売上高2000億円、営業利益率5%へ 地場SMになりきる=マルナカ平尾 健一社長
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2018年1月31日 23時14分
香川県に本部を置き、四国を中心に店舗を展開するマルナカ。近年、商勢圏では有力食品スーパー(SM)が増える一方、食品も扱うドラッグストア(DgS)をはじめとした異業態も勢力を拡大し、競争が激化している。そのなかでいかに差別化を図り、成長につなげようとしているのか。
平尾健一社長に聞いた。
地域ニーズに細かく応え客単価・買上点数のアップへ
──2016年5月に社長に就任されました。
平尾 1984年、ジャスコ(現イオン)に入社し、分社化する前のマックスバリュでは近畿四国事業部長を務めました。その後、マイカルカンテボーレ(現イオンベーカリー)社長、イオンタイランド社長などを経て、現職の直前は1年間、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスで代表取締役を務めておりました。
──競合企業としてのマルナカをどのように見ていましたか。
平尾 マックスバリュ近畿四国事業部長のときには、四国エリアを視察する機会がたびたびありました。マルナカは青果商として創業しているため、青果を中心として、生鮮食品が強いSM企業という印象を持っていました。
──あらためて競争環境についての認識を教えてください。
平尾 当社は現在、香川県のほか、徳島・愛媛・高知の四国4県、さらに兵庫県の淡路島において2018年1月現在、144店を展開しています。商勢圏においては近年、同業態のSMのほか、食品の取り扱いが大きいDgS、ディスカウントストアといった異業態も勢力を増しており、年々競争が激化しているのが現状です。
──社長就任後、どのような方針で経営にあたっていますか。
平尾 社長に就いて、まず実行したのは店舗巡回です。最初の約4カ月間ですべての店舗に足を運んで、品揃えや店づくりがどうなっているかを確認しました。全社に向けて発信したのは、「もう一度、地場のSMになりきろう」というメッセージでした。
たとえば、高知県の店に行くと、香川県の商品は並んでいるものの、高知県の商品は決して多くありませんでした。また、よく調べてみると、同じ香川県であっても高松エリアと観音寺エリアでは好まれる味が違うことがわかったため、「四国のマルナカ」ではなく、各地域に密着したマルナカをめざすことにしました。競争が激しい時代にあっては、地域ニーズにきめ細やかに応えることにより、お客さまの満足度を上げたいと考えています。まだ不十分ですが、徐々に品揃えを見直しているところです。
──来店客の反応はいかがですか。
平尾 厳しい競争環境により、業績が低迷した厳しい時期もありましたが、現在は少し持ち直しています。実際、競合店が増えているため客数を大きく増やすことは難しいのですが、地場商品の強化や個食化、少量化を徹底して買上点数を上げていこうとしています。17年2月期の売上高は対前期比0.6%増(既存店ベース)、18年2月期も前期実績をクリアできる見通しです。
地場の総菜メーカーと連携、各地域で好まれる味を実現
──具体的には、どのように各地域の味に対応しているのですか。
平尾 現在、最も強化する部門は総菜です。もともと当社は生鮮素材に強いSM企業でしたが、近年は即食需要が高まっているのを受け、総菜売場を広げ、品揃えを拡充しつつあります。そのなかで寿司めしひとつをとっても、香川県と高知県ではまったく味つけが異なります。香川県は総じて甘い一方、高知県はゆず風味の酸っぱい味が好まれます。
これに対し、各地域の総菜メーカーや食品メーカーの協力を得ながら、需要に応えようとしています。基本的に四国各県に、淡路島を合わせた5つのエリアに分けて、それぞれ異なる企業と連携し、品揃えをしています。当社子会社に、弁当や寿司、和総菜の製造を手がける味彩工房(香川県)がありますが、こちらは主に香川県の味付けに特化しています。
たとえば徳島県で販売している商品に徳島産ほうれん草の白和えがあります。これも地元のメーカーに地元食材でつくってもらっていますが、味彩工房の商品のときと比べて、1.5~2倍も売れるようになりました。総菜は売場を拡大していることもあり、既存店ベースの売上高は対前年比5%増で推移しています。
──総菜以外で強化している部門はありますか。
平尾 グロサリーです。従来、マルナカではNB(ナショナルブランド)を中心に、ベーシックな品揃えしかしていませんでした。しかし同カテゴリーにおいても、地場メーカーによる商品を徐々に広げています。菓子では米菓や豆菓子、調味料では醤油や味噌といった商品を取り入れています。こちらもお客さまから好評で、さらに品揃えを充実させていく方針です。こうした取り組みを強めることで、競争が激化するなかでもシェアを上げられると考えています。
──マルナカが得意とする生鮮食品は、どのように取り組む考えですか。
平尾 生鮮素材でも、総菜のようにすぐに食べられるように商品を工夫することで、新たなカテゴリーや商品群をつくっていきたいと考えています。たとえば17年11月にリニューアルオープンした「マルナカ柿原店」(徳島県阿波市)では、新鮮なオーガニック野菜を原材料にしたジュースやスムージーがその場で楽しめるコーナーを新たに導入しました。野菜は有機にこだわり、添加物は一切加えていないため、味はもちろん健康志向のお客さまに喜んでいただいています。
