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アジアの成長を内製化!越境ECは生存戦略である理由と2つの成功ポイントとは

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2021年11月1日 20時55分

recep-bg/istock

縮小する日本市場。ユニクロとg.u.(ジーユー)、グローバルSPAが押さえ込んでいる現状をみると、多くのアパレルは他に目を向けなければ生き残りは難しくなる。そこで今回は、中国のSheinモデルを使った、越境ECで成功するためのビジネスモデルを提案したい。 

recep-bg/istock
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ユニクロにも異変か!?アパレルの経営環境激変

縮小する日本市場では、嗜好品であるファッション商品を売ることが極めて難しくなっている。盤石のビジネスモデルに見える無敵のユニクロでさえ、いわゆる成長期と今では状況は変わってきた。ワンブランドで7000億円という売上を独占する同ブランドへの消費者ニーズの変化が起きているように見えるのだ。

ユニクロが成長してきた黎明期は、圧倒的なコスパによって市場を席巻していたが、最近はSDGsのもと「服を捨ててはならない」「余分な服は買ってはならない」という暗黙のプレシャーが消費者に襲いかかり、また、日本という国の生活者の実質賃金低下により、結果的に値ごろ感のあるベーシック衣料を長く着るという風潮からユニクロが選ばれているように思う。
また、装飾的な商品で身を飾りたいのであれば、同じグループのg.u.Sheinなど、圧倒的コスパを実現したファッション衣料を求め、ファッショニスタはゾゾに生息するD2Cブランドを選ぶなど、消費者のブランドの選び方も固定化してきたようだ。

さて、こうした経営環境下において、中間価格帯である日本のアパレル産業の成長戦略について、ある仮説を提案したい。これは再三、筆者の論考に登場した中国モンスター企業「Sheinの逆モデル」である。

日本企業再成長の鍵は越境EC

Nikada/istock
Nikada/istock

すでに成長が止まり、市場には何十億点という隠し在庫があるアパレル業界。かつ、C2C(個人間取引)市場はすでに2兆円 (内、アパレルは8000億と言われている) に迫る勢いで成長している。このアパレル市場で、従来型ビジネスモデルで競争優位を確立することは相当難易度が高。しかし、世界市場に目を向けると「日本のアパレル」に対するチャンスが見えてくる。
例えばAmazonはジェトロと組んで米国市場でジャパンファッションフェアを開催したし、中国富裕層の台頭により、日本のファッションブランドが中国で人気No.1になるなど、コロナの封じ込めに(一時的にせよ)成功した国では「日本のファッションブランド」に対する評価が高まっているからだ。

ただし、真っ先に有力な進出先と多くが見込む中国について、在中の友人やビジネスパートナーに話を聞けば事情はやや異なっているようだ。中国企業の品質は日増しに高まっており、「日本ブランドは高品質だが中国ブランドの品質は低い」というのは今は昔の話。今の若者にとって中国と日本のブランド品質差はほとんどない、というのが一般消費者の主たる声だ。
いずれにせよ日本市場で、もはや一部の隙もないユニクロ、g.u.、外資SPAと真っ向から戦っていても将来展望は見えてこないし、日本の「安心、安全」というプレゼンスが落ちる時間も刻一刻と迫っている。
そこで、「越境EC」に活路を見出すということになる。だが、話を聞いてみると多くのケースにおいて、海外への販売代理店卸へ商品を渡しているだけということが多い。

当たり前だが、ECというのは、消費者の購買履歴を動体的に把握し、消費者ごとにパーソナライズされた商品やサービスミックスを提案することで客単価(一点単価 x セット率 x 年間購買頻度)を上げてゆくのがセオリー。
だから、卸に商品を渡して、あとはどこかのECで販売しているだろうというのは、「越境EC」とは言えない。消費が飽和している時代において、まさにデータの質(購買動体データ)と量(客数)の掛け算によって得られるLTV (顧客生涯価値) が勝敗を決するのである。

 そこでヒントになるのが、中国 Sheinのモデルである。

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越境EC、勝ちパターンモデルはこれだ!

Sheinは、本社をシンガポールに置きデータ分析を行うが、それと同時にライブコマースについては、販売先の国のPR会社にローカライズさせる。その国の事情に合わせたPRを行い、出荷元=生産工場を中国広州の産業クラスターからドアトゥドアサービスで商品を世界中に配送しているのである。この「逆モデル」をやれば良いのではないか、というのが私の提案である。

 具体的には、

  1. 日本ブランドに対して憧れを抱いている、あるいは品質面でローカルブランドやグローバルSPAに満足していない国と市場を特定
  1. その国、市場で有力で影響力のあるPR会社と組み、自社ブランドをターゲット・セグメントに訴求し、その国の言語対応、ECのUI /UXの改良、可能であればヘルプデスクまで設置する
  1. 可能な限り輸出(日本から出荷する場合)、三国間物流(第三国から出荷する場合)を企業間で一社に一本化し、できれば、複数の企業間で共同配送を組み、例えば商社などを介してトータルの物量を増やし、クーリエサービスと包括契約を行って、国際物流コストをトータル売上に占める比率の10%以下に抑えるようにする

 *この場合、物流費を単品ごとに設定しないことが重要だ。あくまでも会社全体の売上高物流費をグロスで10%以内に抑えることに主眼を置く。そこから過去数年の出荷量から理論上の単品コストを算出するのだ。消費者に対しては「一回の輸送費いくら」という具合に固定費として見せるのがコツだ。中国製も日本製も購買国からしてみれば同一物流費になれば、消費者にとってシンプルになる。

 越境EC成功のカギは、タイアップする現地PR企業の腕前(ターゲットセグメントに情報を届けることができる技術力)と、工場からダイレクトに個別配送するD2C型物流モデルの構築である。
あとは、EC企業では常識となっているRFM(直近いつ購入/頻度/購入金額)、CPA(顧客獲得単価)ROAS(広告の費用対効果)などの分析・指標を活用し、徹底したCRM(顧客との長期的良好な関係を気づく手法)を駆使すれば良い。
EC企業は、日本のまだ規模は小さいが将来大化けしそうなアパレルのインキュベート装置として、越境ECパッケージをサービスとして提供してはどうか、と私は考えている。また、こうした越境EC支援パッケージは、物流、生産背景、世界に貼りめぐされたネットワークの全てが揃っている商社の新しいビジネスモデルとしても有効ではないだろうか。

今、あらゆるところでコンソーシアムが設立され、「もはや一社の力ではどうにもできないところまで追い込まれている」というアパレル企業が増えてきた。ならば、単に数を集めるだけでなく、皆でこうした戦略を描き、縮小し購買力が落ちている日本市場をミルキング事業(これ以上成長しない事業)と見立て、ブレークイーブン(損益分岐点)を下げながら、稼いだキャッシュを越境ECに投資を振り向け、アジアの成長を内製化するべきだと思う。
団体戦にも戦略が必要だというわけだ。

 

プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

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