ドラッグストアの針路 #1 プロローグ
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2021年1月31日 20時55分
5月13日、内閣府が公表した3月の景気動向指数(速報値、2015年=100)は、指標となる一致指数が99.6となり、前月比0.9ポイント悪化した。写真は2015年5月に都内のドラッグストアで撮影(2019年 ロイター/Yuya Shino)
このところのドラッグストア業界は、まさに順風満帆である。日本チェーンドラッグストア協会によると、2019年のドラッグストアの市場規模は対前年比5.7%増の7兆6859億円。新規出店とコロナ禍による“マスク特需”などもあって市場規模はさらに拡大するよ予想されている。近年は食品強化型のフォーマットの展開で、食品スーパーやコンビニエンスストア(コンビニ)といった他業態からお客を奪取するプレイヤーも増えており、ドラッグストアの勢力はとどまるところを知らない。ドラッグストアに死角はないのか。連載で動向を追ってみる。
「2分の1ルール」の見直しで潮目が変わる?
いま、ドラッグストア業界では大きな課題が浮上している。政府の規制改革推進会議がまとめた「当面の規制改革の実施事項」の中で、一般用医薬品販売の「2分の1ルール」の見直しが進められているからだ。
「2分の1ルール」とは、医薬品の販売時間内を営業時間内の2分の1にするというもの。現在行われている議論では、現行の規制を見直し、営業時間に関係なく販売時間を一定とし、コンビニのような長時間営業の店舗での医薬品販売を実現しようとしている。
現行のルールの場合、コンビニなどで一般用医薬品を販売する場合、登録販売者を複数雇用しなければならない。コンビニを経営するオーナーにとって、一般用医薬品はニーズがあること分かっていても、雇用の確保、あるいは人件費の増加などが障害となる。今回の規制緩和が実現すれば、複数の登録販売者や薬剤師を雇わなくても済む。
医薬品にニーズのありそうな時間、たとえば18時から24時まで一般医薬品を販売できるとなれば、コンビニにとって大きな商機となることは間違いない。新規客の取り込みにもつながるだろう。
ドラッグストアからすれば、“儲け頭”のである一般用医薬品の売上高が減ることが想定され、痛手になりうるが、「痛痒を感じない」(ドラッグストア関係者)という声もあり、許容範囲の規制緩和と言えなくもない。
コンビニにとって、一般用医薬品の販売はここ数十年来の要望というより“切望”に近い。コンビニ各社が要望しているのが、「遠隔システムを活用し、有資格者とコミュニケーションをとりながら一般用医薬品を販売する仕組み」だが、こちらは乗り越えるハードルが少なくなく、「実現の可能性は低い」(ドラッグストア関係者)という声もある。
市場規模10兆円も達成可能?!
「価格が安いから」(62.8%)、「商品の種類・選択肢が豊富だから」(39.9%)――。企業間EDIやデータベースを運営するプラネット(東京都)が2019年に実施した「ドラッグストアに関する意識調査」の中の設問、「ふだん、ドラッグストアを利用する理由」には、そのような回答が集まっている。
消費者がドラッグストアに求めているのは、コンビニではなかなか実現できない「価格」あるいは「品揃え」といった小売としての“領域”のようなものであるのかもしれない。実際、ドラッグストアのなかには、コスモス薬品(福岡県)やGenky DrugStores(福井県)のように、食品の品揃えと低価格販売を武器とするチェーンが勢力を急拡大している。
コロナ禍でマスクなど購入するためにドラッグストアでの買物を一度経験したお客が今後リピートすることが予想される。業界内では「(現在約7.7兆円の)市場規模は近いうちに10兆円を超えるだろう」という観測もある。
まさに向かうところ敵なしの様相のドラッグストアだが、アフターコロナになってもこの勢いを維持することができるのか。コンビニや食品スーパーといった他業態との競争をどう勝ち抜いていくのか。次回以降も本連載では、各社の取り組みを通じて、ドラッグストアの針路について考えてみたい。
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