H2Oと関西スーパーが経営統合を選んだ理由とは?巨大リージョナルSM連合誕生の背景
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2021年9月1日 3時4分
エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリング(大阪府/荒木直也社長)は8月31日、兵庫県、大阪府、奈良県で店舗展開する関西スーパーマーケット(以下、関西スーパー、兵庫県/福谷耕治社長)と経営統合すると発表した。関西スーパーは今後、株式交換、吸収分割を通じ、すでに傘下にある阪急オアシス(大阪府/永田靖人社長)、イズミヤ(大阪府/梅本友之社長)とともにH2Oの100%子会社となる。関西スーパーの営業収益は1309億円(21年3月期)、64店舗を展開する。
これにより店舗数243店、4000億円(前期決算売上高の合算)を超える、巨大SM連合が誕生する。H2Oは今年7月にも、売上高3794億円(21年2月期)を誇る万代(大阪府/阿部秀行社長)との包括業務提携を発表している。関西エリアでは、さらに競争激化が進むと見られる。
なお関西基盤のSM企業にライフコーポレーション(大阪府/岩崎高治社長)がある。21年2月期における「近畿圏」の店舗数158店、売上高3758億円。今回のH2Oによる子会社化の動きだけでライフを抜く計算になる。
子会社化発表の同日、H2Oと関西スーパーは記者会見を開いた。今回の経営統合、さらにこれからの展望について、質疑応答をまとめた。
マスメリットを生かし、コストを共有、低減する
──関西スーパーを子会社することで具体的に何が可能になるか。
H2O荒木社長 今回、資本関係を強化、関西スーパーとの経営統合を発表した。これから商品、取引先、物流、ITなど多方面で取り組みを進めていく。マスメリットを生かし、コストを共有、低減する。現状H2Oは、傘下にイズミヤ、阪急オアシス、カナートの3社を抱えるが、今回の経営統合を契機にオペレーションの標準化、共通化、また生産性向上、風土改革を進めたい。
第1ステップとして、現状の3社における改革を優先して進める。関西スーパーとの運営機能、業務統合は、その次のステップで行う見通しだ。時期は未定だが、できるだけ早く実行に移したい。
──経営統合すれば店舗数は243店と関西エリアでナンバーワンに躍り出ることになる。
H2O荒木社長 ただ店舗数だけで何かが達成されるわけではないと考えている。
傘下の阪急オアシス、イズミヤ、関西スーパーは、ある意味では競合しているように見える。しかしいずれのブランドには特徴があり、それぞれが地域に根差した店舗を展開している。その意味では、関西エリアのお客さまを、3社トータルでシェアすることになる。このなか、それぞれのブランドを生かし、お客さまの来店動機を高めていきたい。
10%程度の資本結びつきでできることは限定的‐関西スーパー
──関西スーパーの福谷社長に聞きたい。今回、経営統合にいたった最大の理由は何か。関西スーパー福谷社長 今回の経営統合の話は、昨日、今日に始まった話ではない。16年にはH2Oさまと資本業務提携を締結し様々な取り組みを進めてきた。これまで資本関係は10%程度の結びつきだったが、これではできることは限定的。関西スーパーの将来を見据え、ともに関西エリアでお客さまの支持を獲得しようと考えたのがまさに今回のタイミングだった。具体的には7月上旬から踏み込んだ協議をしてきた。
各店が地域のお客さまの支持を獲得、また従業員がクリエイティブに働ける環境を整備するという観点から、最終的にH2Oさまとの経営統合という結論を出した。
──イズミヤ、阪急オアシスの決算を見るといずれも赤字を出している。6期連続の増収、2期連続最高益を出している関西スーパーと比較すると、稼ぐ力は弱いと言える。2社の経営改善、収益力強化にあたって何が一番にポイントになりそうか。
関西スーパー福谷社長 お相手のあることなので、まずは当社の取り組み、また一般論を聞いてほしい。
売上高を構成するのは客数と客単価。同じSMでも、客数に軸足を置く企業と、客単価を重視する企業があり、それぞれ営業施策が大きく変わってくる。弊社では、この6年間、客数を増やすことに邁進してきた。やはり半径1~2㎞圏内のシェアアップ、支持率として現れるのが客数だと考えている。
もうひとつ注力してきたのは買上点数を上げる施策。来店していただいたお客さまに、できるだけ多くの商品を買ってもらうことを意識してきた。そのためには、常に品切れがなく、品質のよい商品を、ワンストップで買えるという買物環境を整えることだと思う。
2社が赤字とのことだが、企業はその時々で業績が良くなったり、悪くなったりするもの。単年度だけど見て判断できるものではない。私はイズミヤ、阪急オアシスとも、十分な潜在能力を持つ企業であると高く評価している。それぞれの特徴を生かし、SM企業同士が同質化競争に陥ることなく、努力、切磋琢磨することが大事だと思う。
「関西マーケットを制圧するには食品事業が重要」
──今回、経営統合により中間持ち株会社の下にぶら下がる形態となるが、これは他の企業グループでも見られる。ほとんど利益を出していないグループがある一方、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(旧ドンキHD)のように独自の手法で業績を高めるケースもある。あらためて、この「ぶら下がり型」で業績を伸ばせるかについて、考えを教えてほしい。
関西スーパー福谷社長 当社は経営統合により、H2Oのブランド力はじめ多くのメリットを享受でき、結果として当社の株主に対し、今まで以上の利益水準を確保できると考えている。企業規模は4000億円超となり、マスメリットが生まれるのは大きい。阪急オアシス、イズミヤ、当社の3社が共同で事業プラットフォームをつくり、コスト低減、また将来に向けての投資も可能になる。さらにシナジー効果も期待でき、こう考えると持ち株会社のもと事業展開するメリットはある。全体の利益水準が改善、工場する可能性は十分にあると考えている。
──そもそもH2Oブランドは、SM事業に生かせることができるものか。
H2O荒木社長 関西に住んでいる方ならわかると思うが、H2Oはお客さまに認知されているブランドではなく、どちらかといえばコーポレートブランド。お客さまにとっては阪急、阪神というブランドイメージが強い。
阪急オアシスは、「高質食品専門館」をコンセプトに阪急沿線を中心に店舗を展開。阪急ブランドとの“直接的”な相乗効果がある。一方、イズミヤと関西スーパーはそれぞれの屋号、エリアで特色を出しているが、当社グループのポイントプラグラム「Sポイント」を導入するほか、今後、共同でプライベートブランドを開発するなど、“間接的”な効果があると考えている。
──H2Oは、SMを百貨店事業に次ぐ、第2の柱にしようとしている。他の百貨店グループを見ても、SMに力を入れているケースは珍しい。御社が食品事業に力を入れる理由は何か。
H2O荒木社長 百貨店の同業他社を見ると不動産事業を次の柱にするグループが多い。だが同じ百貨店といっても生い立ちが異なる。同業他社のグループは、都心部に不動産を多く保有している。だが当社は電鉄系の百貨店であり、電鉄から不動産を賃借してターミナル型店舗を展開している。そのため当社グループは、不動産、もしくは金融事業よりも小売業として生き残ろうと考えた。
そもそも百貨店は、業態の特性上、お客さまの来店頻度が低い。今後、関西エリアのマーケットを制圧するためには、購買頻度の高い食料品を軸にした業態により、お客さまとの接触頻度を上げていく必要がある。そのため食品事業に力を入れている。
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