17年10年に新規出店した「マルナカ松福店」(香川県高松市)の鮮魚部門では、地場漁港で水揚げされた魚をその日に加工し、寿司のほか焼き魚、南蛮漬けなど魚総菜にして提供しています。生鮮食品については、こうした新鮮な商品の総菜化により競合店にはない独自の商品、売場を広げたいと考えています。
──現在、どのようなタイプの店舗を展開していますか。
平尾 当社には、大きく分けて3つのフォーマットがあります。まず売場面積5000~1万㎡の大型店で、「パワーシティ」という名称で展開しています。食品のほか住居関連品、衣料品の取り扱いもあり、主要都市で展開しています。2つめは同1800~3000㎡の中型店、そして3つめが同1000㎡規模の小型店です。これらを各地の商圏や競合状況などを見ながら使い分け、店舗網を拡大してきました。
──新規出店についてはどのように考えていますか。
平尾 近年はそれほど積極的には出店しておらず、17年2月期は1店、18年2月期は2店にとどまっています。今後については大型店の新規出店はせず、すでにある大型店の周囲に小型店を出し、ドミナントを深耕していきます。当面は本部のある高松市、さらに徳島市、松山市といった主要都市を優先的に進めます。現在、物件を探し始めており、2~3年後からは新規出店のペースを上げる計画です。
──既存店はどのように活性化しますか。
平尾 私が社長に就任した当時、平均店舗年齢は18年と古い店が多く、改装に力を入れているところです。大型店を含め、売上高の上位店を優先して進めており、17年2月期は6店、18年2月期は10店のリニューアルを済ませました。今後は毎年、十数店舗のペースでテコ入れをし、大小の規模はありますが、数年内にほぼ全店の活性化を図る考えです。
小型店でもレストスペース「休憩処」を設置
──改装のポイントは何ですか。
平尾 総菜やグロサリーの売場を広げ、品揃えを充実させている点です。もう一つのポイントはレストスペースで、当社は「休憩処(きゅうけいどころ)」という名称で設置しています。これからのSMは、物販だけでなく、地域のコミュニティの場の役割も果たすべきだと考えています。比較的、規模の大きい店だと100席、最近出した「マルナカ屋島店」は売場面積300坪の小型店ですが、50席を確保しました。
また、インストアベーカリーも積極的に取り入れています。これも即食の切り口で、お客さまの来店動機になればと期待しています。
──改装した店舗の売上の状況はいかがですか。
平尾 好調な店舗は改装前に比べ、2ケタ以上の水準で伸長しています。なかには15%増で推移する店舗もあり、手応えを感じています。四国において長年培ってきたマルナカブランドは健在で、新たな要素を取り入れることで、まだまだ伸びると見ています。新たな施策にも積極的にチャレンジすることにより、お客さまに喜んでもらえるような店づくりに取り組んでいく方針です。
プロセスセンター供給とインストア加工を使い分け
──小売業界では人材確保難が課題になっています。
平尾 主な商勢圏とする四国の高齢化率は高く、全国平均の10年後の水準にあると言われています。採用については当社も苦労しています。そのため今春は、高卒社員の採用を増やし対処する方針です。エリア単位で採用し、そこにある複数の店で勤務してもらうことでキャリアアップできるような仕組みを導入するなど工夫していきます。社員比率が上がることになりますが、パートタイマーの確保が難しい時代にあっては、ある程度はやむを得ないと考えています。
──人材確保が難しいなか、店舗を効率運営するような施策はありますか。
平尾 プロセスセンター(PC)を積極的に活用し、店舗での作業を軽減できるような体制を整えていきたいと考えています。19年下期には、総菜などを手掛ける子会社の味彩工房の製造施設を強化する方針です。これによりPCである程度はキット化し、店ではたれをつけて加熱するだけといった商品も増やしていきます。また鮮魚、精肉といった生鮮部門についても、既存のPCを活用した品揃えを強化していきます。
ただ、PCを活用するのは中・小型店が中心で、大型店は従来どおりインストア加工により商品を供給していきます。鮮度、味を犠牲にしてまで効率運営を優先させようとは考えていません。
──高齢化の進行により強化するサービスはありますか。
平尾 高齢者を対象に、居場所づくりとして体操をはじめとするイベントや習いごとを開催し、SMが地域のコミュニティの場となるような取り組みを模索していきたいと思っています。
──これからの経営課題をどのように考えていますか。
平尾 SMにおいて大切なのは何より人ですから、教育には力を入れていきます。その点で、イオンの持つビジネススクール等を積極的に活用していく考えです。同スクールではマネジメントについての講座が充実しており、18年2月期は100人を超える従業員が参加しています。若い従業員の学ぶ意欲が強く、頼もしく思っています。
一方、商品化についての教育は、社内独自の仕組みを強化しながら、社員のほかパートタイマーを育成していければと考えています。
──目標とする経営数値はありますか。
平尾 売上高2000億円、営業利益率5%です。既存店を活性化させる一方で、新規出店も進めることで事業を拡大し、中長期的に目標を達成できればと考えています。競争が激化するなか数値だけを目標にするのではなく、生鮮食品を得意とするマルナカの強みを生かしながらお客さまに支持される企業をめざしていきます。
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