。普遍的かつ、基本的な戦略コンセプトは過去の古典にいくらでも書いてある

 

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「戦略的思考」とは何か?

 「お前のいう戦略的思考とは何か」という質問が聞こえてきそうだから、説明したい。それは、全体を俯瞰した抽象論から論点を絞り込み、最も重要な部分からドリルダウンし各論に落とし込み、課題の真因をあぶり出すこと、である。そして、その課題を解決することで、一気に進むべき方向性を変える、ということである。

 日本人は、「今私が説明したことを何というか?」というペーパー試験をだせば、「ピラミッドストラクチャー」です、と答えることは得意なのだが、いざディベートをさせると、「新しい話はないか?」と的外れな質問をする。

 テレビを見れば、今や「東大王選手権」、「お笑い芸人大会」、「グルメ紀行」の三択しかなく、芸能人は「XXX48」ばかりとなり、昼の話題は「芸能人の不倫話」ばかりになった。私たちは、ますます考える力を失いつつあるように思う。

 今、株価が下がれば外国企業だけでなく、日本企業からも買収攻撃に遭うし、ユニクロは日本よりも海外から利益を得るという一昔前では考えられないようなことが起きてきた。さらに、消費をしないといわれている日本人が、最も金を使っている携帯電話はハードを韓国が、ソフトは米国が作っている。日本企業が「それ、EC化だ!」と叫べば叫ぶほど日本の金は海外に流れてゆくだろう。 

 循環経済といえば聞こえは良いが、ようは成長が止まったということで、マクロ的な先進国の行き着く果ての姿という大局的意味あいと、経済政策や企業戦略に失敗し個別企業の成長が望めないという意味を混同し、両者を都合の良い具合に使っているように見える。デジタル化などはその最たるものだ。アメリカは、もはや我々の手本たりえない。私たちは、日本という国家、企業、国民の特殊性を考え、我々しかなし得ない独自の戦略を考える時期に来ていると思う。特に、デジタルが得意だという人の大局観のなさ、あるいは、戦略が得意だという人の業務プロセスに対する不理解は深刻で、私はここに大きな溝を感じざるを得ない。

これからの経営者に必要な3つの新たなアジェンダ

 私は、ことあるごとにM&A、デジタル、オフショアは、これから経営者に突きつけられる新しいアジェンダで、単にCFOにデューディリジェンス(企業価値評価)をやらせ、CIOにデジタル化を推進させ、海外支店長に海外戦略を丸投げするという経営が破綻している姿を幾度も見てきた。中には、かけ声だけ威勢が良く、ろくに資金繰りも読めない経営者もいたぐらいだった。M&A、デジタル、オフショアは、それぞれ有機的に、そして、戦略的に結合し相互依存しあっている。

 本稿のテーマであるデジタル化など、その最たるもので、テクノロジーの変化は早いから専門家に任せようでは企業のデジタル武装は遅れたままだ。

 

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プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

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