強力な集客力だけじゃない!GUがライブコマースと相性がよい訳
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2021年10月20日 20時55分
2020年に発生した新型コロナウイルス感染拡大によって小売を取り巻く環境は大きく変化した。店舗への足が遠のいた消費者に対し、どのように商品への関心を維持してもらうのか、購買してもらうのか…。簡単でないテーマに試行錯誤が続く。そうした中、とくにアパレル業界で活用が急拡大しているのが、ライブコマースだ。20年末からスタートし、早くも成果を上げているGU(企業名:ジーユー/柚木治社長)の取り組みを通じて、ライブコマースの可能性について考えていきたい。
日本でもようやく広がり始めたライブコマース
![ライブコマース画面](https://diamond-rm.imgix.net/wp-content/uploads/2021/09/gu_live-station_2.jpg?auto=format%2Ccompress&ixlib=php-3.3.0&s=b9acddefdb04100f7aac044078e0de1b)
あるアパレルブランドの店舗。人気インフルエンサーが出演し、スタイリストがテーマ別にコーディネイトを提案。提案コーデに身を包んでスタッフが登場すると、2人がそれぞれ解説し、時にインフルエンサー自身も提案コーデに衣替えする――。
上記はジーユーのライブコマース、『GU LIVE STATION』のワンシーンだ。画面から伝わる雰囲気は、従来からあるテレビショッピングそのもの。違いは、ネット配信であり、コメントが可能で、そのまま購買できる双方向型であることだ。
ライブコマース自体は決して新しい販売手法ではない。中国で記録的な売り上げをあげるなど、3年ほど前にはネットショッピングの次の形として注目度が高まることもあった。取り組む上での技術的な環境も、かなり以前から整っていた。
ところが日本では、導入の動きは鈍く、大きく注目されることはなかった。風向きが変わったのは、新型コロナウイルス感染拡大だ。来店が困難という小売にとってかつてない非常事態に各社が代替策を模索。そうした中で浮上した販売スタイルのひとつがライブコマースだった。
理由は大きく3つある。ひとつはライブ配信で来店と遜色ない臨場感の中で商品紹介ができること。2つ目は双方向で顧客とダイレクトに接点が持てること。3つ目は自社配信型を活用することで、思い通りのブランディングができることだ。
GUがライブコマースを始めた理由
![GUライブコマース](https://diamond-rm.imgix.net/wp-content/uploads/2021/09/gu_live-station_1.jpg?auto=format%2Ccompress&ixlib=php-3.3.0&s=ad6ba523e29780eb3c2ccfa1c9b73288)
2020年末からライブコマースを始めたジーユーは、その理由について「情報製造小売業をめざすにあたり、新たな購入チャネルとしてだけでなく、多くのお客さまに有意義な情報を届けることも目的である」と説明。単に購買チャネルを増やすだけでなく、「有意義な情報発信」もその目的としている点が、ライブコマースのポテンシャルを的確に表しているといえる。
その上でジーユーは「リアルタイムでお客さまとコミュニケーションを取るのに優れた機能であり、お客さまからの疑問・質問にその場で回答できることで、より購買意欲を促進できる。また購買だけでなく、出演者と実際に対話できることでより楽しんで服をお買い求めいただくことができ、ブランドのファン化にもつながると考えています」と補足する。
また、雑誌などとのコラボ企画も積極的に実施している。「集英社UOMOの編集長にご出演頂いた際は、着こなしポイントの伝達だけでなく、編集部の皆さんにも着て頂くことで、リアルな着用感や感想をお客さまにお届けできました」。
GUとライブコマースの相性がよい理由
テレビショッピングとECのいいとこどりをしたようなライブコマース。そこにデメリットはなさそうだが、唯一最大といえるボトルネックが集客だ。
ジーユーは集客について「会員さまへのメールマガジンやアプリプッシュ、また Instagram 等の SNS で実施告知をしています」と説明。集客の不安はなく、「有意義な情報発信」によってむしろこれから利用者をどんどん伸ばしていきそうだ。
ジーユーにとって、ライブコマースがはまる理由は他にもある。登場初期にライブコマースが停滞した背景には、利用者が若年層中心だったことが指摘されている。つまり、ライブコマースにはたどり着いたとしても、購買力がないため、「ウインドウショッピング」で終わってしまうということだ。その点でもプチプライス中心のジーユーは、そうした懸念と無縁で、ライブコマースの良さを最大限に享受できるといえる。
ジーユーの2020年8月期通期のEC売上構成比は約9%。21年8月期の上期については詳細は発表されていないが、20年末からスタートしたライブコマースも奏功して、対前年同期比で大きく伸長しているという。
GUに学ぶ!ポストコロナで求められる小売の新しい視点とは
生配信のライブコマースは、ある意味で利用者に時間的制約を与えることになるが、もちろんアーカイブで過去の配信は閲覧できる。そうなれば、ライブコマースは実質、有意義な解説付きのECとして、効率的にEC化を推進することにもなる。
この先、顧客と対面し、直接商品を買ってもらうことがなくなることはないにしても、すでにそうであるように「リアル」はもはや販売スタイルのひとつの選択肢でしかない。その意味では、これからの小売は単にいかに売るかだけでなく、一般的なECやライブコマースなども含む多様な販売スタイルから逆算した製品づくりという視点を持つことも重要になってくるのかもしれない。
同時にライブコマースとEC、店舗を一体化させる、という視点も欠かせないだろう。ライブコマースでもリアル店舗でも、欠かせないことは、商品知識をベースに「お客のファッションの悩み」を解決し、満足を提案・提供することにある。
その点でジーユー独自の取り組みといえるのが、全国店舗にいる「おしゃリスタ」というコーディネート提案スタッフだ。「おしゃリスタ」はジーユー社内で定められた基準(ファッション知識やスタイリング知識、お客さま接客など)をクリアしたスタッフのみに許される称号で、日々その育成のための社内研修や店舗でのトレーニングを行っている。こうした人材を増やすことこそが、リアル店舗、ライブコマース双方の販売力を高めるとともに、「この人なら悩みを解決してくれる」というチャネルに制限されない顧客との結びつきを作ることができると言えるだろう。
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