Amazonの陰で成長する、広告勢力としてのウォルマート

DIGIDAY[日本版] / 2017年9月4日 7時50分

ウォルマート(Walmart)は、全米に5000店舗を抱え、毎週1億4000万ほどの人が買い物をしている。だが、同社は単なる大手小売企業ではない。成長著しい広告プラットフォームを展開する企業でもあるのだ。同社によれば、このプラットフォームは、消費者のオンラインショッピング行動と同社が有する膨大な実店舗販売データを結びつけられるという大きな特長を持っている。最大のライバルであるAmazonには、このような実店舗データはない。

いまや重要なプレイヤー

ウォルマートの幹部がこの件についてコメントをすることはないだろう。だが、エージェンシーの幹部らによれば、ウォルマートは掲載申込ベースでのメディア購入とプログラマティックディスプレイの両方を手がけているようだ。これらの業務は、同社が2014年にはじめたメディアネットワークプラットフォーム「ウォルマート・エクスチェンジ(Walmart Exchange)」を介して行われる。広告のフォーマットには、バナー、検索広告、製品リスト広告、ネイティブ広告があり、広告はWalmart.comサイトの「スポンサード製品」セクションに掲載される。だが、ウォルマートの広告ビジネスは「成長の機会として正当に評価されていない」と、投資銀行のキーバンク(KeyBanc)でマネージングディレクターを務めるエドワード・イルマ氏は指摘。同氏によれば、ウォルマートは、自社商品の広告よりも、ほかのブランドのサードパーティディスプレイ広告を多く掲載している。

「Walmart.comに掲載される広告の数は明らかに増加しており、このサイトに広告を掲載することに関心を示すクライアントが増えている」と述べるのは、エージェンシーのミルム(Mirum)で最高マーケティング責任者(CMO)を務めるジョン・ベイカー氏だ。「ブランドが小売メディアに関心を持つのは、人々がどのようなときに製品を購入しようとするのかを小売業者が知っているからだ。このようなデータは非常に価値が高く、広告主がeコマースでライバルを出し抜くことを可能にする」。

エージェンシーのサピエントレイザーフィッシュ(SapientRazorfish)でコマースおよびコンテンツ担当シニアバイスプレジデントを務めるジェイソン・ゴールドバーグ氏も、この意見に同調する。そのうえで、ウォルマート全体の売上に占めるWalmart.comの割合がごくわずかだった2014年には、ウォルマート・エクスチェンジに関心を持つ広告主はほとんどいなかったと指摘した。だがいまは、ウォルマートのeコマースビジネスが成長し、デジタルの世界で重要なプレイヤーとなったことから、ブランドはWalmart.comを収益力の高い広告プラットフォームとみなすようになっている。

実店舗のデータが強み

アナリストや広告会社の幹部からみれば、ウォルマート・エクスチェンジが高い効果を上げているのはもっともなことだ。その理由は、ウォルマートがプログラマティックインフラを実店舗の販売データと組み合わせて、ブランドやメーカーのために広告ターゲティングを行っていることにある。Amazonがほかのパブリッシャーから広告インベントリー(在庫)を購入しているのと同じように、ウォルマートはウォルマート・エクスチェンジ経由で、YouTubeやCBSインタラクティブ(CBS Interactive)といったほかのデマンドサイドプラットフォーム(以下、DSP)やパブリッシャーからインベントリーを購入し、広告主に販売していると広告会社の幹部らは述べている。このような広告の掲載は、ウォルマートのファーストパーティデータの情報が活用されており、コスト効率が高いという。

「実店舗のデータがウォルマート独自の強みだ」と、調査会社フォレスター・リサーチ(Forrester Research)のシニアアナリスト、スーザン・バイデル氏は述べている。「Amazonはウォルマートの最大のライバルであり、膨大な量のデータを持っているが、実店舗のデータはない。しかし、大多数の商売は、いまも実店舗で行われている」。

ウォルマートのオンラインデータと実店舗データを使えば、広告主は特定のオーディエンスグループを除いたり含めたりしながらターゲットセグメントを設定できると、クリエイティブエージェンシーのポシブル(Possible)で新規ソリューション担当バイスプレジデントを務めるトーマス・ステルター氏は説明する。たとえば、あるシューズブランドが、25~40歳で年収5万ドル以上の女性をターゲットにしているとしよう。このブランドは、ウォルマートで過去半年間に靴を買った人を除外することで、靴を買ったばかりの人たちに広告が配信されないようにできるのだ。

ライバルたちとの比較

ステルター氏は、ウォルマート・エクスチェンジがAmazonのやり方を真似ていると考えている。Amazonは、自社の広告プラットフォーム(社内のメディア部門アマゾン・メディア・グループ[Amazon Media Group]が所有するDSP)から得たデータを利用し、さまざまなウェブサイトにターゲット広告を配信することでオンライン販売を拡大している(米DIGIDAYはこの件についてAmazonにコメントを求めており、回答があり次第この記事を更新する予定だ)。

さらにステルター氏は、巨大小売企業である両社について、ターゲティングの手法は似ているものの、特定のカテゴリで顧客の購入意思を把握する能力という点では、Amazonがウォルマートを上回っていると指摘した。たとえば、ある人がペット用のおもちゃとペットフードをAmazonで探したが、購入しなかったとしよう。それでも、Amazonはその人がペット用製品に関心を持っていることがわかる。「ウォルマートには、まだそこまでの能力はないと思う」とステルター氏は語った。

また、Amazonはオンライン検索のトラフィックをウォルマートより多く獲得している。そのため、オンラインの買い物客に自社の製品を見つけてもらいたいと考える広告主は、Amazonを使いたがるだろうとゴールドバーグ氏は言う。

実店舗のデータを利用してメディアビジネスを構築しているスーパーマーケットチェーンは、ウォルマートだけではない。全米で1816店舗を抱える量販店のターゲット(Target)は、自社でデータ管理プラットフォーム(DMP)を構築し、対象を絞ったプログラマティック広告をサプライヤーブランドが提供するためのプライベートマーケットプレイスを運営している。

「ウォルマート・エクスチェンジは、広告ビジネスに参入しているほかの大手小売業者と非常によく似ている。個人情報と購入履歴を活用して顧客を識別し、ウェブとメールでターゲティングしているわけだ」と、コンテンツマーケティングプラットフォームを手がけるインスティンクティブ(Instinctive)のCEO、マニ・ガンドハム氏は言う。「(小売業者にとっては)すでに持っているデータを使って利益を増やしつつ、料金に見合った貢献をするのが簡単なやり方だ」。

本当のライバルとは?

ゴールドバーグ氏は、メディアの分野でウォルマートとAmazonのどちらが勝利するかはそれほど重要ではないと考えている。なぜなら、本当の競争はこの2社のあいだで行われているのではなく、GoogleやFacebookといった企業と小売業者のあいだで行われているからだ。

「今後は多くのメーカーが、広告費をGoogleやFacebookからAmazonやWalmart.comに移していくと私は考えている。大手小売業者が、オンラインデータや実店舗データの取り扱いにますます習熟しているからだ」と、ゴールドバーグ氏は語った。

Yuyu Chen(原文 / 訳:ガリレオ)

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