世界初、通信電波を用いた距離測定に基づく60GHz帯無線LANと5G/LTEのシームレス切り替え実験に成功 ~フォーミュラカーを用いた実証実験による、超高速移動環境における通信断回避を実証~
Digital PR Platform / 2024年4月26日 13時0分
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2.研究の成果
上記課題を解決するためにNTTは、高周波数帯無線の広帯域性に基づいて、WiGigの通信電波そのもので高精度な通信距離推定を行うことが可能である性質に着目し、端末側で推定距離に基づいて非移動体無線通信システムのエリア端に到達することを検知して、非移動体無線通信システムとの接続が切断される前に移動体無線通信に切り替えることにより、通信断を回避してシームレスに通信を移動体無線通信システムに切り替える手法(以下、シームレス切り替え技術)を考案しました。
本手法では、高周波数帯無線通信に必要となるビーム制御情報の往復転送時間の情報を取得することにより、GPSなどの他の測位システムに頼ることなく端末側において非移動体無線通信システムの基地局との通信距離を推定します。通信距離が想定された非移動体無線通信システムの通信限界距離に近づくと、端末は非移動体無線通信システムとの接続が維持されている状態でも、通信を移動体無線通信システム側に切り替えます。
これにより、非移動体無線通信システムのエリア端における伝送特性の劣化の影響を受けることがなく、シームレスに通信を移動体通信システム側に切り替えて通信を維持することが可能となるため、移動体端末において非移動体無線通信システムを活用してさらなる無線通信の大容量化が実現できます。
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3.実験の概要
本技術の実証実験を、「2024年全日本スーパーフォーミュラ選手権 鈴鹿サーキット 公式合同テスト」(2024年2月21日(水)~22日(木))において、レーシングチーム「DOCOMO TEAM DANDELION RACING」による超高速移動環境を再現するフォーミュラカーの提供とオペレーション、株式会社NTTドコモおよびドコモ・テクノロジ株式会社による超高速移動実験向けエリア構築および端末の車両搭載に関する技術協力の下、実施しました。
車載端末は図3に示すように、WiGig無線部2個を車両後部に、5G/LTEに対応したスマートフォン1台をコックピット内に、それらの機能を制御する機能制御部を車両左側のサイドポンツーン内に搭載しました。無線機能部においてスループット測定用のダミーデータを5[Mbit/s]のレートで生成するとともに、提案するシームレス切り替え技術の制御に基づいて通信システムを切り替える構成としました。
地上側は鈴鹿サーキットのメインストレート左右に、WiGig基地局を6局設置し、メインストレートにおいてはWiGigを用いて通信するとともに、コース内のそのほかの場所では5G/LTEを用いる構成としました(図4)。6局のWiGig基地局には先に述べた基地局切り替え制御技術※5を適用するとともに、端末側には2個のWiGig無線部を用いる端末主導動的サイトダイバーシティ制御技術※6を適用することで、WiGigゾーン内では通信断が発生しない構成としています。また、車両側から送信されたダミーデータはWiGigゾーン内ではWiGig基地局を経由して、またそのほかの場所では5G/LTE基地局を経由して、地上側に設置したスループット測定用サーバに届く構成とし、当該サーバで測定されたスループットを評価しました。
図5にシームレス切り替え技術を適用しない場合の、図6にシームレス切り替え技術を適用した場合のスループットを示します。図5では、WiGigから5G/LTEの切り替えのタイミングでスループットが0[bit/s]となる領域が数十メートル程度(時間にして数百ミリ秒程度)あることがわかります。これは、非移動体無線通信システムの性質により、一度WiGigが完全に切断した後でないと、通信を5G/LTEに切り替えることができない従来の課題によるものです。一方、図6では、提案するシームレス切り替え技術の適用により、WiGigから5G/LTEへの切り替えにおいて、通信断が発生していないことがわかります。すなわち、シームレス切り替え技術の適用により、非移動体無線通信システムのエリア端において、通信電波による測距機能を用いて事前に通信を移動体通信システム側に切り替えることで通信断を回避できることを確認しました。
なお、本技術実証時の車両速度は550m付近で最高278km/h、注目するWiGigから5G/LTEへの切り替え地点においても254km/h以上であり(実験用に搭載したGPSにより測定)、超高速な移動環境において提案するシームレス切り替え技術が有効であることが実証されました。
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