王者ZARA、セレクトショップの未来は?「生き残るアパレルと死ぬアパレル」最新分析!
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2021年9月13日 20時55分
競争環境ではなくテックが劇的な業態変化起こす
世の中は私たちが想像できないほどのスピードで変化している。
アパレル業界の10年で言うなら、「ファッション雑誌」は「ライブコマース」(ライブ配信+Eコマースの造語)へ。「リアル店舗」は「Eコマース」へ。「大御所」によるトレンド予測は「ビッグデータ解析」によるデータ分析へ。商社など中間流通は「ものづくりの会社」から「投資会社」へなどである。これは、技術、また、技術によるオペレーション効率化による業態進化であり、競争環境の変化が引き起こしているわけではないということを理解してもらいたい。
例えば、経営環境はその進化を吸収しないところまできている。モノで溢れる先進国において、アパレル産業の成長は止まった。そして、市場に隠されている「隠し在庫」、消費者同士の「二次流通」(CtoC)の流通点数は、繊研新聞社の初期的試算によれば、毎年新規に投入される新商品の投入点数(35億〜40億点数)以上、または、それ相当の点数の可能性もあるという。結果、企業のKPI(重要業績評価指標)は、売上・利益から、優良顧客数 x LTV(顧客の生涯価値)、そして、成長戦略はパイの食い合いによるM&A (企業買収)に変わってきた。
自社競争力の優位性を信じ、あくまでも物販による闘いを挑む企業から、8月27日に日経新聞で報じられた、「丸井グループによるプライベートブランド撤退」のように「脱物販」を掲げる企業、または、白旗を揚げ、立ち往生する企業にわかれている。
本稿では、①セレクトショップの未来、②3大プラットフォーマーのこれからの戦略、③リアル店舗時代の王者ZARAの次の一手、④百貨店、ショッピングセンター(SC)に出店するアパレルのこれから、という4つの気になるテーマを一気に解説することを通して、「10年後に勝ち残るアパレルの条件」を炙り出した。
セレクトショップはこう変わる
一昔、セレクトショップは、ファッショニスタの憧れだった。私自身、会社勤めをし、外出が日常だったころ毎週のようにセレクトショップに通い、服を買っていた。しかし、19年度の国税庁調査によれば、年収300万円以下の割合が日本人口の約40%となり、若者だけでなく、従来の中心購買層だった30代〜40代でも、セレクトショップが「視界」から消えてしまったようだ。
私自身の話で言えば、依然セレクトショップに強い憧れはあるものの、ユニクロ価格の慣れもあるが、あまりに高額な価格と着飾る必然性が見えないなか、店舗へ足が遠のいている。大手各社は、バイヤーが持つ審美眼を活用し超低価格ラインのプライベートブランド(PB)を開発、好感度と高いコスパを実現すべく、ディフュージョンブランド(ブランド普及のための、価格を抑えたブランド)勝負で差別性を挑む、あるいは、小規模店舗が、
3大プラットフォーマーの動き
これに対し、Amazon(アマゾン)、楽天、ZOZO、ヤフーを傘下に持つZホールディングスの3大プラットフォーマーは、それぞれ独自の道を歩むべきというのが私の提言だ。
アマゾンは米国で次々とアパレルを葬り去ったAmazon Fashion(アマゾンファッション)ストアを日本でさらに強化すると思われる。だが、成功のためには、よりいっそう深い日本市場の理解、つまり、無敵のコスパを率いるユニクロが国民服となった日本人の
また、楽天ファッションについていえば、貨幣、物流、EC(加えて事業投資)を、「D2Cパッケージ」とし、スタートアップ支援を行って市場展開を加速化するのがよいと思う。楽天ファッションのPBはイメージがしがたく、また、その方向性も見えないため、あくまでパッケージ開発と展開に注力すべきだろうし、
さらに、Zホールディングスについては、ファッショニスタのポータルともいえるZOZOTOWNが大きな鍵を握る。すでに、ファッション・
3大プラットフォーマーは、単にEC売場を貸し出すだけでは物足りない。徹底してそれぞれの違いをだし、本質的な方向性としてはビッグデータを工場に開示しながら、前回ご紹介した「デジタル・アパレルリテーラー」を育て産業の新陳代謝を促進すべきだ。
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ZARAの凋落と王者の入れ替わり
世界のアパレル王者ZARAについて言えば、2021年1月期通期の決算は、売上は前年比28%減の約2兆6300億円で、利益は70%の大幅な減益である。ZARAとユニクロの最大の違いは、経済停滞する北半球市場をメーンターゲットとしているか、
一方、欧州を拠点におくZARAは、H&Mなどと「環境との共存」の道を選び、単なる売上拡大を目指す営利企業から、「理念持つ成長」に移行すると見ている。具体的には、彼ら欧州アパレルにとって「売上ランキング」という指標は無意味化、ESG経営(環境、社会、ガバナンスの略)を主軸においた戦略に移行するだろう。したがって、結果的にユニクロ、あるいは、シーインのような、アジアの成長を自社の成長に取り入れている企業が数年後のトップ
百貨店、SCアパレルはどうなる!?
百貨店やSCを主要チャネルに置く伝統的アパレル企業は、なににもましてトップのリーダーシップと将来を見越したビジョンに命運がかかっている。これらの伝統的アパレルメーカーやリテーラーについてはネガティブなイメージを持つ人が多いかもしれないが、大手の代表的企業のトップが世代交代していることを思い出しても
そして、強い思いで構造改革を進めている。その覚悟は今までとは比較にならないほどで、聖域無き改革を断行中のようだ。一方、こうした世の中においても、低いEC化率を放置し、中には、新型コロナウイルス前の暖冬と消費増税下で「選択と集中」の下、得意な百貨店に注力するという「逆コース」を進み、今更ながら白旗を揚げている企業もいる。伝統的アパレルメーカー、および、アパレル・リテーラーのリーダーシップは、将来を見越したヴィジョンにかかっている。
10年後のアパレル勝者の条件
幾度か私は、過去論考の中で最新アパレル企業の流通構造やビジネスモデルをご紹介してきたが、共通して言えることは、もはや、日本市場には「青い鳥」は探してもいないということだ。考えてもらいたい。産業全体が縮小する中、
「青い鳥」は、「探す」時代から、主体的に「つくる」時代になっているということなのだ。アパレル企業は「オペレーション勝負」(QCD:良い品質、低いコスト、早いデリバリー)から、「戦略勝負」(どこの市場で、どんな強みをいかし、
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プロフィール
河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)
ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)
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