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コロナ禍で最高益のマクドナルドの必然 次にめざす“感情を動かすサービス”とは

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2021年2月18日 20時55分

tupungato/istock

サラ・カサノバCEO率いる日本マクドナルドホールディングス(HD)の2020年12月期連結決算は、全店舗売上高5892億円、営業利益312億円で9年ぶりに過去最高を更新した。同社は2018年に発表した中期経営計画も全ての項目で目標を達成。コロナ禍でも圧倒的な存在感を示した“外食の雄”は、最高の形で創業50周年イヤーを迎えることとなった。

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中期目標もすべてクリア

 コロナ禍でも好調ぶりが際立っていた2020年の同社の勢いは、2度の緊急事態宣言でも停滞することはなかった。その結果、2015年の第4四半期から継続する既存店売上の対前年同期比増を21四半期連続に伸ばし、18年に掲げた中期目標においても営業利益、全店売上高、経常利益、ROEの全ての項目をクリアした。

 新型コロナをものともせず、2020年も勢いを止めることなくばく進した同社。多くの外食チェーンが苦境に立たされる中だけに、その存在感は一層際立つが、全ての項目をクリアした中計を見返せば、結果は必然ということが分かる。

 「デジタル、デリバリー、未来型店舗体験」。同社が当時、重点施策に挙げた3つはいづれもコロナ禍で有効とされる施策に通じるもの。同社はそこに3年前から注力していたのだ。そう考えれば、2020年の業績は当然であり、むしろ施策の効果を存分に発揮できる状況が期せずして到来したともいえる。

 

コロナ禍で奏功した深化したデリバリー

 デリバリーについては、2019年6月に526店舗だった対応店舗が2020年12月には1518店舗へ拡大。UberEats(1303店舗)に続き出前館(887店舗)とも提携し、41都道府県をカバーするデリバリー体制を構築した。2021年はいよいよ全国47都道府県網羅を視野に入れる。

 未来型店舗体験は、スマホアプリ「モバイルオーダー」で注文から決済までをアプリで完結できるサービスを軸にしたもので、顧客の商品受け取りまでの時間を最小限にする。これを横展開した「パーク&ゴー」は、2020年5月に開始。ドライブスルーの進化系ともいえ、モバイルオーダーで注文済みの商品をクルーが駐車場まで運んでくれる。至れり尽くせりの同サービスは、コロナ禍のファミリー利用を促進した。

 デジタルテクノロジーをクルーの接客と融合し、おもてなしのために活用する同社のこうしたスタンスはもはや接客業の域を超え、商品へのアクセシビリティの追求といっていいほどの徹底ぶりだ。結果的にコロナという非常時でも、快適さが損なわれることなく、食の提供という側面で極めて有効に機能し、同社商品の潜在的なデリバリー需要の掘り起こしにつながった。

 ファミリー層の利用増加も最高益を下支えした。コロナにより学校の臨時休校が相次ぎ、子どものランチ需要がにわかに発生。子どもに根強い人気があり、コスパにもすぐれる上に取り寄せやすい同社商品は、ニーズにピタリとはまる。その延長で、家族での昼夜の活用が喚起され、結果的に客単価引き上げにつながった。

コロナ禍でも人材育成に積極投資

 機能面におけるサービスの質向上を果たす一方で、同社はクルー育成にも積極投資。2020年は店舗設備も含めた人材育成に58億円を計上。コロナ禍で求められるオペレーションの浸透に惜しみなく時間とコストを割いた。その結果、78億円の営業利益を生み出し、しっかりとリターンを得ている。

 新型コロナの非常事態下でも柔軟にスピーディーに施策を打ち続けた同社。サラ・カサノバHD代表取締役兼CEOは「過去50年間に築き上げてきたお客さまとの絆やブランドの価値、マクドナルドに対する社会の期待を改めて認識した年でした。これまで取り組んできた様々な施策が功を奏し、お客様の満足度の向上につながり、ビジネスとブランドにとって良い結果を残すことができました」と満足げに振り返った。

次の50年で目指すのは“感情を動かすサービス”の提供

 2021年は同社の創業50周年メモリアルイヤーとなる。さらなる飛躍が期待されるが、新たな中計の発表はコロナ禍の不透明な状況を鑑み、見送られた。その上で2021年の業績ついては、全店売上高6130億円、売上高2995億円、営業利益320億円、経常利益315億円と見通した。

 事業会社である日本マクドナルドの日色保代表取締役社長兼CEOは「お客様の声に耳を傾け、変化するニーズにしっかりと対応していくことが重要」と話し、引き続き、顧客第一の追求を軸に歩を進めていくことを誓った。

 50周年の記念イヤーとなる2021年、同社は「ビッグスマイル」をテーマに掲げる。日色社長は、そのイメージを「テイクアウトやドライブスルーがあるといった機能面の価値だけでなく、心地よい店舗体験のような情緒的価値も提供できるフィールグッドなブランドを目指したい」と表現した。

 顧客の不満足を排除し、愚直に快適さを追求し続けた同社の50年。コロナという大きな難局を乗り越え、次の50年に「情緒的価値の追求」を見据える“外食の雄”に、いまのところ死角は見当たらない。

 

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