「買い物できる屋外広告」:実店舗ブームが加速する、直販ブランドたちの狙い

DIGIDAY[日本版] / 2018年10月2日 8時50分

バッグ専門の通販ブランドであるアウェイ(Away)は、2017年6月にニューヨーク市のノーホー地区に最初の店舗をオープンした。実店舗は収益の拡大にはならないかもしれないが、ブランドの認知にはとても有効だと考えていたからだ。それが現在、店舗のある都市(ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ、オースティン、ロンドン)は、オンラインの販売が40%成長しており、店舗のない市場の成長を「著しく上回っている」という(具体的な数字は明かさなかった)。

アウェイのようにネットで成長したDTC(Direct To Consumer:直販)ブランドが、広告に依存していたデジタルストアへの集客策を多様化しようと、実店舗の展開を進めている。米DIGIDAYが実店舗を運営するDTC企業12社に話を聞いたところ、いずれも店舗のある都市は販売額が他の都市を大幅に上回っているという話だった。

実店舗で売上アップ

オークション企業のネスト・ベディング(Nest Bedding)の場合、10店舗を展開している9都市は、オンライン販売額の平均がそうでない都市を15%上回っている。革靴を販売しているイタリアのエムジェミ(M.Gemi)は、3店舗を運営するボストンとニューヨークだと、オンライン販売額が実店舗のないほかの都市より20%多い。ファッションアクセサリーのカユナ(Cuyuna)は、4店舗とポップアップ・ストアを展開する都市だと、デジタルのみの市場よりもデジタル販売額が約50%多くなる。

マットレスを販売するキャスパー(Casper)は、19店を展開している都市とターゲット(Target)の店舗に商品を出している都市は、デジタル展開のみの都市よりもeコマースの販売額が「大幅に多い」という。キャスパーは8月、年内にさらに200店をオープンさせる計画を発表した。

こうした小売業者の大半によると、オンラインの販売額がすでに多く、買い物客の関心が高いであろう市場を選んで開店するのが普通なのだから、デジタル販売額が多いのは驚きではないという。一方で、実店舗の開店後、販売額がどう変化したのかを細かく語ろうとはしなかったが、実店舗のおかげで販売額が増えていると語った。

「購入できる屋外広告」

オンラインからスタートした小売業者の場合、実店舗はもうひとつの売り場であるばかりではなく、通行人に会社を宣伝する方法にもなっている。eコマースファッション小売のエロクイ(Eloquii)で消費者インサイトのVPを務めるクリスティン・キャンパラタオ氏は、「エロクイの社内には『店舗は買い物ができる屋外広告だ』という造語がある」と語った。

小売業者によると、物理的な拠点によってオンライン購入が増えるもうひとつの理由は、オンラインで購入した商品の質に失望した経験があり、商品に触れてみたいという人がいるからだという。ネスト・ベッディングの創業者でCEOのジョー・アレクサンダー氏は、「近くに実店舗があるとことがオンライン購入に必要な信頼を顧客にもたらしている」と語った。

オンラインと店舗の両方で購入する人は長期的な買い物額が多くなるという話もある。エムジェミの共同創業者でCEOのベン・フィッシュマン氏は、デジタルだけの顧客より顧客生涯価値が50%高いと語った。また、妊婦向け小売りであるハッチ(Hatch)の創業者でCEOのアリアン・ゴールドマン氏は、オムニチャネルの買い物客は支出額がオンラインのみの場合の2倍になると語った(ハッチはニューヨーク市に店舗があり、この秋、ロサンゼルスにあと1店、開店予定)。ウォルマート傘下のボノボス(Bonobos)は、1対1でフィッティングの相談に乗る店舗を56店展開しているが、CEOの氏ミッキー・オンバラル氏によると、このサービスを利用する顧客は全般的に顧客生涯価値が高くなるという。オンバラル氏は、数字は明かさなかったが、そうした場所をもうけている都市のほうがオンライン販売額は多いと語った。

従来業者とは逆の動き

カンター・リテール(Kantar Retail)でeコマースとデジタルのVPを務めるアリス・フルニエ氏は、DTC企業はいま、実店舗の立ち上げがDTCのモデルに作用した結果、オンライン販売が増えているのだと説明した。オンラインのみの低コストDTCモデルだと成長力に限界がある。オフラインの小売業者とは逆に、実店舗をもつことが不可避になっているようだと、フルニエ氏は語る。

実店舗の展開は、DTC企業がFacebook広告を離れてマーケティングを多様化する方法でもある。DTC企業は最初のころ、Facebook広告をよりどころにしていたが、Facebook広告は次第に料金が高くなった。また、実店舗は、配送と顧客獲得の高い費用の抑制にもなる。配送費削減のため、DTC企業は実店舗で購入してもらうように、配送地域の縮小や店舗割引を推し進めている。たとえばアウェイは、配送をマンハッタンに限定している。顧客獲得の費用面では、実店舗はファーストパーティデータの獲得に役立つ。店舗が集客した顧客があらたに商品を購入したら、メールアドレスを得て、あとでリターゲティングできる。オンラインでしか買い物する気のない人々のデータとは異なる、まったく新しいデータだ。

とはいえ、実店舗は配送費が節約できるのと引き換えに、不動産やスタッフの費用がついてまわる。「実際には、財務というよりもマーケティングの実験的な手法だ。開店費用が非常に高く、都市部は特にそうなので、節約策でないことは確かだ」とフルニエ氏。ただ、最終的には費用に見合う価値はあるかもしれない。「小売業者は、最高のつながりを提供しているところが競争に勝つようになるだろう」。

DTC企業と従来型の小売企業の境界線が曖昧になり、DTC企業は依然として「消費者に直結しているか」という点が問題になっている。フルニエ氏は、いずれはすべてがコマースになると語る。「実際のところ、買い物客は区別していない。買い物客が求めているのは、オンラインかオフラインかの縦割りなしに、こちらにやってきてくれる小売業者やブランドなのだ」。

Ilyse Liffreing (原文 / 訳:ガリレオ)

 

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