攻めに出る、インサイダーのファーストパーティデータ戦略:新ツール「サーガ」の中身

DIGIDAY[日本版] / 2020年3月16日 16時50分

インサイダー(Insider Inc.)がファーストパーティデータを活用して広告のターゲティングとレポーティングを行う「サーガ(Sága)」というツールを開発した。同社の発表によると、文脈ターゲティングと行動ターゲティング、読者に関するより深い知見、リアルタイムのキャンペーンレポートを提供するという。その目的は、サードパーティCookieに頼らず、ファーストパーティデータをフルに活用しながら、消費者のプライバシーファーストと広告効果を両立できる、従来より洗練されたツールをマーケターに提供することだ。

サーガはインサイダーのファーストパーティデータを活用するツールだが、そのデータはユーザーの身元に関するものではなく、ビジネスインサイダー(Business Insider)をはじめとする、同社のウェブサイトで消費者が見せる振る舞いや行いに基づいている。サーガには3つの主要な機能が備わっている。第1に、モバイルとデスクトップの別を問わず、サイト上のユーザーを100%特定する機能。AppleのSafariやMozillaのFirefoxは、サードパーティCookieを厳しく規制して、クロスサイトトラッキングに歯止めをかけたが、このようなブラウザを利用するオーディエンスももちろん含まれる。第2に、マーケターが行うオーディエンスに関する追加的な情報の掘り起こしや、キャンペーンの構築を支援する。第3に、キャンペーンのパフォーマンスをリアルタイムで報告する機能。このレポート機能はモバイル環境ではとくに有用だ。結局のところ、モバイル広告のターゲティングや効果測定に関しては、サードパーティCookieでは効果的に対応できないことが分かっているからだ。

インサイダーは20社のクライアントとサーガの試験運用を行っている。そこには、同社のプレミアムクラスのサブスクリプションサービス「BIプライム(BI Prime)」への自社広告の配信も含まれている。膨大な数のログインユーザーをはじめ、インサイダーには規模がある。米調査会社のコムスコア(Comscore)によると、ビジネスインサイダーの昨年12月の月間ユニークユーザー数は全世界で1億2700万人だった。プログラマティックとデータ戦略を担当するシニアバイスプレジデントのジェイナ・メロン氏によると、「これら異なるデータセットとシステムを縫い合わせる作業は大変複雑だ」という。

「我々は決定論的なファーストパーティデータのみを収集している」と、同氏は語る。「それはターゲティングのための電子メールアドレスを教えてくれるデータでは必ずしもない。『住宅ローン計算機に入力したか、アンケート調査に回答したか』という問いに答えてくれるようなデータだ。このデータは戦略立案に活用され、戦略はオーディエンスターゲティングに活用され、さらにそこからは知見が得られる。それは終わりのないループだ。すべてのデータはコンテンツの作成に活かされる」。

コンサル能力の向上が目標

インサイダーは、1年以上にわたり、ファーストパーティデータに基づくデータ管理プラットフォーム(DMP)を提供するパーミューティブ(Permutive)と連携してきた。パーミューティブのDMPは、デスクトップ、モバイルウェブ、アプリなど、異なるデバイスにまたがるユーザーデータを統合し、重複を除いて一元化する。そして、パーミューティブのIDとインサイダーのファーストパーティデータの紐付けが、特定のユーザーがインサイダーのサイトで行ったインタラクション、たとえば読んだコンテンツ、その頻度、FacebookやGoogle検索などの流入元、使用したデバイスなどの情報に基づいて行われる。

戦略的な目標は、クライアントに対するコンサルティング能力を向上させることだとメロン氏は言い、金融関係のクライアントに関する最近の事例を挙げた。このクライアントは主にサードパーティデータを活用してニッチなオーディエンスにリーチしているのだが、インサイダーのファーストパーティデータに基づくオーディエンスセグメントを活用したところ、従来のサードパーティデータに基づくオーディエンスセグメントに比べて、クリックスルー率(CTR)が11%改善したという。結果を受けて、このクライアントは、インサイダーのファーストパーティデータの利用継続を決めた。

