コロナショック、イベント専門エージェンシーたちの受難:「再検討をする機会だ」

DIGIDAY[日本版] / 2020年3月19日 8時50分

先週、体験型マーケティングのエージェンシーであるN/Aコレクティブ(N/A Collective)は、SXSW(サウス・バイ・サウスウェスト)において、クライアント向けにふたつの体験を提供すべく準備をしていた。しかしオースティン市で開催予定だったSXSWはキャンセルされ、N/Aコレクティブはどうすべきか見極めようとしている。

「SXSWがキャンセルされたとき、我々が痛い目に遭うのかもと、人々は考えた。だが、契約書のなかにキャンセルに関する項目があるのはこのためだ。プロジェクトを実現させられないことは辛い。(SXSWで)全額を請求することはできない。そして、ほとんどがすでに整った状態だった。キャンセルできる部分は限られている。非常にトリッキーな状況だ」と、N/Aコレクティブの最高クリエイティブ責任者であり共同ファウンダーであるアディン・ムーア氏はコメントした。

SXSWに限らず、アドバタイジングウィーク・ヨーロッパ(Advertising Week Europe)だけでなく、コーチェラ(Coachella)やステージコーチ(Stagecoach)といった音楽フェスティバルなど、数多くの業界イベントがキャンセルされるか延期になっているなか、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は体験型マーケティングエージェンシーのビジネスに大きな影響を与えている。これらのエージェンシーたちは、多くのクライアントに対して、計画していた体験型のイベントを今年の夏か秋へと延期させる緊急の変更を行うべく取り組むか、体験の一部をデジタル化する方法を探している。

アイデアをデジタル化することは簡単ではない。そしてクライアントに対してさらにコストがかかる可能性もある。時間と資金、リソースを費やしたアイデアを救う方法を見極める以上に、ビジネス上必要なインフラストラクチャーとリソースを維持管理する仕事がある。リソースには自社チームだけでなくイベントを運営するための外部のチームも含まれる。より小規模なエージェンシーにとっては、コロナウイルスによる悪影響や不確定さが今後数カ月のやりくりを非常に難しいものにする可能性が高い。そこには社員の解雇の可能性も含まれる。

「待つ状態なのが一番難しい。うまくいかなくなるまで、万事問題がないような形態で続けなくてはいけない」と、彼女のエージェンシーがまだ取り組んでいるイベントの計画についてムーア氏は語る。

各エージェンシーにおける対応

ウイルス拡散がコントロール下に抑えられるまでのあいだをマネジメントしやすくするため、エージェンシーたちはクライアントに体験のデジタル化の可能性を売り込んでいるという。

「プロダクトをいかにデジタルでローンチするかについてクライアントたちと議論している」と、スタジアムレッド(Stadiumred)のCEOでありファウンダーのクラウド・ズダナウ氏は言う。「いまは、いかにデジタル体験を自分ごと化させゲーミフィケーションするか試しているところだ。なぜなら体験型(マーケティング)の多くがその可能性を持っているからだ」。

NVEエクスペリエンス・エージェンシー(NVE Experience Agency)のプレジデントでありファウンダーのブレット・ハイマン氏が探っているのもデジタル化だ。「多くの会社がバーチャル、もしくはデジタルのイベントに向かって動いているのを確認している。それがイベントに関する隠れたオプションだ」と、ハイマン氏はeメールで回答した。「たとえば、イベントをライブストリーミングしようとしているところもあれば、参加型の要素を持ったインタラクティブなデジタルイベントをしようとするところもある。体験型だからといってライブイベントである必要はない。NVEが提供する体験型の戦略は多く存在しており、そちらに移行することはクライアントにも話している」。

「率直に話をしよう、人を集めるタイプのビジネスにいる人にとって、COVID-19は悪夢だ。これまでにない事態にクライアントが適応し、切り抜ける支援を行うことが我々の仕事だ。不確実さが多く存在するいま、我々も適応しなくてはいけない。大規模なイベントや物理的な体験への需要は減っており、それは理解できる。そのためバーチャル体験やソーシャルストーリーテリングの方向へと移行しつつある」。

モーメンタム・ワールドワイド(Momentum Worldwide)でも、体験をデジタル化する方法がブランドたちと一緒に議論されているが、ブランドたちにとってフェイス・ツー・フェイスの体験はデジタル体験で再現できるものではないと、最高マーケティング責任者でありプレジデントのケビン・マクノルティ氏は言う。「現在、キャンセルではなく、延期する方向で稼働している」と語るマクノルティ氏だが、延期もまた問題を生むと、説明を加える。「これは複数のイベントが同時多発的に発生する第4四半期に起きた出来事のはずだ。それらのイベントを動かしはじめると、スケジュールは奇妙に混乱したものとなりはじめる」。

さらに懸念される人材問題

エージェンシーにとってビジネスの中心は人材だ。エージェンシーにとって、イベントの延期は支払いの延期を意味しており、イベントを待つまでのあいだ、社員たちが何に取り組めば良いのか、見つけるのに苦労している。

「コストがかかることよりも大きな問題がある。コストはクライアントによる作業範囲記述書で対応されているのが通常だ。問題は40人編成のチームが夏に予定されるひとつのプロジェクトに取り組むことにある。延期される、もしくはキャンセルされる可能性のあるプロジェクトに人々が割り当てられている。このような環境では、これらの人々に新しい仕事を見つけることは難しい。経済的なダメージが生まれるだろう」と、オプティミスト社(Optimist Inc.)のファウンダーでありCEOのジャーゲン・ドルド氏は言う。

キャンセル、もしくは延期されたイベントがどれほどエージェンシーたちにとってのコストとなるかは不明確だ。クライアントたちの判断を見極めようと、まだ話し合いを進めている最中であるエージェンシーが多い。体験型エージェンシーたちはコロナウイルスの経済的なダメージによる解雇はまだ予期していないというものの、問題が続けば、今後その可能性が出てくることは否定しない。またフリーランサーたちを契約しているエージェンシーたちは、おそらくその契約を解除する必要が出てくるだろう。これは待機状態にあるフリーランサーたちにとってダメージとなる。

「どのようなエージェンシーでも、利益と損失におけるもっとも大きな要素は給料だ。それは停止することができない。フリーランスを多用するアプローチをとっていれば、影響は比較的小さいだろう。人材が中心となるビジネスだ。仕事がないからといって人材を解雇することは簡単ではない。しかし究極的にはビジネスだ。この危機がどれほど長いあいだ続くかによっては、社員を削る必要が出てくるだろう」と、ドルド氏は言う。

「体験について再検討する機会」

とは言ってもこれがどれだけ長く続くかはまだ明らかではなく、多くの体験型マーケティングエージェンシーのエグゼクティブたちは数カ月のあいだ、不確実な状況が続き、そして長期的にはビジネスの助けになると信じているようだ。「このことが体験型にとってダメージになるとはまったく思わない。業界にとっては一時期的な影響であり、このことは業界自体に内省を促している。大勢の人が集まることを越えて、体験型について再検討をする機会だ」と、ハイマン氏は言う。

Kristina Monllos(原文 / 訳:塚本 紺)

 

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