法政大学島野教授の研究グループが国指定の天然記念物、沖縄固有のヤンバルクイナの羽から新種ダニ発見 ― 羽表面を掃除する良いダニだった
Digital PR Platform / 2024年4月24日 14時5分
◆発表内容
ウモウダニは鳥の羽に付きますが、体の皮膚を食べたり血を吸ったりすることはなく、その羽についている菌類、バクテリア、ゴミ、そして花粉などを食べて生活します。この点からウモウダニは、鳥の羽のゴミを取り除く相利共生者としてヤンバルクイナの役に立ってきたと考えられます。
ウモウダニにはさまざまな種が知られていますが、特定の鳥の種やグループにしか寄生しないものが多く含まれています。この特性のため、宿主鳥種の個体数が大幅に減ると、その鳥のウモウダニも同様に(あるいは宿主よりも高いリスクで)絶滅が危惧されます。例えば、同様に法政大学の島野智之教授と東邦大学の脇司准教授らの研究グループが研究発表を行なったトキウモウダニCompressalges nipponiae Dubinin, 1950は、トキNipponia nippon(Temminck, 1835)にしかつきません。トキと同様に1属1種で、トキとともに長い間進化を遂げてきたと考えられています。このトキウモウダニは、宿主トキの日本を含む極東個体群(日本、韓国、ロシア南東部)が絶滅したことで、同時に絶滅したと考えられています(現在日本で野生化したトキは中国の個体群由来のため、トキウモウダニはついていません)。
日本の国指定の天然記念物であるヤンバルクイナは、1981年に新種として記載された沖縄島北部の固有種で(図1)、IUCNレッドリストでは危機(Endangered(EN))、環境省レッドリストでは絶滅危惧IA類(CR)となっています。この鳥は脚が発達しており、歩いたり走ったりするのは得意ですが、羽ばたいて飛翔することができません。このため、外来種のマングースなど、人によって沖縄島に持ち込まれた捕食者に襲われたり、交通事故などの危険にさらされたりしてきました。現在、外来種の捕食者の防除、ヤンバルクイナの保護・育成などのさまざまな対策によって、ヤンバルクイナの個体数は回復してきています。
研究グループは、2008年から2020年にかけて保管されていたヤンバルクイナの冷凍標本を調べました。その結果、ヤンバルクイナの羽から変わった形のウモウダニを見つけました(図2)。研究の結果、そのダニの形態はこれまで知られていたどのウモウダニとも異なることが明らかとなったため、新種Metanalges agachi(和名:ヤンバルクイナウモウダニ)として記載されました。学名の「agachi」は、ヤンバルクイナが昔から地元で親しみを込めて呼ばれていた名前「アガチ(あわてんぼう、せっかちな人、の意)」に基づいています。
宿主であるヤンバルクイナがいなければ、ヤンバルクイナウモウダニは生きていくことができません。一般的にウモウダニのような共生生物は、その個体群を維持するためには正常に水平伝搬できる密度の宿主個体群が必要です。それが保たれなければ、宿主よりも先にウモウダニの方が絶滅してしまいます。宿主のヤンバルクイナは、環境省レッドリストに絶滅危惧IA類(CR)で掲載されており、個体群の縮小とそれに続く絶滅が心配されています。このダニもヤンバルクイナと同様に、あるいはそれ以上に、絶滅が心配される生き物といえるでしょう。
生態系そのものは、生き物の命と命が繋がっているということを示しています。不要な生物など生態系には存在しません。絶滅危惧鳥類であるヤンバルクイナが新種として記載されてから43年が経ったにもかかわらず、ヤンバルクイナと共に進化を遂げ、ヤンバルクイナの役に立ってきたウモウダニが、今ようやく見つかって新種として名前がつけられたのです。まだまだ、沖縄の自然(生態系)には見つかっていないたくさんの生き物がいる証です。このような沖縄の貴重な自然を、これからも守っていかなければならないものであることも示しています。
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