エミー賞 候補者となった、YouTubeプロデューサーの軌跡:Netflixから学んだ Vox.com スタッフ

DIGIDAY[日本版] / 2018年8月26日 12時0分

イステル・キャズウェル氏は2014年、学校で映画制作を学び、さらに独学でアニメーション制作を学んだのち、モーショングラフィックス編集者として勤めていた広告エージェンシーを辞め、デザイナーとしてVox.comに入った。それから4年後、キャズウェル氏は、エミー賞にノミネートされた上級動画プロデューサーとして、Vox MediaのVoxエンターテイメント(Vox Entertainment)でテレビ番組を制作している。キャズウェル氏は自身のキャリアについて、「これはまったく計画になかった」と話す。

Vox Mediaにとってキャズウェル氏は、エディトリアルコンテンツだけでなく、それを制作する人々にも新しいやり方を適用しようとするメディア企業の取り組みを示す、最新事例だ。VoxエンターテイメントがNetflix(ネットフリックス)向けに制作した番組「エクスプレインド(Explained ※邦題:世界の”今”をダイジェスト)」の制作総指揮にあたったジョー・ポスナー氏を例にとってみよう。

エクスプレインドはVox.comの解説番組の拡大版だ。2014年にVox.comの最初の動画を作り、現在は動画部門を率いているポスナー氏は、Vox.comの動画に浸透している声やスタイルを形作る手助けをしてきた。テレビ事業の取り組みにデジタル動画チームが関与することで、Vox Mediaは、番組が自社の編集に関するDNAを確実に持ち続けられるようにしている。

Voxエンターテイメントのチャド・マム氏は、「これは、他のプロデューサーにはかなり難しいが我々にはできるクールなことのひとつだ。我々には素晴らしい弾み車がある」と語る。

キャズウェル氏の功績

Voxエンターテイメントがキャズウェル氏とともに制作を進めているタイトル未定のドキュメンタリーシリーズは、2年前にYouTubeを観察して、そこには音楽関連の動画エッセイがほとんどないと気づいたことから発展した。そこでキャズウェル氏は、ラップ音楽をテーマにした動画の最初のアイデアをVox.comに売り込んだ。

そうしてできた12分間の動画「ラッピング、デコンストラクテッド(Rapping, deconstructed)」は、YouTubeで600万回以上視聴され、YouTubeのポップカルチャー解説シリーズ「Vox Pop」が人気を博すきっかけを作った。シリーズには、「なぜラッパーはグレイ・プーポンを愛するのか(Why rappers love Grey Poupon)」や「テレビ番組の作り方(How a TV show gets made)」のようなエピソードがある。

キャズウェル氏はこのシリーズで、2017年のエミー賞に2つノミネートされた。これはVox.comにとってエミー賞の初ノミネートだった。さらに、音楽関係のストーリーに焦点を当てたもうひとつのYouTubeシリーズ「イヤーワーム(Earworm)」につながり、キャズウェル氏は先月、エミー賞のノミネーションをさらに2つ獲得した。

今後のテレビ番組のために、イヤーワームシリーズをテストに使って、視聴者が何に興味を持っているのかを調べ、そこでわかったことを新番組に盛り込んでいこうというのがアイデアだ。テレビ番組はキャズウェル氏が取り組んでいるYouTubeシリーズの延長線上にあるものだが、キャズウェル氏にとっては決して新しい延長線ではない。

Netflixの番組作り

Netflixは2017年に「エクスプレインド」の制作に踏み切った後で、ポスナー氏とショーランナー(現場責任者)のクレア・ゴードン氏は、キャズウェル氏とVox.comの上級動画プロデューサーであるジョス・フォング氏にアプローチして、番組のパイロットエピソードの制作を依頼した。キャズウェル氏が作ったエピソードは、韓国のポップ音楽界におけるKポップ現象を深く掘り下げた内容だった。「長年Voxで動画を制作しているので、『エクスプレインド』がどう聞こえ、どう見えるべきかを我々はきちんと判断する最高の感覚を持っている」というキャズウェル氏は、エピソードの制作・監督・ナレーションを務めた。

「エクスプレインド」のエピソードにはキャズウェル氏が「イヤーワーム」のために制作した動画といくつか共通する部分があるが、Netflixの番組作りのプロセスはYouTubeシリーズのそれとは違っていた。その結果、キャズウェル氏はテレビ用エピソードの制作方法を学び、Voxエンターテイメントで番組を作れるようになった。

たとえば、通常の「イヤーワーム」の番組制作チームは、キャズウェル氏と他の2人で構成されているが、「エクスプレインド」の制作チームには23人のスタッフがいる。これらステークホルダーの全員が「イヤーワーム」より厳格な制作スケジュールで番組制作を進めている。

YouTubeからテレビへ

YouTubeにいるキャズウェル氏のオーディエンスと違って、「エクスプレインド」は、テーマについてはよく知らないかもしれないが、より高いビジュアル品質を期待する視聴者のために作品作りをしなければならなかった。モーションピクチャーのデザイナーからYouTubeプロデューサーに移行した――そしてVox Mediaがパブリッシングからエンターテイメントへと拡大した――ように、キャズウェル氏はYouTubeからテレビへと飛躍した。

「イステル(が制作した『エクスプレインド』)のエピソードは私のお気に入りになった。その作り方の技法が、彼女が壊し、作り上げるのにひと役買ったフォーマットで、はっきりと彼女の声がわかるようになっているからだ」と、マム氏は語った。

Tim Peterson(原文 / 訳:ガリレオ)

 

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