2020年大統領選挙は「ミーム」戦へ:ミームはいかに、政治のメインツールとなったか?

DIGIDAY[日本版] / 2019年6月17日 11時50分

インディアナ州サウスベンド市長であるピート・ブダジェッジ氏(米大統領選民主党候補者)とオズの魔法使いのドロシー。このふたりには、あまり共通点はないように思えるかもしれない。しかし、インターネット上のジョークであるミーム愛好者、そしてブダジェッジ氏支持者たちにとっては、強いつながりが見えているようだ。「ピート・ブダジェッジのダンク・ミーム*集(Pete Buttigieg’s Dank Meme Stash)」Facebookグループに参加しているユーザーにとっては特に、だ(*ダンク・ミームとは、最近インターネットで使われるようになったネット・スラングであり、「流行り過ぎて面白さを失ったミーム」「面白さを失ったミームが一周回ってあえて面白くなったもの」「他よりも飛び抜けて変わった、ユニークなミーム」を幅広く示している)。

バイラルミームのひとつは、「このお話のエンディングは皆の知ってるとおり」と画像にキャプションが加えられている。この画像にはブダジェッジ氏がドロシー、そして西の悪い魔女としてドナルド・トランプ大統領が描かれている(ブダジェッジ氏のペットであるバディーがトト役で登場する)。

支持者が作ったミーム集を抱えている候補者は、ブダジェッジ氏だけではない。グループのクリエーターであるレイチェル(苗字は明かさないことを希望した)氏は、複数の候補者を支持するミーム用のFacebookグループを今年初頭に作った。彼女がグループを作成した候補者にはカマラ・ハリス氏、コーリー・ブッカー氏、そしてジュリアン・カストロ氏などが含まれる。27歳のレイチェル氏は、この2月以降はブダジェッジ氏のグループに専念している。

選挙におけるミームの意味

政治に関する議論では、ソーシャルメディアは非常に大きな役割を担っている。軽めのコンテンツを配布して、人々にピートがどのような人か知ってもらい、ピートのメッセージにつながってもらうひとつの方法となっている。世代を越えて、ミーム作成は文化や理解のギャップの橋渡しとなる」と、彼女は言う。

選挙キャンペーンにおいてミーム(ダンクでなくとも)は、非常に一般的に見られるツールとなった。支持者、反対者両側から使われる。情報をユーモアを交えて伝えるこの手段は、ときにキャンペーン自体で用いられることもある。もちろん、ミーム的な手法は、政治の世界では新しくない。新聞の歴史とともに、政治を描く風刺画は描かれてきた。しかし近年、ソーシャルメディアの台頭、そして2016年のアメリカ大統領選挙におけるロシアの介入を受けて、ミームはさらに大きな注目を集めつつある。政治ストラテジストたちは、2020年の選挙においてミームがさらに普及すると予想している。

政治ミームとは何か。答えは誰に尋ねるかによって変わるだろう。ピート・ブダジェッジ氏のダンク・ミーム集Facebookグループのモデレーターであるレイチェル氏に言わせると、ネットミームは典型的には画像のことだ。しかしミームはまた、トランプ支持者が被るMAGAハット(「Make America Great Again」がプリントされた帽子)のように「文化的なユニット」となることがあるという。彼女が持つブダジェッジ氏のFacebookグループの場合は、幅広い年齢層から、彼女が持つほかのグループよりも「ゆるい定義」を待っているとのことだ。「ミームよりもグラフィックスと私なら呼ぶような画像も投稿される」と、彼女は言う。

「意図を伝えるための近道」

マーケティングエージェンシーのターゲット・ビクトリー(Targeted Victory)、CEOであるザック・モファット氏は、ミームを数十年前に流行ったチェーンメールや、最近であればドナルド・トランプ大統領によるあだ名付に関連付ける。「より大きな意図を伝えるための近道だ。情報を軽い、シェアできる方法でパッケージングし直すことで、ミームは成功する」。

