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リアル店舗で始まるテレビ番組データによる流通革命!~エム・データのDX戦略~

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2021年10月20日 23時0分

エム・データは番組データ、TV-CMデータ、商品データなどを提供する

最近、さまざまな角度から小売業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が動き始めている。その中で、テレビ番組の情報をリアルタイムで届けることで需要予測や売場づくりなどに生かす取り組みをしている企業がある。本稿ではエム・データ(東京都/関根俊哉社長)のDXの取り組みを紹介する。

小売に革命を起こす!?TVメタデータとは

 エム・データは、テレビ番組およびテレビCMの放送実績を独自にテキスト化し、そのデータの蓄積・分析・配信を手がける唯一の企業だ。

エム・データの提供しているもの
エム・データは番組データ、TV-CMデータ、商品データなどを提供する

 関東・中京・関西エリアの地上波放送局で放送された全てのテレビ番組と全国の地上波放送局およびBS7局で放送されたテレビCMを即時にテキスト化したデータベース「TVメタデータ」を構築。自社のデータセンター(茨城県水戸市)では、100名を超える専門オペレーターが24時間365日にわたってテレビ放送を常時視聴し、「いつ、どの放送局番組のどのコーナーのどんなトピックにおいて、誰が、どんなニュースや話題、どの企業・商品・サービス・店舗などをどのように採り上げ、何分何秒放送したのか」を記録する。それらのデータを放送後数分〜1時間程度で最新の放送実績を反映し、提供する仕組みとなっている。

 「TVメタデータ」は、テレビ番組の放送内容をサマリー化した「番組データ」、過去10年以上のテレビCMの放送実績をアーカイブする「TV-CMデータ」、テレビ番組で紹介された商品の情報をまとめた「商品データ」、テレビ番組で紹介された店舗・商業施設・宿泊施設・観光スポットに特化した「スポットデータ」など、データの豊富なバリエーションも特徴だ。「番組データ」や「TV-CMデータ」は、放送局、広告代理店、調査会社、コンサルティングファームらに提供され、テレビ番組の視聴分析や露出調査、CMの効果測定などに活用されている。

すでにECでは「なくてはならない情報」に

 近年は、小売業界でもECを中心に「TVメタデータ」を活用する動きがみられる。たとえば、大手ECサイトでは、テレビ番組で紹介された「商品データ」を活用し、放送後わずか数分で商品購入のフックとなる情報をサイト上に表示させたり、検索精度を高め、消費者の購買行動につなげている。

 リアル店舗の集客や販売促進に活用する事例もある。書店チェーンでは、テレビ番組で紹介された書籍情報を基に「本の売れ筋ランキング」を販売戦略の立案、店頭陳列、仕入れ、店内のデジタルサイネージでのレコメンド、POPの掲出などに活用している。

 「TVメタデータ」とデジタルメディアのデータを組み合わせて、トレンドを分析する試みも行っている。コンビニエンスストア(CVS)などでは、数千品目を対象に、テレビ露出量とインターネット検索件数、Twitterの投稿トレンドなどを用いて過去10年に渡るトレンドを分析。これによって、プロダクトライフサイクルを把握したり、トレンドやブームの予兆をいち早くとらえて商品開発やMD(商品政策)に活用できる。

TVメタデータの活用に関心を示す小売企業
TVメタデータの活用に関心を示す小売企業も増えている。販促や売場づくりに活用する事例もある

 「TVメタデータ」の活用に関心を示す小売企業も増えてきた。エム・データのセールスマネージャー西尾真樹氏は、最近、小売企業から寄せられるニーズとして「『会員サイトやメルマガにテレビ番組情報をコンテンツとして活用したい』、『テレビ番組で紹介された商品情報を店頭POPでアピールしたい』、『仕入れスピードや量を適正化し機会損失を防ぎたい』といった販売促進にまつわる要望や、『テレビ番組と連動した需要予測』へのニーズが増えている」と明かす。

リアル店舗で活用!AI企業との連携も

 エム・データでは、エンタープライズAI(人工知能)企業と提携し、「TVメタデータ」を用いた小売企業向け需要予測モデルの構築を進めている。小売企業のPOSデータと「TVメタデータ」を連携させることで、商品の需要や売上を精緻に予測するというものだ。すでに同様のコンセプトのもとで「TVメタデータ」を用いた株価予測モデルの検証として、テレビ露出量をもとに上場企業の株価変動を精度高く予測する研究を進めている。この仕組みを食品小売の需要予測やフードロスの予測などにも応用していきたい考えだ。

ほぼリアルタイムで提供されるTVメタデータ
ほぼリアルタイムで提供されるTVメタデータを効果的に活用して、将来のトレンドを先取りすることが競争優位を高めることにつながる

 さらに「TVメタデータ」を小売企業のPOSデータと連携させるためには商品マスタの整備が不可欠となる。エム・データでは人的対応と併行し、AIを活用した商品マスタの正規化や名寄せにも着手した。西尾氏は、小売企業向け需要予測モデルの構築に向けた今後の課題として「小売企業と密接に提携し、商品マスタと『TVメタデータ』との紐付けにも取り組んでいきたい」と語る。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)の本質は、データを基軸に据えて経営の意思決定を行う「データドリブン経営」へと変革させることだ。自社が保有するデータのみならず第三者のデータも効果的に活用して未来を予測し、将来のトレンドを先取りすることが、競争優位を高めることにつながる。

 テレビは、世の中の話題やトレンドを現出させ、消費者に広く伝える媒体である。「TVメタデータ」は、これをほぼリアルタイムでつぶさに記録し、粒度の細かいデータを規則的にデータベース化しているのが特徴だ。とりわけ、時世やトレンドが顕著に現れる食品小売にとって、「TVメタデータ」は世の中のトレンドにキャッチアップする手段のひとつとなりうる。西尾氏は「集客や販売促進、仕入れの調整(高速化、欠品防止)など、様々な用途で、『TVメタデータ』という“素材”をまずは使ってみて欲しい」と説いている。

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