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「雇用の未来は、パーソナライズドアプローチにある」:米・新興エージェンシー、サマー・フライデーのM・クルツ氏

DIGIDAY[日本版] / 2021年11月6日 12時0分

新型コロナの世界的大流行がもたらした恩恵があるとするなら、それは人々の働き方の変化だ。

バーンアウトに関する懸念は、2020年12月から400万人近くが離職した事態を受け、急速に高まっている。シンクタンク、ザ・カンファレンス・ボード(The Conference Board)が先ごろ実施した調査によると、従業員は仕事の重圧をコロナ禍よりも心理的負担に感じているという。実際、広告およびマーケティングエージェンシー勢は、メンタルヘルス手当から無制限の有給休暇に至るまで、ありとあらゆる手を尽くし、従業員のストレス緩和に奔走している。

そんななか、一風変わった策を講じているところもある。新設クリエイティブエージェンシーのサマー・フライデー(Summer Friday)だ。同社のパートナーでクリエイティブ部門トップのマイケル・クルツ氏によると、オープンドアポリシーにより、バーンアウトの予防と士気高揚に努めているという。その姿勢は、クルツ氏によれば、給与の透明性、フレキシブルな勤務スタイルの奨励、そして従業員のメンタルヘルス重視を指し、メンタルヘルスについては、クライアントとの仕事よりも優先させている。

ニューヨーク市に拠点を置くサマー・フライデーは、2020年6月、その数カ月前にドラム・エージェンシー(Drum Agency)が突然廃業し、クルツ氏を含む多くが職を求めていたなかで創業した。現在の従業員数は30名弱で、顧客には米金融機関のイー・トレード(E*Trade)や、チャブ(Chubb)損害保険、Sony Music(ソニー・ミュージック)などがある。

このたび米DIGIDAYはクルツ氏に取材し、クルツ氏がサマー・フライデー社長のロブ・シモーン氏と職場文化の改善を目指して新エージェンシーを立ち上げた経緯について話をうかがった。

以下がインタビュー内容となる。なお、読みやすさを考慮し、若干の編集を加えている。

◆ ◆ ◆

――ドラム・エージェンシーでの経験と、それがサマー・フライデーの創業に繋がった経緯は?

あそこでは4〜5年ほど仕事をしたが、基本、昔ながらのエージェンシーのもろもろにすりつぶされただけだった。あそこの職場文化を目の当たりにするのは、非常に辛かった。秘密主義、官僚主義、形式ばかりのお役所仕事が根を張っていた。あれは、そういう文化との苦闘の期間であり、私はバーンアウト寸前まで行った。自ら立ち上げた会社なのに、もう辞めようとさえ思っていた。それくらい我慢ならなかったからだ。実際、私にとって、変えるべきはその文化だった。誰もが同じことを口にする――なにより一番大切なのは人だと。しかし、実際のところ、それはどういうことなのか? 口だけではなく、実行する勇気のある人はいるのか?

その[真正な]ビジョンにコミットするため、2週間ばかり、重要なクライアント数社との仕事をほぼすべて断つところまで行ったのだが、彼らとはいまもいい関係を維持している。16年にわたって付き合いのあるクライアンたちはさまざまな変化を一緒にくぐり抜けてくれたし、今回のドラムからサマー・フライデーへの移行に際しても、我々に付いてきてくれた。それはクライアントからの信頼の証にほかならない。

――従来のエージェンシーと御社との違いは?

具体例をひとつ挙げるとすれば、人事評価法の刷新だ。我々の人事評価には、従来型の要素が少ない。つまり、「君はいまの自分の位置をどう見ている? これまでの業績を示してくれ、給与についての希望は?」といった査定法だ。そうではなく、この仕事をいま現在の君にとって最適なものにするには何が必要か、君の個人的成長という観点においてどのような未来が見えるか、といった点を重視している。そしてそれに協力するために、我々は個人的成長をどう促し、そのためのツールをどう提供していくか考える。そうした類の成長こそが、職場という観点で考えた場合、ヒューマンエクイティというものに真に相当すると感じている。

――エージェンシーとして利益を上げつつ、そうした理想のシステムを維持する秘訣は?

毎年の会計帳簿も、成長率も、目標も、すべて隠すことなくチームに開示している。それは確かに怖いことではある。ただ、それでも透明性を保ち続けているのは、そうした会話を促進するためだ。だから、訊きたいことやもっと深く掘り下げたいことがある社員がいれば、ロブ(社長)と一対一で話す機会を設ける。批判や反論の場とは違う。君たちの声が社のためになる、だから我々にできると思うことを聞かせて欲しい、そういうスタンスだ。

採用の際は、文化的観点とサポート的観点から慎重に吟味する。人材を過度に利用した結果、チーム全体を失ってしまう状況は絶対に避けたい。誰かひとりでもチームメンバーが欠けるのは、社のカルチャーにとっても残りのメンバーにとっても大きな痛手だ。ただ、それが起きる恐れはあるという事実の陰に隠れるつもりはないし、その恐れがあるから、信頼できる本物の関係を目指せるのだと思う。

――その姿勢を仕事の未来像の実現にどのように反映させている?

過剰なストレスが生じている場合、そのストレスは従業員が激務を強いられている事実を知らせている。私はその都度立ち止まって考える。その人をどうしたらサポートできるのか? 君が必要だと思うなら、休もう。いったん仕事を離れよう、クライアントとの打ち合わせも、どんなに必要な予定が入っていようともいったん先に延ばし、休みを取ろうと勧める。第一に、雇用の未来はパーソナライズドアプローチにある。我々は皆それぞれに違う。誰もが同じ困難を抱えているわけではない。誰もが同じ生活状況にあるわけではないし、スタッフや従業員に対応する際は、リーダーシップという観点において、そうしたもろもろをすべて考慮する必要がある。つまり、1対1のアプローチだ。第2に、コロナ禍のおかげで、誰もがある程度の自立性を持つべき、という共通理解が生じた。いまは、それぞれが自身の人生と仕事を、いわば起業家の視点で見直している。出勤して、出退社時刻をタイムカードに打刻して終わり、という時代ではない。世界は大きく変わった。人々は自分の時間を自分で管理し、私的な諸事に、仕事のもろもろに、そして自分がしたいことに取り組んでいる。たとえば、心の健康維持に必要だと思うなら、平日の昼間にヨガのレッスンを受けたっていい。企業はそういう意味での従業員の自立性や起業家精神を育み、尊重する必要がある。さもないと、優秀な人材は維持できない。

――ほかに何か言い残したことは?

悲しいのは……ドラムでの日々が決して珍しいことではない、という事実だ。非常に恐ろしい。才能ある多くの人々が仕事という名の下に、目の前のことに大量の時間と労力を注ぎ込んでいる。それを普通だと思い込んでいるのは、悲しいことだ。

最近、あるマーケティングイベントに出席した際、我々は癌の治癒をしているわけではないのだときいた。非常に興味深い。というのも、つまりそれは、ほかの人がしているのはそれだ、ということだからだ。我々は、教育、資金調達、そしてリサーチをマーケティングしている。我々のビジネスはきわめて重要だ。

[原文:How a new agency is curbing employee burnout with leadership transparency]

KIMEKO MCCOY (翻訳:SI Japan、編集:小玉明依)

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