マイクロバブルと赤外吸収分光法を用いてナノプラスチックの化学的特性を分析する新手法の提案~環境中のナノプラスチック分析に期待~
Digital PR Platform / 2025年1月15日 14時5分
研究方法とアプローチ
本研究で開発した手法では、ナノ粒子をマイクロバブルによって濃縮させ、原子間力顕微鏡(AFM)を基盤にしたAFM-IRを用いて、その局所的な特性を測定しました。本研究チームは、ナノ秒レーザーアブレーションにより、LDPEフィルムからサイズが数十nmから数百nmのナノ粒子を得ることに成功しました。得られたナノ粒子は水中で極めて微量ですが、マイクロバブルを用いて凝集させることによって回収され、セレン化亜鉛(ZnSe)基板上に配置できます。
この基板上に配置されたナノ粒子を、AFM-IRによって詳細に分析しました。AFM-IRは、ナノスケールでの局所的な化学的特性を解析できる技術であり、ナノ粒子の分子構造の情報が高精度に測定できます。本研究で提案するこれらのプロセス(図1)により、NPsの酸化反応の進行状況を追跡し、NPsと物質との相互作用を理解することが可能となります。
具体的には、ナノ粒子のサイズ分布は50 nm〜500 nmの範囲にあり、最も多くの粒子が約200 nmの大きさを持っていることが判明しました。しかし、粒子の濃度が極めて低いため、マイクロバブルを使って粒子を濃縮する必要があることを確認できました。この手法により、粒子は水中からZnSe基板上に効率よく回収、配置され、AFM-IRによって詳細な赤外吸収スペクトルが取得できました。
AFM測定において、LDPEナノ粒子が球状であるものもあり、またいくつかの粒子が凝集したり、形状が歪んだりしていることが確認されました。さらに、赤外吸収スペクトルの解析において、サイズが小さい粒子において酸化反応がより進行している傾向を確認しました。このように、ナノ粒子の化学的特性の変化について新たな知見を得ることができます。
今後の展開
本研究で確立した手法を用いることにより、環境中のNPsの化学的特性をより深く理解できるようになります。これにより、NPsに関する研究が進展することが期待されます。
語句解説
※1 マイクロバブル
1~100マイクロメートル(μm)の大きさの泡のこと。
※2 赤外吸収分光法(IR)
物質を構成する分子による赤外線の吸収現象に基づき、分子構造の情報を取得する方法。
※3 レーザーアブレーション
固体表面にレーザーを照射した際に、固体表面の構成物質が爆発的に放出される現象のこと。固体試料の分析や材料加工、医療分野等に応用されている。
※4 低密度ポリエチレン
繰り返し単位であるエチレンがランダムに分岐をもって結合した結晶性の熱可塑性樹脂。他のポリエチレンと比較して軟質であり、成型加工しやすい。透明なポリ袋や食品用フィルムなどの原料として使用されている。
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