インサイダーは収益に関する詳細情報の開示は差し控えたが、サーガの導入で、扱う案件の規模やリピート購入が増えるため、プログラマティック広告収入の成長が見込まれるという。メロン氏によると、すでに新規の受注もある。サードパーティデータのサプライヤーを減らせば、その分コスト削減にもなるだろう。インサイダーは、キャンペーンの規模や予算にかかわらず、サーガをあらゆるクライアントに提案する考えだ。広告主からの提案依頼書(RFP)にも案件を問わず、対応するという。

バイヤーたちの需要の変化

従来、ブリーフに対するインサイダーの姿勢は、積極的に影響力を発揮しようというより、どちらかと言えば受け身だった。そう漏らすのは、パーミューティブでカスタマーサクセス部門のシニアマネジャーを務めるマイケル・オガンジョビ氏だ。「広告主の参加を促すために、彼らはオーディエンスの全体像を捉える視点を構築してきた」と、同氏は言う。

ブラウザによるサードパーティCookieの取り締まりや、プライバシー規制の強化を背景に、イミディエートメディア(Immediate Media)やワシントン・ポスト(The Washington Post)をはじめ、ファーストパーティデータのターゲティング能力を積極的に打ち出すパブリッシャーが現れている。実際、バイサイドの態度にも変化が見られ、RFPでファーストパーティデータを要望するバイヤーが増えている。パーミューティブによると、パブリッシャーたちはこの需要増を肌で感じているという。

ワシントン・ポストがファーストパーティデータを活用する自社のターゲティングプラットフォーム「ゼウスインサイト(Zeus Insights)」で行っているように、ほかのパブリッシャーにツールのライセンスを提供して、追加的な収入を求めるものがいる一方、インサイダーはサーガを市場での差別化点として使いたい考えだ。インサイダーによると、「テクノロジーとスタッフの育成への投資は甚大」という。

「重要なのは良い製品づくり」

「会社の未来像として、もっとコンサルタント的な位置づけを強めたい」と、メロン氏は語る。「これは、デモグラフィックデータと期待外れのサードパーティデータからの脱却だ。このビジョンはCookieに優先する。重要なのは、業界の動きに対応することではなく、より良い製品をつくることだ」。

サーガに関して言えば、デスクトップとモバイルを横断して、すべてのオーディエンスを明確に把握する点が、エージェンシーの関心を掻き立てているとメロン氏は語る。

「並外れたスケールで、リーチとフリクエンシーを十分に提供できるなら、そしてそれを包括的に活用できるなら、そのパブリッシャーは有利な立場に立てるだろう」。そう指摘するのは、ハバスメディアグループ(Havas Media Group)でプロダクツ&ソリューション部門を統括するダン・チャップマン氏だ。同氏は、パブリッシャーのソリューションに潜在する問題点についても警告している。プランナーがパブリッシャーごとに異なるオーディエンスターゲティングツールを使うとなれば、今後の負担は計り知れない。

収益化が厳しいオープンWeb

インサイダーは、ブラウザによるCookie規制が同社の収益に与える提供についてはコメントを控えた。パーミューティブネットワーク全体の1月の数字では、パブリッシャーのトラフィックに占めるSafariとFirefoxの比率は平均で46%だった。これは、オープンなマーケットプレイスのデータでは収益化できないトラフィックに相当する。

昨年10月の取材で、インサイダーが米DIGIDAYに語ったところによると、ファーストパーティデータとパーミューティブIDの紐付けは、同社のプログラマティックダイレクト(予約型純広告取引)、プライベートマーケットプレイス(PMP)、およびプログラマティックギャランティード(在庫予約型固定単価取引)の取引に成長をもたらした。取引件数と取引当たりの広告量はともに2桁増で、なかには3桁増のケースもあったという。

Lucinda Southern(原文 / 訳:英じゅんこ)

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