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III型分泌装置阻害剤aurodoxの作用標的をPurAと同定--北里大学

Digital PR Platform / 2024年4月26日 14時5分



■研究の成果
 本研究チームはまず、aurodoxを固定化した開裂型・光親和型低分子固定化アガロースビーズ (cleavable photoactivatable linker-coated agarose beads) を用いてaurodox結合タンパク質を探索した。その結果、既知の因子に加えて、新たにアデニロコハク酸合成酵素 (PurA) を同定した。また、ビオチン化aurodoxプローブを設計・合成し、PurAとaurodoxの直接的結合を検証した結果、aurodoxがPurAに対して強く結合すること (KD = 6.5×10-7 M) を見出した。
 次に、CRマウス感染モデルを用いたin vivo試験を行った。purAを破壊したCR株を感染させたマウスでは、感染5日目および9日目に糞便よりCRは検出されず、マウス腸内への菌の定着がCR野生株と比較して著しく低減された一方、purA相補株においては菌の定着が部分的に回復することを示した (図3)。またpurA破壊株を感染させたマウスは、観察期間である感染後28日まで全て生存したのに対し、野生株、purA相補株を感染させたマウスは、それぞれ12日目、18日目までに全て死亡した (図4)。以上の結果より、PurAはT3SSを制御することで細菌の病原性に関与することが示された。さらにサルモネラにおいてもpurA破壊株で病原性が著しく低下したことから、PurAがT3SSを有する細菌の病原性発現に普遍的に関わっている可能性、およびaurodoxがT3SSを有する病原細菌に対する新たな抗感染症薬となる可能性を示した。

■今後の展望
 今回の発見は、T3SSの機能におけるPurAの重要性を示唆するとともに、aurodoxの創薬シードとしての可能性と、抗感染症薬やワクチン開発の標的としてのPurAの新たな道を開くものである。

■用語解説
・Ⅲ型分泌装置 (T3SS):
 腸内細菌科細菌 (腸管出血性大腸菌、腸管病原性大腸菌、サルモネラ属菌、赤痢菌など) 、ボルデテラ属細菌、植物病原菌などに高度に保存されており、病原菌の宿主への感染過程においてエフェクターと呼ばれる病原因子を宿主に移行させるタンパク質複合体。T3SS は菌の生存に必須ではないことが知られている。
・Aurodox:
 放線菌streptomyces sp. が生産するポリケチド系抗生物質。細菌の翻訳伸長因子EF-Tuに結合し作用することが知られていた。今回、我々は、aurodoxがPurAにも結合し、細菌のT3SSを阻害することを新たに見出した。
・アデニロコハク酸合成酵素 (PurA):
 イノシン酸 (IMP) からアデノシンモノリン酸 (AMP) の合成を行う際の中間体であるアデニロコハク酸を合成する1次代謝酵素。プリンヌクレオチドの生産に関与している。様々な生物に保存されている。
・Citrobacter rodentium (CR):
 T3SSを有するグラム陰性細菌。齧歯類に感染する。
・開裂型・光親和型低分子固定化アガロースビーズ:
 365 nmの光照射で発生する高反応性中間体を利用して、低分子化合物を固定化できるアフィニティー樹脂担体。リンカー分子中にジスルフィド結合を有しており、標的タンパク質と共有結合を形成する化合物の標的同定に特に有効である。

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