売上約10倍の書店に2日でフォロワー2300倍の中小メーカー!デジタル時代のマーケティング
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2021年2月21日 20時58分
コロナ禍でも成果を出している企業はある。流通業界のデジマに詳しいD2C dotプロデュース1部 プランナー/プロデューサーの菅原太郎氏は、そうした企業の特長を「人の動かし方が巧み」と評する。国内外の成功事例を参照しながら、同氏に成果に直結するデジタルマーケティング実践の勘所を教えてもらった。
コロナ禍で躍動した国内のデシマ実践事例
デジタルマーケティングは、その役割としてテクノロジーを活用した効率的な集客や顧客創造の推進などが期待されている。そのため、ともすればテクニカルな側面に目が行きがちだ。だが、コロナ禍で躍動したのは、むしろ人間臭さやユニークな視点でデジマを活用した企業という。
![何気ない会社のやりとりを伝える投稿がバズったやすもと醤油](https://diamond-rm.imgix.net/wp-content/uploads/2021/02/122f6c92327cb7450957f4c9197d8c92.png?auto=format%2Ccompress&ixlib=php-3.3.0&s=45908a7f0c1683bcf80866a7ab3f8453)
菅原氏が最初に事例として挙げたのは安本産業。島根県の小規模な醬油メーカーの同社は、40だったフォロワーをわずか2日足らずで9.1万にまで爆増させる。「この会社が何をしたかというと、ツイッターでフォロワーが5人から40人に増えたことを上司と同僚が喜んでいるとつぶやいただけ。それが本当にバズり、爆増につながった。こうした場合、一回で終わってフォロワーも激減しがちですが、その後も担当者のリプライや情報発信が支持され、現在も約9万のフォロワーがいます」と菅原氏。フォロワーだけでなく、注文も殺到し、商品が完売する奇跡が起きた。
菅原氏は、この成功のポイントを「企業アカウントでの運営ですが、フォロワーと同じ目線でやり取りしたことがハマった」と分析。支持者との間に親近感が生まれたことで、「助けてあげたい」という感情も呼び起こし、売上の爆増にもつながったという。
東京・代々木上原のフレンチ「sio」も顧客に寄り添うことで多くのファン獲得に成功した事例だ。「ここは幸せの分母を増やすというミッションを掲げ ツイッターで店のレシピを公開。それが本にもなり、さらにnoteでもレシピを紹介。こうした『GIVE』の精神がフォロワーに響き、多くの支持者を獲得しています」と菅原氏。
2社とも、小規模という共通項があるが「決裁者と担当者の距離が近いとデシマの成功確率は上がる傾向があります。規模が大きい小売企業の場合はで難しい側面もありますが、参考にすべき部分は多々あります」と菅原氏は運営面での成功要因をあげる。
![各自に本棚のシェアを呼びかけ、バーチャル上でその本棚から書籍を選べばECで買える仕組みを作り、売上が急増したハンガリーの書店『ライターズショップ』](https://diamond-rm.imgix.net/wp-content/uploads/2021/02/syoten.png?auto=format%2Ccompress&ixlib=php-3.3.0&s=1748830c7aadcfc85da8c6a07058e07e)
海外でもこうしたフォロワーと一体して成功につなげるデジマの事例はある。菅原氏が紹介するのは、ハンガリーの書店『ライターズショップ』だ。「この書店は本当に小さくて、他の小規模書店同様、アマゾンの猛威に追いやられ、窮地にありました。ところが、独自のデジマによって、売上を910%もアップさせたのです」。
同書店が行ったのは、本棚のシェアの呼びかけ。各自に本棚の写真を送ってもらい、それをオンライン上で公開。その本棚の本を同書店で購入できるシステムだ。予想外に多くの有名人が寄附したことで、この仮想本棚は劇的な“バズり”につながった。
「施策自体はデジマとして特段なにも新しくありません。しかし、店長とそこに付いている熱いファンがいて、そこに有名人も加わったことでさらに広がり、テレビでも取り上げられ、売上の爆増に。人格があり、ファンがあって、それがひとつのコミュニティになってくると こういう奇跡が起こるんです。国内の2事例とこの事例の成功要因は根本は同じだと思います」と菅原氏は解説する。
業績拡大を実現した海外の3つのデジマ事例の共通項
国内外の3事例が、デジマによって人の「心」を動かし、成功をつかんだとすれば、次の海外3事例は人の「行動」を動かし、成果につなげた事例といえる。
![](https://diamond-rm.imgix.net/wp-content/uploads/2021/02/meyer.png?auto=format%2Ccompress&ixlib=php-3.3.0&s=fe2d6c779db3cbcc46d86f1a99dbe205)
ひとつ目は、オーストラリア最大の百貨店『マイヤー』の事例。施策は、いい子か悪い子かがランプの色で分かるクリスマスツリーに飾り付けるボールの販売。至ってシンプルだが、実は親が手動で判定する仕組みと結果がデジタルサイネージで大々的に街頭で告知されることなどが大きな反響を呼び、ランプはバカ売れ。来店者も増大した。結果、同百貨店は10年続いていたクリスマス商戦の赤字にピリオドを打ったという。
ふたつ目の事例はフランスのペットフード会社プリナの取り組みだ。内容は、犬の健康診断が浸透していない課題に対し、おしっこをしたくなるような電柱型のデジタルサイネージを街中に設置。尿から健康状態を診断し、サイネージ上に結果と推奨ペットフードを掲示するというもの。いかに売るかでなく、売る前段階の行動を促すためにデジタルを活用し、見事に結果にもつなげている。
最後は、 オーストラリアの損害保険会社『IAG』の事例だ。この会社が行ったのは、デジタルを活用した保険料の最適化。事故が起こってからでは高額になりがちな保険料を抑えるため、定期点検を受ければキャッシュバックする仕組みを構築し、加入者とのウィンウィンを実現。デジタル活用で保険業界に浸透する仕組みを破壊し、新たな需要を創り出した。
![D2C dotプロデュース1部 プランナー/プロデューサーの菅原太郎氏](https://diamond-rm.imgix.net/wp-content/uploads/2021/02/sugawara5-e1612870548330-265x300.jpg?auto=format%2Ccompress&fit=crop&h=300&ixlib=php-3.3.0&w=265&s=a1028777ff4559c3ff8476a152fa48db)
菅原氏は、これら3事例について「消費者とのタッチポイントにおける既存のプロセスをどう変えていくかという視点でデジタルを活用している点が共通項。なにも直線的に集客につなげるだけがデジマではないのです」と解説。その上で、「デジマやDXというとなにか難しく、そして温度感のないイメージを抱かれがちですが、そんなことありません。今回紹介した事例のように温かみのある取り組みにも生かされ、そして成功につながっているのです」と菅原氏。
コロナ終息はいまだ見通せない状況だが、ここで紹介した事例から、2021年のデジマ施策の方向性はハッキリと見通せるのではないだろうか。
◎参考事例
The Writers’ Shop – Open Shelves -(ハンガリー / 書店)https://www.youtube.com/watch?v=xQEv8ktXQPs
Myer – Naughty or Nice Bauble Case Study(オーストラリア / 百貨店)
https://vimeo.com/314448387
Purina – Street-Vet(フランス / ペットフード)
https://www.youtube.com/watch?v=WppJbTCu5Ac
IAG – Safety Hub(オーストラリア / 損害保険)
https://www.youtube.com/watch?v=ihcNJ8dnpq8
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