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女性非喫煙者の食道がん発症に免疫が関与 -好酸球が多いがんは予後良好-

Digital PR Platform / 2023年12月20日 14時5分

【研究手法と成果】
今回、共同研究グループは、主に近畿大学病院にて治療をした20例の女性非喫煙者の食道扁平上皮がん(NSF-EC)腫瘍組織のDNA/RNAについて、全ゲノムシークエンス解析[2]、またはRNAシークエンス解析を行い、一般的な男性喫煙者の食道扁平上皮がん症例(S-EC)のデータ(74例)と比較しました。臨床的背景について、NSF-ECは、S-ECと比べて発症年齢は高く(NSF-EC平均年齢71歳、S-EC 63歳)、飲酒習慣は少なく(NSF-ECの飲酒習慣率18%、S-EC 95%)、がんのステージに差はないものの、予後良好の傾向がありました(図1A)。

全ゲノム解析の結果、原因変異遺伝子について、79.5%でTP53に変異が見られたのを筆頭に、CDKN2A(51.3%)、FGF3(41%)、CCND1(35.9%)、NFE2L2(15.4%)などの遺伝子に変異およびコピー数異常が観察されましたが、男女の両群に差異はありませんでした。しかし、ゲノム全体での変異パターン・シグニチャーについては、DBS[3]9が女性非喫煙者に特異的に検出されました(図1B)。DBS9の意義はまだ不明です。ただ、加齢と関連する他の変異シグニチャーと相関するため、DBS9は加齢と関連する変異シグニチャーと見られ、女性非喫煙者の食道がんの発生には加齢が強く関与していると考えられます。
次に、腫瘍組織のRNA発現データから腫瘍内の免疫細胞の活動性を調べると、女性非喫煙者の食道がん組織内には、活動性の高い免疫細胞が観察されました(図2A)。さまざまな免疫細胞が腫瘍内には存在していますが、女性非喫煙者の食道がんでは、特に好酸球が多く観察されました。この現象は、病理解析でも確認され、NSF-ECは好酸球細胞の浸潤が多く認められます(図2B)。女性で非喫煙者の食道がんまたは好酸球を多く含む食道SCCの予後は、一般的な男性喫煙者の食道SCCに比べて良好であり(図2C)、好酸球などの免疫細胞の作用が関係していると考えられます。


好酸球と腫瘍との関連や好酸球の発がん意義についての報告はほとんどなく、本研究成果は食道がんと好酸球との関連についての初めての報告です。最後に、4例の食道SCC組織(女性1例、男性3例)より免疫細胞を抽出し、約31,000個の免疫細胞の単細胞RNA解析を行い、腫瘍内の好酸球細胞の発現プロファイルを作成しました。1例の女性食道がんでは126個、3例の男性食道がんでは464個の好酸球細胞の遺伝子発現データの取得に成功し、男女間で好酸球の活動性を比較検討しました。その結果、女性食道がんの好酸球は免疫的に活性化しており、性ホルモン経路[6]の反応性が低く、PI3K(ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ)経路[7]が活性化しており、女性と男性の腫瘍内好酸球の働きや活動性が異なることを示しています(図3)。

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