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【名古屋大学】四面楚歌をどう切り抜ける? ~アリの巣内部で暮らすコオロギの逃避戦略~

Digital PR Platform / 2025年1月22日 14時5分


【成果の意義】
 本研究では、動物行動の定量的な分類と行動シミュレーションによって、好蟻性生物が持つユニークな逃避戦略を明らかにしました。「ドッジング」のような逃避行動は地上生活をする動物ではこれまであまり報告されておらず、今回調べたアリヅカコオロギでは、アリの巣という特殊な環境に適応するためにこのような逃避戦略を獲得したと考えられます。今後は、ゲノムや神経メカニズムに着目したより詳細な解析を行うことで、好蟻性に関与する行動形質の仕組みの理解が進むことが期待されます。
 本研究は、2022-2024年度文部科学省『学術変革領域研究(A):階層的生物ナビ学』、2023-2024年度文部科学省研究大学強化促進事業『名古屋大学高等研究院 若手新分野創成研究ユニット』の支援のもとで行われたものです。

【参考文献】
『アリの巣の生きもの図鑑』 丸山宗利・小松貴・工藤誠也・島田拓・木野村恭一 著 東海大学出版 2013年

【用語説明】
注1)好蟻性(こうぎせい)生物:
 生活史の全てあるいは一部において、アリの巣の内部で生活する生物を指す。好蟻性はさまざまな無脊椎動物の仲間で独立に進化しており、好蟻性生物はアリの巣に適応してユニークな外部形態や行動様式を持つことが多い。
注2)アリヅカコオロギ:
 バッタ目アリヅカコオロギ科アリヅカコオロギ属の昆虫を指す。好蟻性であり、翅(はね)は無く、複眼も一般的なバッタ目昆虫と比べると著しく小さい。本研究で使用したサトアリヅカコオロギは主にアリが運んできた昆虫の死骸を食べると考えられているが、アリから口移しで食べ物を分けてもらいアリと接触しても攻撃されない種も存在する。そうした種は、アリの炭化水素を盗み化学擬態することでアリからの攻撃を避けていると考えられている。
注3)逃避行動:
 動物個体が捕食者などの脅威を避けるために、その場から移動する行動を指す。どのような逃避行動を示すかは動物種ごとに異なり、その動物種の移動能力や捕食者の認知・追跡能力によって決まると考えられている。

【論文情報】
雑誌名:Communications Biology
論文タイトル:Switching escape strategies in the parasitic ant cricket Myrmecophilus tetramorii
著者: Ryoya Tanaka*, Yuki Mitaka, Daigo Takemoto, Mitsuhiko P. Sato, Azusa Kamikouchi, Yoshinori Suzuki*    (*共同責任著者を示す)    
DOI: 10.1038/s42003-024-07368-y                                       
URL:https://www.nature.com/articles/s42003-024-07368-y

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