ストレスによる大腸の不調が学習能力を低下させることを発見
Digital PR Platform / 2024年12月4日 10時0分
研究手法・研究成果
幼少期のマウスを隔離飼育することで社会的な孤立によるストレスを負荷した結果、大腸の杯細胞数が減少し、ストレスが腸内環境に影響を与えることが確認されました。さらに、ストレスを受けたマウスの血中代謝産物を網羅的に解析したところ、シスチンの減少が認められました。このシスチンの減少により海馬のミクログリアが活性化され、認知機能障害がひき起こされることを発見しました。次に、杯細胞を増やす作用を持つレバミピドをストレスを受けたマウスに投与したところ、シスチンの減少と海馬のミクログリアの活性化が抑えられ、認知機能障害が改善されました(図1)。
[画像1]https://digitalpr.jp/simg/2299/100364/700_442_20241203174218674ec46a617af.jpg
図1:本研究で明らかにした機序の模式図
今後の展開
本研究の結果から、レバミピドがストレスによる認知機能障害の新たな治療薬となる可能性が示唆されました。レバミピドは胃粘膜保護薬として既に臨床で広く使用されており、重篤な副作用がないため、安全な薬剤として精神疾患治療への応用が期待されます。
用語解説
※1 杯(さかずき)細胞
大腸の粘液を産生する細胞。粘液は細菌の大腸への侵入を防ぎ、腸内細菌の餌にもなることから、腸内の健康維持において重要な役割を果たしている。
※2 レバミピド
粘液を産生する杯細胞を増やし、消化器官を保護する作用を持つ治療薬。胃潰瘍や胃炎の治療に広く使用されている。
※3 ミクログリア
脳内の免疫応答に関わる細胞で、過剰に活性化すると炎症性物質を放出し、神経細胞に損傷を与える。
※4 シスチン
体内で合成されるアミノ酸の一種で、解毒作用や抗酸化作用があるとされている。
[文献情報]
論文タイトル
Adolescent social isolation decreases colonic goblet cells and impairs spatial cognition through the reduction of cystine
著 者
田辺萌夏1,2、國澤和生1,3,#、齋藤いまり1、小菅愛加1、手塚裕之4、河合智貴1、今勇貴1、
吉富航洋1、鏡味明利1、長谷川眞也1、窪田悠力5、小鹿晴登1、藤井匡6,7、栃尾巧6,7、
廣岡芳樹6,7、齋藤邦明2,8、鍋島俊隆2,3,9、毛利彰宏1,3,#(#共同責任著者)
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