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製造小売化で独自のポジション築きたい=マックスバリュ九州 佐々木 勉 社長

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2014年12月1日 7時0分

九州全県で食品スーパー(SM)を展開するマックスバリュ九州(福岡県)。業態を超えた厳しい競争が繰り広げられる九州マーケットにあり、積極的な出店策のほか、M&A(合併・買収)を通じ着実に店舗網を拡大している。佐々木勉社長に、今後の事業展望について聞いた。 

弱まる低価格のインパクト

──2014年5月、新社長に就任以来、約半年が経過しました。今期に入っての業績を教えてください。

マックスバリュ九州 代表取締役社長 佐々木 勉マックスバリュ九州代表取締役社長
佐々木 勉(ささき・つとむ)
1955年生まれ。79年3月ジャスコ(現イオン)入社。04年9月、イオン関東カンパニー食品商品部長、07年10月、フードサプライジャスコ(現イオンフードサプライ)社長、11年4月イオンアグリ創造取締役、14年5月から現職

佐々木 今年3月の売上高は、増税前の駆け込み需要により全店ベースで対前年同月比8.4%増と、今期は好調なスタートを切りました。増税後の4月は同0.7%減でしたが、5月以降はこれまで同2~3%増で推移しています。ただ既存店ベースでは、5月に前年実績をクリアして以降、それほど芳しいとは言えません。

 2015年2月期の第2四半期決算(連結)では、売上高723億7700万円(同5.2%増)、営業利益5億800万円(同41.1%減)と増収減益でした。

 9月も同様の結果でしたが、下期に入ってオープンした「イオンタウン黒崎」(9月11日オープン、福岡県北九州市)、「マックスバリュくりえいと宗像店」(10月2日、同宗像市)の売上高が計画値を大きく上回っていることが寄与し、業績は回復傾向にあります。

──既存店の前年割れは、何が原因だったと分析していますか。

佐々木 天候不順の影響は大きいと思います。けれども、根本にあるのは、当社の商品政策が消費者ニーズに対して十分に応えられていないことです。

 たとえば、毎週木曜日に実施している「木よう市」は当社の重要な販促策ですが、お買い得品として提供しているのはグロサリーやデイリーなどの比率が高いのが現状です。調味料など、ダウントレンドのカテゴリーも多く含まれています。したがって、日常的に当社SMを利用している方には飽きられている可能性があります。

 かつてSMは、メーカー希望小売価格を定期的に半額で販売するといった、ハイ&ローの価格政策で集客していました。しかし現在はEDLP(エブリデー・ロー・プライス)が主流で、スポット的な低価格のインパクトが弱まりつつあります。

 メーカーは新製品を投入する頻度を高め、購買を刺激しようとしていますが、残念ながら消費者の購買を促進することにはつながっていません。

──そんななかで、どのような手を打ちますか。

佐々木 商品政策や店舗政策を抜本的に見直し、改革を進めます。商品は「簡便」「即食」などをキーワードにした品揃えを充実。また消費者にとって利便性が高く、魅力的であるという視点のもとで店舗網を再構築し、競争力の強化を図る考えです。

柔軟な商品開発態勢

──商品分野の改革についてですが、戦略的に強化しようと考える部門はありますか。

佐々木 「簡便」「即食」をキーワードとする商品群の需要が拡大しているのを踏まえ、当社は、とりわけデリカ部門に力を入れています。

──デリカ部門では、すでに「おかずバイキング」の売場が強い支持を得ています。

佐々木 総菜を100g、128円(本体価格)で量り売りするサービスで、おかげさまで連日、多くの利用者があります。200種類あるレシピのなかから、売場では常時100種類のメニューを展開、週に5種類ほどを入れ替えています。今後は、この「おかずバイキング」を含め、品揃えが少ない和食や、九州の地域性が感じられるようなメニューを積極的に開発、当社の独自色を出していきます。

マックスバリュ九州拡大画像表示

──生鮮食品については、どのような考えですか。

佐々木 鮮魚部門では寿司や刺身、精肉部門では味付け加工した半調理品などの充実も図っています。

 長くSM業態は、素材を提供することで消費者ニーズに応えてきました。しかし時代は変わり、もはや素材のままでは売れない時代になっています。

 青果部門、鮮魚部門、精肉部門の産地関係者とは、素材の加工度を上げた商品の重要性を共通認識として持っており、新たな商品の形について一緒になって模索しています。

 必要となればプロセスセンター(PC)の設置も視野に、産地や取引先と連携した新たな品揃えを構築していきます。

──製造小売業への取り組みを強めるということですね。佐々木社長はかつて、イオングループで畜産、水産、デリカ商品の製造加工などを手がける、旧フードサプライジャスコ(現イオンフードサプライ〈千葉県/間處博子社長〉)の社長でした。その点、製造小売業の視点に立ち、新たな品揃えを実現するためのノウハウを持っています。

佐々木 経験を生かし、今後は仕入れの手法も見直します。たとえば、デリカで使う野菜を青果部門のバイヤーが仕入れるなど、他の部門との連携を強めることで、柔軟に新しい商品を開発できる態勢を整えます。ただ実際に何をつくるのかは未定です。今後、時間をかけ検討します。

毎年7~8店の積極出店

──店舗については、現在、主に4種類のSMフォーマットを使い分け、ドミナント化を進めています。

佐々木 主力としているのが「マックスバリュ」(売場面積2000平方メートル)、次に小型モデルの「マックスバリュエクスプレス」(同1000平方メートル)で、この2つは原則として24時間営業です。さらに低価格を武器とするDS「ザ・ビッグ」(同2000平方メートル)、小型の「ザ・ビッグエクスプレス」(同1000平方メートル)を加え、計4種類があります。「エクスプレス」は主に都市部向けで選択するなど、立地や競合状況を総合的に判断しながら店舗を配置する方針です。

