Googleの GDPR 対策に、不満を募らせるパブリッシャー
DIGIDAY[日本版] / 2018年4月23日 11時50分
締切ほど人を動かすものはない。GDPR(General Data Protection Plan:一般データ保護規則)の施行がはじまる、2018年5月25日という日は、関連団体の規模に関わらず同規則準拠に向け、動きが活発化する大きなきっかけとなった。
Facebookのデータ運用に対する注目が集まっている一方で、GoogleのGDPRに沿った内容の広告サービスの企画・運営手法も、パブリッシャーの不満を募らせている。Googleは2018年3月下旬、アドサービスの利用に際してユーザーの合意を得るために、パブリッシャーに対しては「さらなるステップ」が必要となることを発表した。この取り組みの一環として、Googleはパブリッシャーとともにデータの「共同管理者」になることを求めてきている。
パブリッシャーのオーディエンスのデータのような貴重な資産についていえば、Googleまたはそのほかの企業と「共同管理する」という発想は、どんなパブリッシャーも即座に承諾できるようなものではない。ファーストパーティのオーディエンスデータが製品とビジネス双方のサステナビリティにとって不可欠であるということではない。Googleがこの条件を求めている理由は、GDPR法の下における「管理者」というのは、「個人情報をどのように利用するかを定める会社」であるからだ。
パブリッシャーの不満現在までのあいだに、GDPRは、ほとんどのパブリッシャーにとって、オーディエンスデータを保管する者としての地位を高めるチャンスだという認識が強まっている。が、そのような楽観的な見方は揺らぎはじめている。パブリッシャーのなかには、GDPRのそもそもの前提事項を避けていこうとする、市場で大きな力を持ったプレイヤーへの不満を漏らしているものもいる。GDPRには、デジタル広告の世界で生き残るために行われてきた悪い慣習を軌道修正する、という狙いがある。「GDPR施行の取り組みのなかで、『現状を維持する』という意図はない。我々全員が責任を持った行動を取ることが必要だ。パブリッシャーの価値をくすね取るためにそれを使うなど、決してあってはならない」と、別のパブリッシャー幹部は語る。
「これは、GDPRやプライバシー・ランゲージ・ナラティブ(privacy-language narrative)という言葉に内包される商業的な課題ではあるが、大規模なベンダーは、それをいいように捉えて盗みを働こうとしているようにも見える」とそのバブリッシャー幹部は語った。
このタイミングでGDPRが施行されたことには、何か不審な点があるのではないかと疑っているものもいる。「この一連の議論は、施行日の数週間前ではなく、2017年中に行われるのがベストだったはずだ」と、あるパブリッシャー幹部は語る。「このことで、パブリッシャーは微妙な状況に置かれることになった。自分たちの身を守り、信頼するテックパートナーとの仕事を継続していけるということを保証しようとしているようにも見える」。
「バカげている提案」ドイツにおいては、パブリッシャーはGDPRよりもむしろeプライバシー規約(ePrivacy Regulation)の施行の可能性の方が重大な懸念事項となっており、Googleの最新のアップデートは驚愕を引き起こした。「ドイツのパブリッシャーの多くは現在、Googleの動きに対して疑念を抱いている。詳細な情報がまったくないのだ」と、独立系のパブリッシャーコンサルタントであり、ドイツ最大の出版社であるグルナー・ヤール(Gruner + Jahr)の元幹部であるオリバー・ヴォン・ウォルシュ氏は語る。「また、GDPRに基づく合意に対するGoogle側の法的な解釈は、パブリッシャーと共有されていない」。
大企業にGDPRに準拠させるというのは非常に複雑かつ困難なことだ。この規定の施行に関する具体的な道筋は曖昧なままであり、ビジネス戦略を迅速に打ち立てるうえでの妨げになっている。また、この規定で何が可能となるのかという解釈もいまだに雑然としたままであり、業界によって大きく異なっている。結果として、誰もが自社の信頼性の保護や、GDPRのもとでの収益の流れを保証するために、商品のアップデート、契約条件の変更を急かされている。そしてその過程で、路上に放り出されたように感じているパブリッシャーもいる。グループ・エム(GroupM)もそのうちの1社だが、最近パブリッシャーパートナーに自身のデータ保護に関する契約を問い詰められており、その取引条件に関してパブリッシャーと協議中だ。
GDPRには、消費者に「個人情報がどのように利用されるかという面で、高い透明性と管理性を与える」という前提がある。これは理論的には、プレミアムなパブリッシャーに非常に有利な立場を与えてしまう可能性がある。「GDPRの施行によって、アドテク企業の膨大なデータコレクション規模の縮小と、いわゆる(GoogleとFacebookによる)複占が起こることが予測できる。そのため、プレミアムなパブリッシャーは、彼ら自身が有するダイレクトで信頼性の高い消費者との関係性のおかげで、ほかを寄せ付けない強い立ち位置を確保できる」と、パブリッシャーの業界団体であるデジタルコンテンツ・ネクスト(Digital Content Next)でCEOを務めるジェーソン・キント氏は語る。
「Googleやグループ・エムの、バカげていて取ってつけたような提案は、彼ら自身のビジネスモデルを守ろうとした苦しまぎれの策としか思えない」とキント氏は語る。「業界や社会で実際に何が起こっているのかに目を向けて、オーディエンスや愛すべきメディアに敬意を払うような場所に移るときがきている」。
データの管理権限Googleのスタンスに対して、法律事務所のフランクフルト・カーニット・クライン&セルツ(Frankfurt Kurnit Klein & Selz)がDCNの依頼のもと行った法的分析によると、GDPR合意への高い障壁をパブリッシャーにそっくりそのまま押しつけるというGoogleのアプローチによって、パブリッシャーは「見捨てられたも同然」の状態だという。
「Googleはときどき、管理者として機能する場合もあるというのはもちろんある。だからといって、パブリッシャーからかき集めた個人情報の使い道に関する決断を、Googleが一方的に下す権利がある、というのは言語道断だ。そのデータの管理権限は基本的にはパブリッシャーにあるべきだ。そしておそらくもっと重要なことは、パブリッシャーが消費者と直接的な関係性を持っている、ということだ」と、その分析報告には書かれている。
Googleは、ユーザーとパブリッシャーの関係性を邪魔する意図はない、と語っている。「Googleは、Googleの広告サービスを活用しているパブリッシャーや広告主に対しては、すでに既存のEU圏内の法律に従ってエンドユーザーの同意を得るように要求している」と、ヨーロッパ、中東とアジアのパートナシップ部門を率いるカルロ・ダサロ・ビオンド氏は声明で明らかにしている。「だが、GDPRの要求事項はさらに詳細に渡っている。私たちは、パブリッシャーとユーザーのあいだに立とうとは思っていない。これこそが、私たちがパートナーに対して、彼らのWebサイトでGoogleのサービスを活用するにあたっては、彼ら自身がユーザーの同意を得てほしいと考えている理由だ」。
Jessica Davies(原文 / 訳:Conyac)
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