【青山学院大学】量子の同期現象を利用して光強度を7桁増強することに成功 ~量子光アンプの開発に期待~
Digital PR Platform / 2024年2月15日 14時5分
図中では、レーザー光と超蛍光の位相が同期していることを示す量子ビートが明確に観測された。この結果で重要なことは、照射されているレーザー光は極めて微弱であり、超蛍光の光子雪崩を引き起こす最初の光子を原子集団に注入したに過ぎないという点である。超蛍光として放出される光エネルギーは、原子集団の内部エネルギーから提供されることに変わりはない。この結果を言い換えれば、微弱なレーザー光の光強度が超蛍光によってコヒーレントに増幅されたと捉えることもできる。そして、実験結果から実に瞬間強度にして7桁も増幅していることが判明した。(増幅の模式図:図3(b))
このような飛躍的な増強は、超蛍光の光子雪崩のメカニズムから説明することができる。実験結果から超蛍光に関与した、すなわち同期された原子の数は約10⁸個と見積もられた。すなわち、たった一個の光子が呼び水となって、約10⁸個の光子からなる光パルスが放出される。同期させることができる原子の数には上限があるものの、超蛍光が極めて強力な光アンプとして機能することが実証されたと言える。
【今後の展開】
今回の研究によって、超蛍光が光アンプとして機能することが実証された。しかし、未だ超蛍光が有する光アンプとしての広大な可能性のごく一部が解明されたに過ぎない。なぜなら、今回の研究では増幅前後の光に関して、光強度という古典量のみを測定対象としているからである。実際、得られた研究成果の大部分に関しては、古典的な同期現象と対応させて説明することができる。つまり、本来、超蛍光とは量子力学の同期現象であるが、今回の研究では、その古典的な側面を中心に明らかにしたに過ぎず、量子力学の同期現象が古典力学のそれと何が異なるのか、という本質的な問題に関しては未解明なのである。
この問いに答えるためには、増幅前後の光の量子状態を観測することが必要不可欠である。超蛍光の量子性(※3)を対象とした研究は近年急速に発展しつつある新しい研究領域であり、同大研究グループもこの研究領域への参入を予定している。例えば非古典光(※4)と呼ばれる量子性が顕著な光を入力光とし、増幅後の超蛍光の量子状態を観測する。そして、微弱な量子信号がどのようにアンプされるのかを解明することができれば、唯一無二の量子光デバイスである、いわば「量子光アンプ」の開発につながると期待される。超蛍光のアンプ特性を対象とした研究の背景には、ミクロとマクロの世界がどのようにつながっているのかという根源的な問いがある。その観点では、あるいは量子力学の未解決問題として知られたシュレディンガーの猫を研究するためのヒントが隠されている可能性がある。
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