モファット氏は、ミット・ロムニー氏の2012年大統領選挙でデジタルディレクターを務めた。彼自身、ミームを使ったことによるバックラッシュを直接体験している。2012年のディベートにおいてロムニー氏は「ビッグバードが私は大好きだ」と発言した。ビッグバードは、セサミストリートに登場する人気キャラクターのひとつだが、これはロムニー氏が(セサミストリートを放映する)PBSへの連邦予算を廃止する、という計画を語ったなかでの発言だった。その結果、ビッグバードを守ろうとするミームがTwitter上に大量に投稿された。その後、オバマ陣営はロムニー氏のこのコメントを揶揄するテレビ広告を流した。「公式なキャンペーンはこれまで、ミームには触れたがらなかった。これはソーシャルメディア上のあらゆることに言える。対象が人間であることを尊重することと、揶揄することのバランスが重要だ。いま、大規模なシフトが起きようとしている。大きなマーケットに対するアピールがある」。

候補者が好むと好まざるとにかかわらず、ミームは作られる。それを避けるか受け入れるかはキャンペーン次第だ。マーケティングエージェンシーのSS+K、ファウンディングパートナーであるロブ・シェパードソン氏はバラク・オバマ元大統領の2008年と2012年のキャンペーンに関わった。彼は、候補者自らミームを戦略的に使うことができるという。

「政治の世界では、自分自身、自分の対抗者、そして危機に面している事態、が何であるかを定義付ける。そのレンズを通してミームを見たときに、候補者による定義付け作業の役に立つことが分かる」と、シェパードソン氏は言う。

ミームを操る候補者たち

たとえば、2016年の大統領選挙において、ヒラリー・クリントン氏のキャンペーンはミームを活用する側面を見せた。彼女のTwitter画像にミーム「ヒラリーからのテキストメッセージ」の写真を使ったのだ(この件に関する国務省の調査の後、彼女はそれを削除した)。バーニー・サンダース氏のキャンペーンもまた、彼に関するミームを認識していることをツイートで示した。「バーニーへの1票は#BirdieSandersへの1票」とツイートしたのだ。サンダースのスピーチ中に演壇に小鳥が飛んできて止まった瞬間は、瞬く間にミームを大量に生み出したが、#BirdieSandersはその瞬間を捉えたハッシュタグだ。

少なくともいまの段階では、2020年大統領選挙に関してほとんどの候補者がミームを避けている。言及された例のひとつとしては、民主党候補者のひとりであるアンドリュー・ヤン氏のニューヨーク・タイムズ(The New York Times)とのインタビューがある。極右グループによって作られた、彼を揶揄するミームを否定している。

一方で、現職の大統領はミームを受け入れている。トランプ大統領の公式Twitterやインスタグラム(Instagram)のアカウントでは頻繁にミームが登場する。人気テレビ番組「ゲーム・オブ・スローンズ(Game of Thrones)」のフォントを使ったものがその例のひとつだ。

「トランプは(ミームの)マスターだ。中身を読まずに見出しだけでシェアをすることを彼は理解している。人々が詳細は気にしていないことを理解しており、彼自身も詳細は気にしていない」と、SS+Kのグループ戦略ディレクターであるクラウディア・ククロフ氏が言う。

メディア側の受け止め方

メディアも特にミームに注目して書くこともある。前回の大統領選挙では特に一般的だった。マッシャブル(Mashable)が2012年、ビッグバードとロムニー氏のミームのリスト記事を作ったのはその一例だ。その一方で、CNNのキャンペーンエディターであるカイル・ブレイン氏のようにミームを使った報道には慎重になろうとするレポーターたちも出てきた。

「ミームの目新しさはすり減って消えてしまったと、私は思う。『これは面白い!』という大きな反応があったあとで、デジタルファーストのメディアたちがそのインターネットにおける反応を捉えようと躍起になった。そのプレッシャーはいまでも存在するものの、我々がどのように報道すべきか、特にインターネットでどのように報道すべきかという議論のなかで和らぎつつある」と、ブレイン氏は言う。

それでも、メディアがそれについて報道するかどうかにかかわらず、政治ミームはオンライン上で根強く普及している。DankMeme.comのCEOでありファウンダーであるモーゼス・アルボ氏は、バーニー・サンダース氏を指示するFacebookミームページのひとつの運営をサポートしている。彼のページは2016年2月にローンチされ、いまでは30万近くの「いいね!」を集めている。

「私は本当にバーニー・サンダースに大統領になってほしいと思っている。彼のダンク・ミーム・ネットワーク全体が彼を支持している。我々は彼を完全にサポートしており、2020年にはインターネットを最良のバーニー・サンダースミームで埋め尽くす準備ができている」と、アルボ氏は言う。

Kerry Flynn(原文 / 訳:塚本 紺)

 

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