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がん細胞が自らの異常なミトコンドリアで免疫系を乗っ取り、生き残りをはかっている

Digital PR Platform / 2025年1月23日 14時5分

【発表内容】
<現状>
免疫チェックポイント阻害薬などのがん免疫療法は、新しいがん治療の一つとして注目されています。この治療では、薬ががん細胞の周りにいる免疫細胞、特にTリンパ球と呼ばれる細胞(TIL)に働きかけ、活性化したTILががん細胞を攻撃することで効果を発揮します。非常によく効いて長期間がんが治ったように見える場合もありますが、実際には半数以上のケースで効果がないと言われています。ミトコンドリアは細胞の中でエネルギーを作る小さな器官で、独自のmtDNAを持っています。がん細胞では、このミトコンドリアに異常があり、TILでもミトコンドリアが損傷を受け、その結果、がん免疫療法が効きにくくなることが知られていましたが、その詳しい理由はわかっていませんでした。

<研究成果の内容>
研究チームは、TILのミトコンドリアの損傷原因を解明するために、mtDNAの配列を調べたところ、約40%の症例でがん細胞と同じ変異が見つかりました(図1A)。そこで、がん細胞からTILへのミトコンドリアの移動を疑い、がん細胞のミトコンドリアを赤、TILのミトコンドリアを緑に色付けして観察したところ、がん細胞からTILにミトコンドリアが移動し、入れ替わるものがあることがわかりました(図1B)。その結果、がん細胞のmtDNA変異がTILにも現れるようになりました。その原因として、活性酸素(ROS)が関与していると考え、ROSを取り除く薬を使うと、ミトコンドリアの入れ替わりが抑えられました。また、変異したTILではエネルギーを作る機能が低下し、その働きも弱くなりました。T細胞のミトコンドリアが損傷したマウスでは、がん免疫療法が効きにくくなり、特にいったん免疫チェックポイント阻害薬で治療した後に、腫瘍が再びできやすくなることが示されました(図2)。さらに、腫瘍でmtDNA変異が見つかる患者さんでは、がん免疫療法の効果が長続きせず、生存率も悪化することがわかりました(図3A)。これらの結果から、がん細胞が異常なミトコンドリアをTILに送り込み乗っ取ってしまうことでTILの働きを妨げ、免疫システムから逃れようとしていることが明らかになり、このことががん免疫療法の効果を弱める一因となっていることがわかりました(図3B)。


<社会的な意義>
本研究は、がん細胞が生き残るための新しい仕組みを解明したものです。今後、ミトコンドリアをターゲットにした新しい治療法や、がん免疫療法の効果を判断するためのマーカーとして活用できる可能性が期待されています。

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