「バロー経済圏」構築をめざす! スーパー、ドラッグ、HCを抱えるバローHDのDX戦略とは
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2021年11月30日 5時0分
バローホールディングス(岐阜県/田代正美社長:以下バローHD)は、2030年3月期までの中長期経営方針「バローグループ・ビジョン2030」において「バローグループの商品・サービス・決済で地域を便利に豊かにつなぐ『バロー経済圏』の構築と商品力で選ばれる『デスティネーション・カンパニー』の実現」を目指し、顧客接点の強化と製造小売業(SPA)としてのビジネスモデルへの進化に取り組んでいる。
コミュニケーションの加速こそがDXの本質
![バローHDのデスティネーション・カンパニー構想](https://diamond-rm.imgix.net/wp-content/uploads/2021/11/808424a92eb98dfcf26e5043a14a010f.png?auto=format%2Ccompress&ixlib=php-3.3.0&s=26fdb99003d158928bfd621c4645f61d)
バローHDはこの新たなビジョンをベースとした24年3月期までの新中期経営計画では、戦略目標「コネクト2030〜商品・顧客・社会を繋ぐ」のもと、店舗とECを通じた顧客接点の拡大・重層化と情報連携による効率的なサプライチェーンの構築をすすめている。バローHD流通技術本部長兼システム部長の小池孝幸氏は、これらの実現に向けた課題として「バローグループとお客さま、販売部門と製造部門、店舗と本部のそれぞれにおいてコミュニケーションの加速が不可欠だ」と述べ、「コミュニケーションの加速こそ、バローグループにおけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の本質」と定義づけている。
消費者と直接接点を持つ小売業は、消費者の嗜好やニーズを起点にバリューチェーンを構築する「デマンドチェーン」のハブとして、その存在価値が高まってきた。食品スーパー(SM)、ドラッグストア(DgS)、ホームセンター(HC)といった幅広い業態で小売業を展開するバローHDでは、メーカー、生産者、サプライヤーらの要となり、商品力で消費者から選ばれる「デスティネーション・カンパニー」の実現に向けた基盤づくりをすすめている。
![バローHD流通技術本部長兼システム部長の小池孝幸氏](https://diamond-rm.imgix.net/wp-content/uploads/2021/11/2aecaba3dce74fa00228e3ce8ad2ef32.jpg?auto=format%2Ccompress&ixlib=php-3.3.0&s=c9b31e8ccbd896948381d5a95125d4e6)
21年7月に新基幹システムを稼働
まず、グループ全体でネットワークを構築し、調達・製造部門から販売部門まで、サプライチェーンに関与するグループ各社が情報やデータをフラットに共有し合うための基盤として、21年7月に新基幹システムへの切り替えを完了。さらに、サプライチェーン上の情報を連携させる「データHUB(ハブ)」の設計にも着手した。21年度末までにグループ会社の戦略情報システムの一部と「データHUB」を試験的に連携させ、その効果を検証し、一連の成果をグループ内で共有する計画だ。
バローHDは、積極的な出店やM&A(合併・買収)を通じて企業規模を急成長させてきた。店舗数は21年6月末時点で1236店にまで増加しており、以前の小規模ドミナント運営だったときと比べて当然スーパーバイザー(SV)やエリアマネージャーが店舗に出向いて現場で指導や助言をする頻度も低下しつつある。そこで、店舗の現場と本部を直接つなぐコミュニケーションツールとしてスマートデバイスを店舗に導入しつつある。本部からの作業指示や情報がタイムラグなく店舗の現場へダイレクトに届けられることで、現場からのレスポンスも大幅に向上させることを狙う。他にも従来のテキストベースから動画や画像を織り交ぜた直観的なマニュアルに刷新するなど、研修やトレーニングの改善にも店舗のスマートデバイスを積極的に活用していく構想だ。
バローHDでは、自社のプリペイド式電子マネー「LuVit(ルビット)」と公式スマホアプリ「ルビットアプリ」を顧客とのポータルと位置づけ、顧客情報や購買履歴を活用したダイレクトマーケティングに取り組んでいる。「LuVit」の決済比率はSMのバローで24%を超え、「ルビットアプリ」の会員数は21年3月末時点で32万5000人にまで拡大している。
ネットスーパーでアマゾンと協業
![EC強化の図](https://diamond-rm.imgix.net/wp-content/uploads/2021/11/180a8a7bf1c4ecc5d642c819410e5a13.png?auto=format%2Ccompress&ixlib=php-3.3.0&s=c43a9b49da5e60f4eacb19f45f4e3016)
店舗を持つ強みを活かしながら、新たな生活様式や購買行動に則して顧客との接点を多様に拡大させるべく、ECも強化している。専用アプリで商品を注文して勤務先のオフィスや工場などで受け取る事業所向けネットスーパー事業「ainoma(アイノマ)」では、サービスを拡充させ、ユーザー数も順調に伸びてきた。
21年6月には、東海エリアで初めて、アマゾンジャパン(東京都/ジャスパー・チャン社長:以下、アマゾン)と提携。愛知県の一部を対象エリアとし、有料会員制プログラム「Amazonプライム」の会員向けに、生鮮食品、総菜、パンなど、バローの店舗で販売する数千品目の商品を取り扱う即時配送サービスを開始した。小池氏はアマゾンとの協業について「従来、バローが十分にアプローチできていなかった客層を新たに取り込めている。新たな知見や気づきを得る機会にもなっている」と評価している。
小売業がDXを推進するためのポイントとして、小池氏は「何のためにDXを導入するのか、どのような領域にDXを活用するのか、DXの導入にあたって目的やビジョンを明確にすることが必要だ」と強調する。
DXを推進するためには相応のIT投資も不可欠だが、「現物」と「現場」を基本とする従来の小売業では、無形資産や知的財産への投資にまだ馴染みが薄い。小池氏は、小売業でのDXの推進において「経営陣の理解やサポートがまずは重要」としたうえで、「無形資産や知的財産、人材を武器とするこれからの小売業のあり方を広く理解してもらうべく、社内での地道な啓発活動も必要だ」と述べている。
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