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ヒトiPS細胞間での染色体導入を実現~ヒトiPS細胞を用いた疾患機序解明や再生医療研究への応用を期待

Digital PR Platform / 2024年12月6日 14時5分

ヒトiPS細胞間での染色体導入を実現~ヒトiPS細胞を用いた疾患機序解明や再生医療研究への応用を期待



ポイント
・微小核形成誘導剤であるパクリタキセルおよびリバーシンを添加し、微小核を形成させたヒトiPS細胞から微小核細胞を取り出し、異なるヒトiPS細胞に融合させることで、迅速にヒト染色体の直接導入が可能であることを示しました。また、導入染色体において特筆すべき染色体欠損や再配列を生じなかったことを示しました。
・ヒトiPS細胞を染色体供与細胞として使用することで、疾患患者由来細胞株を含む多様な遺伝背景のヒトiPS細胞を染色体資源として利用可能であり、常染色体および性染色体を導入することができます。
・本技術やヒト人工染色体技術を利用したメガベース(Mb)規模のヒト染色体領域クローニング法を活用することで、自在に疾患モデルヒトiPS細胞を作製でき、染色体異数性疾患の機序解明に貢献します。
・本技術により、ヒト人工染色体を異種動物由来細胞であるA9/CHO細胞を介することなくヒトiPS細胞に導入できることが示され、これによりヒト人工染色体を利用した再生医療や遺伝子/細胞移植治療法の開発に貢献します。




 東京薬科大学・生命科学部応用生命科学科生物工学研究室・宇野愛海助教および鳥取大学・医学部・生命科学科・染色体医工学講座/染色体工学研究センターの香月康宏教授らの研究グループは、ヒト人工多能性幹細胞(hiPS細胞)から異なるhiPS細胞への微小核細胞融合法(Microcell-mediated chromosome transfer: MMCT法)注1を用いた新たな染色体導入法の開発に成功しました(図1A)。
 MMCT法を用いて、hiPS細胞に染色体異数性疾患注2の原因染色体を導入して作製した異数性疾患モデルiPS細胞は、疾患機序の解明に活用されています。従来のヒト単一染色体ライブラリーA9細胞やCHO細胞株を染色体供与細胞とする手法では、新たにヒト染色体保持ライブラリーを樹立するためには煩雑な工程が必要で、多大な労力と6か月以上の研究期間が必要でした。さらに、A9細胞やCHO細胞を経由した場合では、しばしば染色体異常が生じ、正常なヒト染色体を安定して提供することが困難でした。一方で、hiPS細胞は、様々な人種・性別・遺伝的背景のヒト体細胞から細胞株が樹立されており、継代培養時の染色体安定性が高いため、非常に魅力的な生物資源です。本研究グループは、hiPS細胞を染色体供与細胞として使用するための微小核形成誘導剤パクリタキセル(PTX)注4とリバーシン(Rev)注5を見出しています。本研究では、hiPS細胞から取得した微小核細胞を、異なるhiPS細胞と融合することで、21番染色体注6(Chr21)、X染色体注7(ChrX)、Y染色体注8(ChrY)を導入し、同一遺伝的背景をもつ代表的な染色体異数性疾患モデルhiPS細胞を樹立することに成功しました。これにより、従来は6か月以上かかっていた異数性疾患モデルの作製がわずか2か月に短縮され、MMCT法を含む研究手法が大幅に効率化されました。網羅的DNAコピー数変化解析(CGHアレイ解析)注9や染色体解析により、hiPS細胞に導入された染色体は、欠損や再配列を生じることなく、完全な状態で長期間保持されると確認されました。
 本研究により、hiPS細胞から異なるhiPS細胞へ直接染色体を導入できる新規のMMCT法が確立され、迅速な染色体異数性疾患モデルヒトiPS細胞の作出が可能となりました。さらに、本研究グループが世界に先駆けて開発した遺伝子導入プラットフォームであるヒト人工染色体(HAC)注10をhiPS細胞内で構築できれば、細胞製剤等の元となるhiPS細胞へ導入できるため、異種動物細胞を利用しない再生医療や遺伝子・細胞移植治療の開発にも役立つと期待されます。本研究成果は「Molecular Therapy-Nucleic Acids」2024年11月4日(オンライン版)に掲載されました。

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