ファーストパーティデータ企業がマーケティングを制する:マーチン・ソレル氏

DIGIDAY[日本版] / 2019年6月14日 11時50分

広告業界の重鎮マーチン・ソレル氏が公言するファーストパーティデータ企業探しに終わりがあるとしたら、マークル(Merkle)のデジタル、検索、CRMデータサービスに限りなく近い企業が見つかったときだろう。4月にピュブリシス(Publicis)が買収したエプシロン(Epsilon)のような企業は、ソレル氏のエージェンシーグループ、S4キャピタル(S4 Capital)の顧客が金を出すようなファーストパーティデータ資産を持っていない。

マークルはエージェンシーとして、ダイレクトメールやメールマーケティングからロイヤルティプログラム、データ戦略、モデリングまでデータサービスを拡大。2016年8月に電通が株式の過半数を取得したことで、テクノロジーインテグレーションもデータサービスに加わった。ソレル氏は、S4が所有し、クライアントに販売するデータについても、マークルと同様、伝統的なエージェンシーネットワークのようなメディア購入だけでなく、関係の育成やクリエイティブアイデアの助言、購入後の体験から得たいと考えている。

5月29日、S4の年次株主総会が開催された際、米DIGIDAYはソレル氏にインタビューを行い、ビジネスのビジョンについて詳しい話を聞いた。読みやすさを考慮し、内容には若干の編集を加えている。

――以前、S4はファーストパーティデータ企業を手に入れる必要があると聞いたが、ファーストパーティデータ企業とは?

世の中には相当な数のファーストパーティデータ企業が存在する。そして、それらの企業は通常かなり高価だ。ファーストパーティデータに関して言えば、私はエプシロンもアクシオム(Acxiom)も良い例と見なしていない。まだ買収されていないライブランプ(LiveRamp)の方が興味深い。ただし、高価だが。電通に買収されたマークルは、我々が狙っている企業の良い例だ。ファーストパーティデータを巡っては、業界内で意見が対立している。その証拠に、ピュブリシスとIPGは近年、それぞれ電通とアクシオムを買収しようと試み、一方、WPPは完全にではないものの、データ事業から撤退しようとしている。我々にとって魅力的という観点で、これらの資産に順位を付けるとしたら、1位から順にマークル、アクシオム、エプシロンだ。1位以外は、我々が関心を示すようなファーストパーティデータ資産ではない。

――もしデータが王様だとしたら、広告主はウォールドガーデンの外を見るべきか?

ウォールドガーデンの壁は高くなっている。プライバシー問題、欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)、ブランドセーフティや政治広告への懸念が原因だ。クライアントはD2C(direct-to-consumer:直販)の重要性が増していると感じ、直接の関係を構築する方法を探っている。その証拠がコカ・コーラ(Coca-Cola)とコスタ(Costa)、ネスレ(Nestle)とスターバックス(Starbucks)、ユニリーバ(Unilever)とダラー・シェーブ・クラブ(Dollar Shave Club)の契約だ。これらすべての契約がある意味、ファーストパーティデータを管理したい、少なくとも整理された形で利用したいという広告主のニーズを反映している。

――ウォールドガーデンの規制が強化されたことは、広告主に代替的なプラットフォームをもたらす助けになるか?

ウォールドガーデンの規制がさらに強化され、テンセント(Tencent)やアリババ(Alibaba)まで監視の対象になるという懸念がある。もしそうなっても、我々にとっては悪いことではない。代替的なプラットフォームの数が増え、マーケットプレイス内の摩擦が小さくなるためだ。それにもかかわらず、Google、Facebook、Amazonは2018年、2000億ドル(約21.6兆円)規模の広告市場のそれぞれ1250億ドル(約13.5兆円)、520億ドル(約5.6兆円)、120億ドル(約1.3兆円)を支配していた。これらの企業がどのように規制されるかを見守る必要があるが、我々が望んでいるのは、先に挙げたビッグ5に加え、Apple、マイクロソフト(Microsoft)、オラクル(Oracle)、アドビ(Adobe)、セールスフォース(Salesforce)、IBM、SAPと取引することだ。さらに、バイドゥ(Baidu)を加えると、エコシステムの鍵を握る企業は13社になる。

――2016年、インハウスプログラマティックのトレンドは短命に終わると予言していたが、以来、市場はどのように変化しているか?

現在、スピードが競争上の強みになっており、老舗企業を中心に、市場全体で不満が高まっている。老舗企業は素早く動くことができず、デジタル企業は急成長を遂げることができるためだ。CMO、CIO、CTO、CEO、そして調達責任者は皆、可能な限り早くデジタル企業に移行しようと努力している。ある意味、これは不公平と言える。これらの企業が長年守り抜いてきた事業も、多くの場合、利益を生み出すためだ。その結果、実験のペースがどんどん速まっている。

――コンテンツ、メディアプランニング、メディア購入、ファーストパーティデータに関するピッチを見る限り、S4はコンサルティング企業と競合するようになっているのか?

確かにコンサルティング企業と同席することがある。先週、重要な仕事を勝ち取ったときも、ある大手コンサルティング企業が売り込みを行い、一部の仕事を受注した。我々は2019年に入ってから40%超の成長を遂げているが、もしこのペースで成長し続けたら、必然的にそうした企業と対決する機会が増えるだろう。コンサルティング企業が有利なのは、企業の上層部、特に経営陣に働き掛けるときだ。

――S4は2019年中にさらに買収する可能性を否定していないが、伝統的なメディアエージェンシーにも狙いを定めているのか?

伝統的なメディアエージェンシーには調達のプレッシャーがあるため、成長の余地がない。ここは筋肉が頭脳に勝る世界だ。

Seb Joseph(原文 / 訳:ガリレオ)

 

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