──ここ数年は毎年7~8店と、出店ペースが加速しています。

佐々木 今年7月、鹿児島県霧島市に「マックスバリュエクスプレス松木店」を出したほか、前述の黒崎店、くりえいと宗像店をオープンしています。15年2月期は、それらの店を含め計6店の新店を計画しています。

──九州マーケットは、SMに加え、ディスカウントストア(DS)、食品の売上構成比が高いドラッグストア(DgS)、コンビニエンスストア(CVS)が台頭、業態を超えた競争が激化しています。これに対し、マックスバリュ九州をはじめとするイオングループは新規出店のほか、M&Aを通じ、事業規模の拡大を進めています。

佐々木 当社は13年7月、佐賀県白石町を地盤とするSMのクリエイトを買収、子会社化しました。またイオンは今年9月、九州北部を中心に店舗展開するレッドキャベツ(山口県/岩下良社長)を連結子会社化したほか、ダイエー(東京都/村井正平社長)を15年1月1日付けで完全子会社にします。

──店舗網が大きく変化する可能性があります。

佐々木 当社としてはこれまで同様、積極的な出店によって店舗網拡大を進めます。できればもっと増やしたい気持ちもあります。ただ一方では建築コストの高騰というリスク要因も大きいため、慎重に判断していきたいと思います。

都市型小型店を開発

──新しい商品、売場は、既存店へどのように波及させますか。

佐々木 改装に力を入れ、新しい店づくりを店舗網全体に広げます。年間、既存店の20%にあたる30店をリニューアルし、5年間で全店舗の手入れを完了させます。

 現在、行っている改装は、主にデリカ売場を拡大しています。好評を得ている「おかずバイキング」を設け、他店にはない店づくりで差別化を図っています。

 伸長カテゴリーである冷凍食品売場の導入も重要なポイントです。地域特性に応じ、素材やおかずなど特化するカテゴリーを判断しながら、強化しています。

 このほか施設の規模など条件を見極め、店内で購入した食品を食べられるイートインコーナーも設置します。

──そのノウハウを生かせば、新SMフォーマットも開発できそうですね。

佐々木 実は現在、検討しているところです。「おかずバイキング」などデリカ部門を中心に、飲食機能を付加した都市部向けの小型SMを構想しています。カフェを併設したり、総菜をテイクアウトできたりといった、幅広いバリエーションで新たなニーズに応えることができればと思います。

 それに伴って、今後はドミナント化の手法も見直す必要があります。消費者の視点に立ち、より利便性が高く、魅力的な店舗網の構築をめざします。

 店が集中しているエリアでは、半径2km圏に3~4店があるケースも珍しくありません。そのような場合、商圏特性を見て「マックスバリュ」から「ザ・ビッグ」に転換することを含め、思い切って店舗の配置を変更する可能性があります。

 ローコスト運営をねらった効率的な店舗配置も大きな課題です。たとえば、ひとつの店が製造拠点となり、その周辺にある店に商品を供給するといった、いわば母店を中心とする態勢も考えます。同時に、物流の見直しや、プライベートブランド(PB)「トップバリュ」の取り扱い拡大などを通じ、確実に利益を確保できる店舗網を再構築します。

16年末には200店を達成

──効率的な店舗運営も重要施策と聞いていますが、イオングループとしての取り組みはありますか。

マックスバリュ九州

佐々木 今のところ、ダイエーの店舗のうちSMは当社、GMS(総合スーパー)はイオン九州(福岡県/柴田祐司社長)が運営を担当する方向で調整が進むと思われます。実現すれば、同じイオングループとして、後方の体制をどれだけ一本化するかが効率化の重要なカギになるでしょう。

 現状、2社ともに総務部門など共通の部署がありますので、それらのうち、まとめられる部分は統合するほか、自前で持つ必要のない機能はアウトソーシングすることも選択肢に入るでしょう。ムダを排除することが、DSやDgSに対抗するための原資になるはずです。

──九州のマーケットは競争が激しいうえ、人口減少が進行しています。店舗のローコスト運営は不可欠な要素です。

佐々木 とくに福岡都市圏以外の地域は、急速に人口が減少していくのは間違いなく、それに応じたビジネスを考えなければならないと感じています。

 イオングループが掲げる戦略のひとつ「大都市シフト」に基づき、都市部や駅周辺エリアを重視しながらも、新たな戦略を練っていきます。

 ひとつは、店から遠いエリア、また店を利用しづらい環境にある方に対し、商品をお届けするサービスは提供しなければならないでしょう。現在、一部の店舗で3000円以上お買い上げの方を対象に、無料配達を実施しており、今後は各地の状況に応じて拡大を検討していきます。

──経営環境は厳しさを増していますが、製造小売業への取り組みにより、ビジネスの新たな展開が期待できます。

佐々木 現在のペースで出店を続け、さらにダイエーの一部の店などが加わるとなると、16年末には店数が200店を超える可能性があります。今後、店舗数は着実に拡大しますが、業態の壁を越えた競争が激しい九州マーケットでは、ダントツでナンバーワンのシェアを獲得するのはまだ難しく、県単位では今と状況は変化しません。とはいえ、企業規模の拡大に伴ってさらなるスケールメリットが生じ、新たなチャレンジもできるようになるでしょう。

 九州マーケットにおいて、独自のポジションを築き、消費者の強い支持を獲得できるよう、スピード感のある経営を実践していく所存です。

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