Tumblr 買収で、 WordPress 運営会社はなにを得るのか?:ブランド取り込みのチャンス

DIGIDAY[日本版] / 2019年8月21日 16時50分

WordPress(ワードプレス)を手掛けるオートマティック(Automattic)が、人々のインターネット上でのコンテンツ公開を容易にしようとしている。Tumblr(タンブラー)を買収したことで、オートマティックが提供するデジタルサービスのユーザーはインターネット上で収益を得やすくなる見通しだ。今回の買収によって、オートマティックは顧客基盤を拡大し、収入源を多様化したいパブリッシャーに提供するサービスを充実させようとしている。

オートマティックは12日、Tumblrをベライゾン(Verizon)から300万ドル(約3.1億円)で買い取ったと発表した。Tumblrは6年前、ヤフー(Yahoo)に11億ドル(約1170億円)で買収され、ヤフーは2017年、ベライゾンに買収された。オートマティックのCEOマット・マレンウェッグ氏はTumblrに記事を投稿し、エンドユーザーが関わるウェブサイトの一部のようなフロントエンドは変更しないが、バックエンドはWordPressと統合する可能性があると述べている。もし統合が現実になれば、より多様な企業がコンテンツの配信にTumblrを利用し、潜在的なオーディエンスや顧客とつながることができる。また、オートマティックはTumblrを実験場として使い、新しい製品やサービスへの反応を見ることができる。

すでにウェブパブリッシングの世界で支配的な地位を築いている企業にとって、これらは極めて重大なチャンスだ。オートマティックの主力製品であるWordPressは、インターネット上に存在するサイトの3分の1近くに用いられている。しかし、ブランドやマーケターはデジタルパブリッシングを真剣に捉えはじめており、クリエイターはオンラインの収入源を多様化しようと試みているため、テクノロジー企業、パブリッシャー、プラットフォームのあいだで、そうした需要を満たすための競争が激化している。

多くが歓迎する買収

理論的には、Tumblrのオーディエンスと機能はオートマティックに、インターネット上のクリエイティブクラスを民主的な方法でさらに専門化する機会をもたらす。これはTumblrの原点回帰を意味し、初期の支援者の多くが歓迎している。

Tumblrの立ち上げ当初に出資したフレッド・サイバート氏は「私は今回の買収に満足している。オートマティックであればTumblrの価値を尊重すると思うし、彼らがベライゾンやヤフーでしてきたことではなく、デビッド(創業者のデビッド・カープ氏)が最初につくり上げたものと方向性が似ている」と話す。

報じられている今回の買収額を考えると、オートマティックが新しいことに挑戦するリスクはなさそうだ。ただし、Tumblrはいまも複数の難題に直面している。調査会社eマーケター(eMarketer)によれば、Tumblrは2018年、ユーザー数が初めて減少に転じた。eマーケターの予測では、ユーザー数は今後も徐々に減り続け、2022年までには、米国のアクティブユーザーが1600万人を割り込む見込みだ。1600万人は米国のソーシャルプラットフォームユーザーの約7%に相当する。

Tumblrの困難と機会

ベライゾン・メディア(Verizon Media)の傘下に入ってからTumblrは、ゴー90(Go90)の終了後にオリジナル動画配信サービスを引き継ぐなど、失敗作のごみ捨て場も同然の存在に成り下がっていた。

また、Tumblrは損失を出し続けている。マレンウェッグ氏はバージ(The Verge)の取材に対し、Tumblrは商業的に低迷していると語っている。

さらに、オートマティックはTumblrの広告事業を強化するつもりだが、長期計画が成功するかどうかは、Tumblrのユーザー層であるクリエイターにサービスやビジネス機能を販売できるかどうかに懸かっている。Tumblrに表示される広告のほとんどはプログラマティックディスプレイ広告で、Tumblrのユーザーはこのフォーマットをあまり好まない。

「WooCommerce(ウーコマース)で開発してきたeコマース機能や会員サイトをつくるための機能を導入すれば、Tumblrのコミュニティは強い関心を示すのではないか」と、マレンウェッグ氏は予想する。

クリエイターたちとの関係

しかし、逆行するのは難しいだろう。インターネットが文字と画像に支配されていた時代、Tumblrはクリエイターに好まれるプラットフォームとして台頭した。そして現在、写真や動画を直接投稿できるようになったものの、いまだに多くの人が文字と画像に支配されたプロパティだと思っている。

サイバート氏は「我々がいま暮らしている世界の課題は、Tumblrに関するものでも、オートマティックに関するものでもない」と話す。「問題は、クリエーターがいつも次なる何かに目を向けていることだ。そして、ある意味、Tumblrはクリエイターにとっての次なる何かではない」。

とはいえ、たとえ個人で活動するクリエイターが新たなプラットフォームに目を向けても、ブランドや企業の多くは、Tumblrがずっと提供してきたものはまだ利用価値があると考えている。Tumblrが提供してきたものとは、強力なパブリッシングプラットフォームとエンゲージメントの高いユーザーのポケットへの直接的なアクセスだ。ヤフーやベライゾンはこれらを売りにできなかったが、初期のTumblrでは、そうしたメッセージが顧客の心に力強く響いた。Tumblrで営業を担当していたある人物は「Facebookでできることといえば、ページ上の1つのタブという範囲内で制作することだけだったが、Tumblrは本当の意味で無限だった」と振り返る。「マーケターたちは感嘆の声を上げていた。『他のウェブサイトに何十万ドルもつぎ込む必要がない』と」。

競合はどこにあるのか

今回の買収には、パブリッシャーがコンテンツ管理システム(CMS)をライセンス供与し、売り上げを伸ばそうとしている背景がある。ワシントン・ポスト(Washington Post)のアーク(Arc)とボックス・メディア(Vox Media)のコーラス(Chorus)は人材を次々と雇い、猛烈な勢いで製品を更新している。メディア企業だけでなく、アークの場合、マーケターやブランドのあいだで、市場シェアを拡大することが狙いだ。

アレー・インタラクティブ(Alley Interactive)の最高戦略責任者ブラッドフォード・キャンポー・ローリオン氏は「(オートマティックのCEO)マットが考える会社の方向性を暗示している」と話す。「Wordpress VIPはもともと、伝統的なパブリッシャーにターゲットを絞っていた。しかし現在、彼らはマーケターに目を向けている、コンテンツマーケティングサイトだ。そして、彼らはリーチの拡大を目指している。今回の買収はごく自然な流れだと思う」。

Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)

 

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